あなたはどんなSNSを、どれくらい使っているだろうか?


朝起きて、まずソーシャルメディア巡回という人もいるだろう

いちユーザーとしてのSNSは、仲間が集まる店に似ている。

私の行きつけのカフェFacebookは今でも毎日顔を出すけど、最近行っても会える友達がめっきり減っちゃったなあ。

バーInstagramの方がよく行っている友達が多いらしいけど、あそこ友達と話したい人よりイケてるライフスタイルの美女とかおしゃれなタピオカドリンクとかが幅を利かせてるんでしょ?

若い人がよく行くスナチャって店に行ってみたら、楽しい商品が色々あったよ!でも最近すごい人気の中国から来たファストフード店のTiktokは、なんかスゴいことできる人が集まってるみたいで、外からチラ見するのが精いっぱいだなあ。

そういや学生時代によく行っていた居酒屋mixiに15年ぶりに行ってみたら、店内の半分がゲームセンターになっちゃってたんだよ!
…みたいな。

こんな私は自分をSNS依存気味でよくないと思っていたのだが、実は新しい波には完全にスルーされてしまっているらしい。「なんか最新の人気ソーシャルメディア」と思っていたTikTokすら後発の「新顔」に背中を狙われているほど、ソーシャルメディア市場には次々に新興勢力が台頭しているというのだ。

次々とニューフェイスが投入されているSNS市場

「ユーザー数の多さ」や「慣れて使いやすいこと」自体が一つの大きな魅力となり得るソーシャルメディア市場において、Facebook(2004年アメリカ発・月間アクティブ利用者数24億人)やインスタグラム(2010年アメリカ発・同10億人)、ツイッター(2006年アメリカ発・同3億2,000万人)など確固たる地位を築いているプレイヤーは確かに強い。

しかし一方、常に画期的な新機能を持っていたり、未開拓のユーザー層を確保した新顔とのシェア競争にさらされているという面もある。

8億人のゲーマー獲得を狙う?元AppleのデザイナーによるCaffeine.tv

例えば「Caffeine.tvはそういった注目株の1つで、元AppleのデザイナーであったBen KeighranとSam Robertsの二人がゲームのプレイ動画のライブ配信をメインの目的に開発した動画配信プラットフォームだ。

つながり重視・リアルタイム・個人的・特別なツール不要・意味のない赤の他人からのコメント合戦なし」を売りに、友人やフォロワーとリアルタイムで「その場に一緒にいるかのような」有意義な動画共有・やり取りを体験できることを売りにしている。


プレイ画面(Caffeine.tv公式HPより)

アプリのみですぐにできるスマホからの配信の他、ブラウザ経由のカメラからの配信や、専用ソフトによるPCスクリーンのライブ配信も可能、ビットレート・ストリームキー・IPアドレスなどの心配も不要とあって、Twitch(現在アクティブユーザー数1,500万人/日を誇るAmazon傘下の巨大ゲーム実況動画配信プラットフォーム)の競合になる可能性もささやかれている。

現CEOのKeighran氏は「私たちは独自の配信プラットフォームで、現在Twitchを利用しているユーザー、そして未だTwitchで配信していない世界8億人のゲーマーの獲得を見込んでおります」と野心的だ。

現在までに1億4,000万ドルの資金調達に成功しているが、その中でも最大の投資者である21世紀FOXは同社と提携してeスポーツ、ビデオゲーム、その他のエンターテイメントなどの配信プロジェクトを開始している。

他の人と画面を共有して一緒にTV番組や映画を観る機能も充実しているので、ゲーム実況のみならず既存の放送業界全体から注目を浴びているのだ。

また、Z世代はライブストリームに親和性が高いことが明らかになっており、商品のPRに利用したい各業界のマーケティング部門からも熱視線を注がれている。

ゲーム実況動画配信ツールとしての基本仕様はTwitchとの類似が指摘されており、マネタイズシステムも同様に組み込まれている(フォロワーの多いストリーマーには報酬が支払われる)が、上述のKeighran氏は自社の提供するCaffeine.tvの「ソーシャル」な側面が、古参のTwitchと差をつけると確信している。

