本コラムは、企業・団体などから寄稿された記事となります。掲載している取り組みやサービスの内容・品質、企業・団体などをAMPが推奨・保証するものではありません。

各企業・一人ひとりのパートナーシップ構築の加速をサポートするため、サステナブル推進企業の取り組み事例をコラム形式で提供。

今回は株式会社アイ・グリッド・ソリューションズの取り組みを紹介する。

アイ・グリッド・ソリューションズの取り組み

アプローチ視点 施設の屋根上を活用した太陽光発電設備を増やす事業を中心に、再生可能エネルギーを最大利用し、『7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに』と『3.気候変動に具体的な対策を』というゴールの達成に向け取り組んでいます。
実施内容 AI・IoT・クラウド・デジタル技術を活用した、オリジナルのVPPプラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform®」を構築し、余すことなく再エネを利用できる仕組みを構築しています。
推進体制 「R.E.A.L. New Energy Platform®」を商用化し、ベトナムでのオフショアを含めて50人ほどの体制で開発・運用を行い、再エネ拡充によるSDGs推進に向けた取り組みを実施しています。

取り組み実施に至った背景

アイ・グリッド・ソリューションズ(以下、アイ・グリッド)では、『グリーンエネルギーがめぐる世界の実現』というビジョンを掲げ、エネルギー領域に特化した事業を展開しています。私たちの事業では単にエネルギーを創り出すだけでなく、顧客視点でニーズを理解し、新しいソリューションを開発しています。

現在は、流通小売施設や物流施設の屋根上に設置した太陽光発電所を全国800カ所以上(2024年1月現在)保有しており、国内最大級の分散型太陽光発電施設となっています。これらの太陽光発電施設は「オンサイトPPA」という事業モデルで、お客さま側の投資なしで、施設の屋根上に太陽光発電設備を設置し、そこで発電された再生可能エネルギー(以下、再エネ)を長期契約に基づき、電力を購入していただくビジネススキームです。オンサイトPPAは、すでにある施設の屋根上を活用するため、自然を傷つけることなく再エネを普及できるという社会的意義もあります。そして、再エネをさらに増やしていくために、オンサイトPPAを起点としたGX(グリーントランスフォーメーション)ソリューションを提供しています。

現在、気候変動対策として世界中で「脱炭素」の動きは加速しています。国内では、エネルギーの安定供給という観点も含め、2030年度に電源における再エネ比率を36~38%にする目標が掲げられています。また、2023年12月に開かれたCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)では、2030年までに太陽光発電等の再エネ発電容量を3倍(2022年比)に拡大する目標について130カ国が合意しており、再エネの中でも特に太陽光発電が電源構成において重要な位置を占めることが強調されています。しかし、太陽光発電は適切な設置場所が限られており、天候に左右されるため、管理が難しいという課題がある再エネといわれています。そのため、電力の需給バランスをコントロールすることが必要となります。

従来は、大規模な原発や火力発電所が供給側からコントロールしていましたが、再エネには双方向でデジタル管理する分散電源システムが求められています。こうした背景から、私たちは2020年に「アイ・グリッド・ラボ」を立ち上げ、VPP(仮想発電所)のプラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform®(以下、R.E.A.L.)」の開発に着手し、再エネの効率的な地域内活用を促進しています。

実施している取り組み

R.E.A.L.はAI・クラウド・IoTを活用した分散エネルギーコントロールのためのプラットフォームです。全国にある太陽光発電所の施設ごとの発電量と使用量を予測し、統合管理します。

プラットフォームにより全国の施設を統合管理

この予測技術を活用し、私たちのサービスの特徴のひとつである、余剰電力を他の需要家に供給する仕組みを構築しました。この技術により、今まで経済的な理由で導入が困難だった電力使用量の少ない施設にも、PPAを導入することが可能になりました。加えて、蓄電池やEVへの給電といったソリューションを組み合わせ、企業のGXを統合的に推進しています。

具体的には、太陽光や蓄電池、EVなどにIoTの端末を設置することで、発電量や電力使用量、空調の使用量などがリアルタイムで計測されます。これらのデータは、クラウド上のR.E.A.L.で一元管理され、気象情報や電力市場の動向などとも連携して分析されます。電力の使用量を一定時間制御したり、発電が安定している時に電力の消費量を調整したり、余っている発電量を蓄電池に蓄えるなど、細かな調整を行っていきます。

発電量や電力使用量、空調の使用量と余剰電力などがリアルタイムに計測

電力市場の需給が逼迫している場合は、現地にある蓄電池を制御し、そこに蓄えられている電気を使用することで、需給バランスを調整することも可能です。従来の大規模な原発や火力発電所といった集中型電源から、太陽光発電などの分散型リソース、つまり分散双方向型エネルギーへの移行により、送電ロスや大規模停電などのリスクが軽減されると考えています。

