INDEX
企業広報戦略研究所は、6月末、全国1万500人を対象とした「2020 年度 ESG /SDGs に関する意識調査 」を実施し、その結果を公表した。
- 投資をする際に企業の「ESGに対する取り組みを考慮する」が8割弱
- 生活者のESG/SDGsの認知は大きく伸長
- 生活者が関心を持つ社会課題に対する取り組みや企業に期待する 取り組み、「食品ロス削減」「子ども食堂への支援」が大きく伸長
- 企業のSDGsに関する取り組み認知、メディア経由は昨年から横ばいの一方、リアルが3.4ポイント伸長
- SDGsの取り組みが認知されると、生活者の7割が行動を起こす
投資をする際に企業の「ESGに対する取り組みを考慮する」が8割弱
投資意識(興味)のある8,619人に、投資の際に企業の「ESG」の取り組みを考慮するか聞いたところ、「とても考慮する」 (22.0%)、「少し考慮する」 (55.6%)、の合計で、約4人に3人(77.6%)が“考慮する”と回答した。
ESGを項目ごとに分類し、それぞれの魅力度の推移を昨年比較で確認した結果、「気候変動への対応」が7.5ポイント (2019年21.7%→2020年29.2%)増加していたことがわかった。
また、年代別に魅力を感じる項目を確認すると、20代~40代の1位は「働きやすい職場環境づくり」だが、50代と60代では「エネルギー効率化」、さらに「気候変動への対応」といった環境を重視した項目が上位に挙がる結果となった。
生活者のESG/SDGsの認知は大きく伸長
生活者の投資検討時に影響を及ぼす「ESG」「SDGs」について、それぞれの認知状況を確認すると、 「ESG」の認知率は「知っている」(「詳しく知っている」「聞いたことはある」の合計)が23.7%、「SDGs」の認知率は39.8%だった。
両項目とも年々伸長しているが、特に「SDGs」については15.6ポイントの大幅な伸長となった。
報道番組やニュース番組でも取り上げられることが増え、認知につながっている可能性があり、また各企業のPR活動においても「SDGs」に関連した取り組みが増加しており、生活者への浸透を後押ししているようだと同社は述べている。
「ESG」「SDGs」それぞれの認知率を性年代別で見ると、いずれも男女共通で若年層の認知率が高いことが分かった。特に男性20代の認知率は非常に高く、「SDGs」は6割超(61.7%) となっている。
女性20代(41.3%)も他の年代と比較すると高くなっているが、就職活動時の企業研究などで触れることが多いのかもしれないと同社は推測している。
また「ESG」の認知率については、男性20代(41.6%)、男性50代(32.0%)が高い傾向となり、「投資」視点で企業を見る機会が他年代よりも比較的多いためかもしれないとの見解を示している。
生活者が関心を持つ社会課題に対する取り組みや企業に期待する 取り組み、「食品ロス削減」「子ども食堂への支援」が大きく伸長
「SDGs」の達成目標について、企業の取り組みを期待する項目を聴取し、昨年からの推移を確認したところ、最も上昇率の高かった項目は「気候変動に具体的な対策を」で2019年7.4%→2020年10.1%と2.7ポイントアップ。
次いで「すべての人に健康と福祉を」が、同20.9%→22.4%と1.5ポイントアップしていた。
また、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」(21.9%)や「働きがいも経済成長も」(16.4%)は引き続き高いスコアとなっている。
企業に求める達成目標は、20代と60代で差が生じており、1位と2位は順位こそ入れ替わっているものの共通しているが、20代は3位に「働きがいも経済成長も」(18.5%)、4位「貧困をなくそう」(13.0%)と経済面に関する回答が上位に入った。
一方60代は、4位に「気候変動に具体的な対策を」(15.5%)が入り、年代による意識の差が表れる結果になった。
SDGsに関連する取り組みで生活者がどのような内容に関心を持っているか聴取した結果、1位は「食品ロス削減」(35.5%)、2位「太陽光発電などの再生可能エネルギー技術の開発、利用」(35.2%)と、日々の生活の中で生活者が身近に問題を感じられる項目が上位になった。
また4位に「フードバンク」、5位「子ども食堂への支援」と、衣食住の「食」にまつわる項目が関心上位に挙げられている。
昨年との比較でも食に関する項目はスコアの上昇が目立っており、特に「子ども食堂への支援」は2019年19.7%→2020年27.7%と大幅な伸長を見せているという。
一方「SDGs推進に関する投資」(7.8%)などはまだまだスコアが低い状況となった。
SDGsに関連する取り組みで生活者が関心を持つ上位3項目について性年代別に確認した結果、男性より女性の方が関心が高い人が多いという結果になった。
SDGsの認知率が高いのは男性や若年層だったが、実際に具体的な取り組みに関心を持つ層は女性や40代以上の人という結果になった。
企業のSDGsに関する取り組み認知、メディア経由は昨年から横ばいの一方、リアルが3.4ポイント伸長
SDGsに関わる具体的な企業の取り組みを想起できた人(n=4,944)に対し、何を通じてその情報を入手したかを聴取したところ、コロナ禍でもリアルな経験を通じて情報を得ている割合が軒並み昨年を上回る結果となった。
一方メディアから得ている割合は、いずれもスコアが横ばい(もしくは低下)という結果だった。
新型コロナウイルスにより、生活者と企業の接点に変化が生じていることも考えられるが、メディア系でも「インターネット上での口コミや評判」は1.4ポイント増となった。
しかし、リアル系の伸長が目立つ結果となり、メディアやネットから取得する情報よりも、商品やサービスの直接の体験や店員、店頭からの情報でSDGsへの取り組みを認知する機会が増えてきていることがうかがえる結果になっているという。
SDGsの取り組みが認知されると、生活者の7割が行動を起こす
企業のSDGsに対する取り組みを想起できた4,944人に認知後の行動変化を聞くと、71.1%もの人が、なにかしらの行動を起こしたと回答した。
このスコアは昨年の67.9%から3.2ポイント伸長しており、SDGs自体の認知度が向上している昨今、SDGsの取り組みは、ダイレクトに生活者からの反応につながることが多くなっているようだと同社は推測している。
具体的にどういった行動を生活者は取っているのか、引き続き企業のSDGsに対する取り組みを想起できた4,944人に行動内容を聞いてみた。
1位「その企業や、商品・サービスのウェブサイトを閲覧するようになった」(28.2%)、2位「その企業の商品やサービスを購入または利用した」(21.5%)、3位「その企業や、商品・サービスの評判を検索するようになった」(18.5%)と興味関心を抱かせるだけでなく、行動を伴う変化を生じさせることができているとのことだ。
た、1位である 「その企業や、商品・サービスのウェブサイトを閲覧するようになった」については、昨年2019年の調査結果(25.2%)より3ポイントスコアが伸長した。
生活者発信の拡散については「家族や友人に話をした」(14.8%)、「ソーシャルメディアに投稿・シェアした」(5.5%)となっており、わずかながら昨年よりも伸長していた。
<調査概要>
調査対象:全国の20~69歳の男女 計10,500人
調査方法、期間:インターネット調査:2020年6月24日~6月30日
設問内容:ESG/SDGsの認知の有無、企業に期待するSDGsの取り組み、投資に対するESGを考慮する度合いなど
調査対象:以下の図