まず視聴者が観たいストリームをゲーム名で検索するTwitchに対し、Caffeineはストリーマーの名前で検索するシステムとなっている。TwitterやFacebookとの連携により、動画は他のSNSにも同時にライブ配信を行うことができる。

そして逆にSNSからライブ配信シーンへのフィードバックにより、一般のフォロワーと既につながりのある友人の視聴を区別し、親しい視聴者からのコメントが優先表示される(他にRedditシステムの導入により、ほかのユーザーからの評価の高いコメントも上位に表示される)。

ゲームのプレイ動画配信そのものよりも、それを介してなされるコミュニケーションが重視されるプラットフォームという形態が世界のゲーマーたちの心を掴めば、一気に下克上もあり得るだろう。

余談だがTwitchよりもスピードも速く、時間差なしでライブ配信される。それは売りである一方、オンラインゲームの場合リアルタイムで自分の動きを公開することにより、視聴している対戦相手に手を読まれて効果的な攻撃をされてしまうという他にはなかった新しいリスクが生じており、「ストリームスナイピング」と呼ばれて恐れられているらしい。

Ticktokの静かなる刺客? Facebook傘下のLasso

中国のバイトダンスが2018年にアメリカのMusical.lyを吸収してリリースし、現在までに世界で10億ダウンロードを超えるモンスター「盛り系自撮り動画アプリ」Tiktokを利用している人は多いだろう。

この女子高生御用達アプリTicktokの直接的な競合として昨年Facebookが「ひそかに」配信を開始したのが、同様に短く楽しい動画を誰でも簡単に作成・発信するためのフィルターやサウンド機能搭載のアプリ「Lasso」。


Lasso公式HPより

若年層のFacebook離れが続いており、10代に至っては2018年時点で半数しか利用していないという調査結果が出るなどする中、まさにそのティーン層のユーザーに訴えかける同社初の試みとしてリリースされたもようだ。

今のところユーザーコミュニティも小さく、内容としても「TikTokに数年後れを取っている」などと見る向きもありつつ、Facebookのユーザーベース・技術・資金力を活用できることから今後の伸びしろは未知数との期待も寄せられている(Instagramのアカウントからログインしたり、Facebook経由でアカウントを作成することができ、またLassoでストリームする動画をFacebookのストーリーと連動できたりもする)。

Facebookが母体で、かつTiktokの類似アプリとあって鳴り物入りかと思いきや、現在のところリリースの告知もPRもなぜか「気味悪いほど控えめに」なされている。

Facebook公式からの「私たちはLassoのポテンシャルにわくわくしており、今後ユーザーやクリエイターからのフィードバックを収集していくつもりです」というメッセージと相まって、今のところは先輩のTikTokとの比較で様子を伺いながら、魅力的なコンテンツを虎視眈々とリサーチしているという推測がなされている。

その他の将来を見込まれるソーシャルメディア

グループビデオチャットアプリのHousepartyも急速に利用者を拡大しているメディアのひとつ(2016年のリブランディング後、100万人程度だったユーザーが2,000万人に成長している)。8人までのグループビデオチャットをホスティングすることが可能で、メンバー同士で一緒にプレイできるゲーム機能は既にユーザーの半分が利用している。


Houseparty公式HPより

それぞれが家に居ながらにして複数でパジャマパーティやゲームパーティができるような「つながり」機能に加え、今後インフルエンサーなどをフィーチャーしたグループチャットでの商品のPRなど、距離の近いマーケティングへの活用が期待されている。

他にも「仮想通貨+Reddit」とも評される「Steemit」(投稿への高評価が集まると仮想通貨を獲得できる)など、ソーシャルメディアの新興勢力は次々と市場に投入されており、市場の利用者獲得レースはますます混戦状態になっていくことが予想されている。
 
あなたは新しいソーシャルメディアを積極的に開拓していくタイプだろうか?画期的な新しいSNSを見つけたらぜひ教えてください。Facebookで。

文:ウルセム幸子
編集:岡徳之(Livit