当社の事例としては、スーパーマーケット事業を営む、株式会社ヤオコーさまとの取り組みがあります。一例として、川越的場店に次世代型店舗の実証として、太陽光発電・蓄電池・ネットスーパー用EV車両・EVと蓄電池などを繋ぐV2Hを導入しています。太陽光発電量が余っている時間帯をAIが予測し、余った電気を蓄電池やEVに充電することができます。

逆に、太陽光発電ができなくなってくる夕方以降の時間帯では、蓄電池やEVに充電された電気を施設へ供給します。このプロセスは、EVでのネットスーパーの宅配スケジュールを考慮しながら行う必要があります。

日中の再エネが余っている時間に蓄え、需要が高まる時間帯に再エネを使うことができるので、CO2排出量を最小限に抑え、電気を使えるようになります。この副次的な効果として、他から電気を買う量が少なくなるので電気代の削減にもつながります。

また、地域の生活圏に必ずと言っていいほどスーパーマーケットをはじめとした小売の施設で、太陽光発電や蓄電池などの導入が進んでいくと、災害停電時に地域住民に電気を融通するということも期待できます。

また2023年3月には、いすゞ自動車株式会社と協業し、ELF EVを含む商用車の運行管理や車両の稼働サポートサービスを提供している商用車情報基盤「GATEX」にR.E.A.L.を連携しました。これにより、今後のEV普及を見据えたエネルギーマネジメントも行っています。

サステナビリティ推進体制

GXソリューション事業の技術基盤開発および拡大するテクノロジー需要に対応するため、オープンイノベーションやベトナムでのオフショアを含めて50人ほどの体制で行っています。プラットフォームのAI機能の継続的改善に加え、共同開発パートナーとしては、AWS(Amazon Web Services)と連携し、オープンイノベーションクラウドやAI、IoTの最新のテクノロジーを使った模範的なGXソリューション事例を創出しています。

今後の目標や展望

R.E.A.L.は、エネルギーの分野だけでなく、さまざまな分野と連携ができるオープンなプラットフォームとして開発されています。様々な分野と統合したエネルギーソリューションを構築し、持続可能な未来を実現していくという考え方がR.E.A.L.の基幹です。

今後はそれぞれの領域をさらに発展をさせるために、アライアンスの幅をさらに広げていく予定です。

海外では、気候変動問題を環境政策の枠を超えた産業政策の一環として位置づけ、新たなビジネスチャンスを創出するための積極的な政策が推進されている国もあります。こうした国々では、企業のリスクテイクや先行投資が奨励され、企業価値の向上に結びつく環境が整っています。私たちはこの点に注目し、企業価値を向上させる取り組みを行っています。

当社は、スーパーマーケットなどを中心とした流通小売や物流施設を展開する顧客が多いため、共に100%再エネで運営される次世代店舗「GX StoreⓇ」や「GX LogisticsⓇ」の展開を進めています。これらの取り組みにより、企業の成長を阻害することなくCO2排出を抑え、地域社会とのコミュニケーションを強化し、安心して暮らせる街づくりに貢献できるのではないかと考えています。地元で生産されたグリーンエネルギーを活用し、地域の脱炭素化と、街の活性化を当社では「GX CityⓇ」と定義づけし、実現に向けて取り組んでいきます。

環境省は、2030年までに民生部門における電気由来のCO2排出のカーボンニュートラルを実現する脱炭素先行地域を選定し、地域の脱炭素の取り組みを脱酸素ドミノという形で全国に広げようという施策を展開。この施策を地方自治体、地域企業、地域金融機関が共同で推進する中、アイ・グリッド・ソリューションズもグループとして地域の企業や金融機関とさまざまなスキームで連携し、地域脱炭素に向けた取り組みを進めています。

岩崎 哲
株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 執行役員
株式会社アイ・グリッド・ラボ 取締役CTO

鹿児島県出身。1978年生まれ。
東京大学大学院(博士課程)にて、環境学とウェアラブルコンピューティング・センサネットワークを研究。
その後15年間AIベンチャーにて経営に従事し、ビッグデータ・AI・DXの研究開発・事業開発を担当。
事業の立上げ・組織運営やAIの技術開発・顧客プロジェクトのマネジメントを担う。
2020年、アイ・グリッド・ラボ 取締役CTO就任。
AI・DXの経験・知見を活かし、エネルギーの新しいプラットフォーム構築事業を立ち上げている。
博士(環境学)
早稲田大学招聘研究員、青山学院大学非常勤講師、人間情報学会理事

▼お問い合わせ先
●アイ・グリッド・ソリューションズPR事務局
●メールアドレス:r.kano@majokabu.com
●URL:https://www.igrid.co.jp/

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