保育園の待機児童問題は、実際に直面した当事者でないと、対岸の火事のように感じられる。少なくとも、私はそうだった。

今年1月に第一子を出産した。都心部に住むならば「保活」は、妊娠中からすべしというのは誠に恐ろしい真実だった。1月から4月の保育園入園を目指して、自宅近くの認証保育園に見学・仮入園申し込みをしにいくと、どこも0歳児だけで3桁レベルの入園申し込みがあった。どう考えても、子どもを保育園に入れられる気がしなかった。

都心部の働く母親たちの保活の熱心さに驚愕し、「保活」に出遅れたことをひどく後悔したりもした。幸運にも4月から認可保育園に入所でき、今は仕事に復帰できている。待機児童問題の闇の深さに直に触れ、それなりの心労を得てはじめて、事の重大さに共感できるようになったのも事実である。

「待機児童問題」の解決のために、保育士不足の解消が不可欠

待機児童問題は、国や各自治体が解決に向けて積極的に政策を推し進めている。今は、解決に向かっていく過渡期なのだろう。だが、根本的な課題が解決されない限り、この問題は残り続ける。

待機児童問題が顕在化してきた背景には、女性の社会進出や施設環境の整備の問題などがある。

高度経済成長期は、妻は専業主婦として自宅で子供の面倒を見るのが一般的だった。そのため、保育園に対する需要は今ほど高くなかったが、女性の社会進出の機会が増えたことで共働き世帯が増え、保育園の需要が高まった。

基本的に待機児童は都市部に集中していて、都市部で新たに保育園を作ろうとしても保育園に適する物件が少ない。いざ作ろうとしても周辺住民からの同意を得られないこともあり、施設が確保しづらい状況にある。

さまざまな要因から待機児童は問題となっているが、大きな課題は慢性的な保育士の不足だ。仮に保育園がいくら増えたとしても、保育士が不足していれば、待機児童問題は解消されない。

平成27年に発表された厚生労働省の「保育士確保プラン」では、国全体で必要となる保育士の数は、平成29年度末時点において、46万3,000人と言われている。平成25年度の保育所勤務保育士数が37万8,000人、平成29年度末までの自然増加分を2万人として、足りない保育士の数は6万9,000人と算出されている。

平成26年1月に発表された厚生労働省の資料によれば、保育士の求人倍率は全国平均1.74倍となっており、保育士の有資格者であれば、応募すれば必ず就職できる引く手数多の状況だ。

しかし、保育士資格を有するハローワーク求職者のうち、約半数は保育士としての就業を希望しておらず、保育士資格を持っていても保育士として働かない。そのような「潜在保育士」は、全国に約70万人いるそうだ。この約70万人の潜在保育士の活用が進めば、6万9,000人分の保育士不足を補うことができるだろう。

保育士不足がなぜ起こるのか、厚生労働省の資料を読み解いていこう。保育士は給与が低い、仕事がきつい、残業が多い、休みが取りづらい、保護者とのコミュニケーションが大変といった理由から、保育士としての就業が敬遠されており、慢性的に不足しているとわかる。

資格を有する一方で、保育士として働こうとはしていない、潜在保育士が働きやすい環境を整えることができれば、保育士不足は解決に近づく可能性がある。

潜在保育士が働きやすい環境を整える「スマートシッター」

保育士が働きやすい環境を整え、保育士の柔軟な働き方を支援するベビーシッター・マッチングサービスがある。それが「スマートシッター」だ。

スマートシッターは、家庭と保育者を顔が見える形でつなぎ、ベビーシッターをオンラインで手配できるマッチングサービス。家庭と保育者のマッチング、託児依頼・予約管理、利用料の請求・支払い代行を一貫して行うことができる。現在は、関東圏の都市部が対象エリアとなっている。

2014年8月にグリー株式会社の子会社であるスマートシッター株式会社がサービスを立ち上げ、2017年2月にベビーシッターサービス最大手のポピンズグループが同社を買収している。

ベビーシッターの派遣依頼をしたいサービス利用者は、スマートシッターのサービス内で保育者を検索し、シッターの空き時間カレンダーや、自己紹介動画、他者からの評価などを参考に、1時間1,500円~3,000円の利用料金でベビーシッターを依頼することができる。登録しているシッターは、保育士・幼稚園教諭・助産師・看護師などの有資格者が9割を占める。

登録シッターは、自身が稼働可能なエリアや日時を登録して、利用者から予約があれば、詳細についてやりとりした上で、ベビーシッターとして働く。同サービスを利用することで、すでに勤務する保育園と掛け持ちで土日の空いた時間にダブルワークをしたり、普段は主婦をしていて、子供が学校に行っている日中の時間のみシッターとして働くなど、柔軟なワークスタイルを実現できる。

“時間単位”で保育園に勤務できる新サービスを提供

スマートシッターは今年7月、サービスに登録しているシッターが、時間単位で保育園に勤務できる機能の提供を開始した。保育園の求人募集を検索して時間や場所など条件に合う求人に応募することができるようになり、登録シッターの働き方の選択肢が広がった。

スマートシッターが、全国約70万人の「潜在保育士」を「フリーランス保育士」として掘り起こすことができれば、保育士の処遇改善と働き方改革の両輪を実現し、保育士不足問題の解決にもつながることが期待できるだろう。

フルタイムで保育所で働くだけが保育士の働き方ではない。ベビーシッターとして働くこともできれば、時間単位で保育園で働くことも選択肢の中に入ってくる。

スマートシッターのようなサービスが社会に広がることで、「仕事がきつい」「休みが取りづらい」といった保育士に対するネガティブなイメージが払拭され、慢性的な保育士不足が解消されることに期待したい。

img: スマートシッター