現在、さまざまな業界でAIやIoTの活用が進んでいる。それは、水業界も例外ではなく、近年の人口増加や産業発展による世界的な水の需要の増加への対応に向けたAIやIoTの活用ニーズが高まっている。

フロスト&サリバンは水業界のグローバル展望をまとめた。それによると、水業界では将来的に、キャリブレーション(調整)機能や浄化機能を備えたスマートセンサーや、水処理システムの操作におけるAIやIoTといったテクノロジーの導入が今後進むことが見込まれるという。

生活用水と工業用水事業にAIやIoTの導入進む

同社の予測では、生活用水の事業において、工程制御や管理用途のIoT搭載機器のサポートに最適なLPWAN(低消費電力広域ネットワーク)の活用が今後進む見通しだという。一方で工業用水の事業では、分散型やモバイル型の水処理システムの導入が今後検討されている。

水ビジネスでのIoTやAIを活用したスマートセンサーやデジタルソリューションの導入は、水市場の成長も促進するという。フロスト&サリバンのリサーチ「水業界のグローバル見通し:2018年」によると、2018年のグローバルの水市場は、推定で6,959億米ドルに成長するという予想がされている。

市場規模には、以下の領域における生活用水(水処理施設及びネットワーク)および工業用水(水処理・排水処理)の設備投資コストと運用コストを合わせた総支出額を含む。対象領域は以下となる。

  • 水処理ソリューション・サービス
  • 水処理施設の設計・エンジニアリング・建設
  • 水処理施設およびネットワークの運用・保守
  • 水・排水処理技術を含む。

フロスト&サリバンのエネルギー・環境部門リサーチアナリストのポール・ハドソン氏は次のように述べている。

「生活用水と工業用水の事業者は、効率性や利便性が高い水処理膜を利用した水処理システムを好む傾向にあります。AIが水処理システムに搭載されれば、運用やメンテナンスの自動化が可能となるほか、事業者にとってもコスト削減が可能になります。

また、あらゆる産業での水やエネルギー保護に向けた取り組みによっても、生活用水と工業用水の両方に向けたより積極的な投資も行われるでしょう。」

水業界でAIやIoTが新たなビジネス機会を生み出す

また、フロスト&サリバンでは、今後水業界では以下のようなグローバルトレンドを予測している。

  • 生活用水のグローバル市場は2018年に前年比6.4%増で成長し、工業用水の同市場は前年比7.6%増で成長する。
  • 水ビジネスにおいて、IoT通信モジュールやソリューションベンダーとAI、またはビッグデータソリューション・プロバイダー間での連携が今後進む。
  • 水ビジネスでは将来的に、実績に応じた支払いシステムや、「ハイブリッド・アニュイティー・モデル(HAM)」形式の官民パートナーシップといった新たなビジネスモデルが成長機会を生み出すほか、事業の効率化も進む。
  • 分散型の水処理システムにおいて「ウォーター・アズ・ア・サービス」といった革新的なビジネスモデルが生まれ、新たなビジネス機会も生み出すことが期待される。

ハドソン氏は次のようにコメントしている。

「経済成長や都市化、急速な工業化が進むアジア太平洋地域の水・排水処理市場が、世界的にも最も速いペースで成長する見通しです。北米市場では、石油・ガス採掘に向けた積極的な投資によって、工業用水向けの水・排水処理市場の成長が進むでしょう。

一方、中東では、生活用水と工業用水向けのエネルギー効率の良い脱塩システムに対して、多額の投資が行われています。」

世界中で顕在化する水不足。東京でも発生する可能性大

このような水ビジネスの高まりの背景には、冒頭に述べた要員の他にも世界的な水不足への懸念がある。

米国政府機関であるアメリカ地質調査所は、2025年までに北アフリカ、ユーラシア、中東、さらには米国で人口増による水需給のひっ迫が深刻化し、2050年までには約50億人が水不足の影響を受けると指摘している。

また、ユーロニュースが伝えた国連調査では、2030年までに水の需要が供給を40%上回ると予想しているという。

このような水不足は、現在すでに世界各国で顕在化してきている。実際、BBCが伝えた世界500都市を対象に実施された調査(2014年)は、およそ4都市に1都市が水需給の「ストレス状態」にあると指摘しているという。

具体例として、南アフリカ・ケープタウンでは2年前からエルニーニョにともなう干ばつによって水不足問題が深刻化していることがある。

ケープタウン市長は、同市の水が枯渇する「ゼロ・デイ」が2018年3月にやってくると警告、市民に節水を呼びかけていた。しかし、いまだ枯渇の危機を抱えている状態だという。現在もケープタウン市民は1人あたり1日50リットルの使用制限が課せられているという。

また、BBCはケープタウンのような水不足問題が起こる可能性がある都市として、サンパウロ、バンガロール、北京、カイロ、ジャカルタ、モスクワ、イスタンブール、メキシコシティ、ロンドン、東京、マイアミの11都市を挙げている。

これらの都市で水不足問題が起こる要因には、干ばつだけでなく、洪水や汚染などが含まれるという。

AIやIoTで人類に不可欠な水不足問題解決へ

われわれ、人類の生活に「水」は欠かせない。人体の70%は水が占めているといわれ、水がないと数日しか生きられない。

今後予測される水不足には、単に人口増による不足だけではなく、洪水や汚染も含まれるという。AIやIoTの活用によってこれら人類の将来を左右する問題を解決してもらいたい。

img:Dream News