前編・後編の2回にわたりお伝えしているアフリカのハイテク・スタートアップシーン。前編では、アフリカのなかで資金調達額がもっとも多い南アフリカのスタートアップ4社を紹介した。後編では、南アフリカに次いで資金調達額が多いといわれるナイジェリアとケニアのスタートアップを見ていきたい。

アフリカ全土で最大級のスタートアップハブを有するナイジェリア

アフリカ最大となる1億9000万人近い人口を誇るナイジェリア。インターネット普及率は40%にとどまるが、携帯電話普及率は80〜90%に達している。

Kudiはそのようなナイジェリアの事情を考慮したモバイル送金サービスを提供するフィンテックスタートアップだ。シリコンバレーのベンチャーキャピタル、Yコンビネータの支援を受け事業を拡大している。

Kudiの送金サービスでは、インターネットアクセスは必要なく、電話回線につながってさえいれば利用できるようになっている。


Kudiウェブサイト

利用する際は、メッセンジャー、Skype、テレグラムでKudiのチャットボットに話しかけ、送金先の電話番号を入力すれば支払い・送金をすることが可能だ。

新しいアプリをインストールし、使い方を学ぶ必要なく、使い慣れたメッセージアプリで送金できる手軽さが売りとなっている。

ナイジェリアでは、モバイルでの支払い・送金需要は高く、KudiのほかにもPageやKongaPayなどいくつかの送金サービスが存在する。

Pageはナイジェリア国内でもっとも知られた送金サービスの1つといわれており、800万人以上のユーザー、6,000社以上の企業が利用している。このほどシリーズBの資金調達ラウンドで1,300万ドル(約13億6,000万円)を調達。同ラウンドでは、ペイパル創業時メンバーの1人、ジェレミー・ストップルマン氏が個人投資家として参画したことが明らかになっている。

ナイジェリアの首都はアブジャだが、スタートアップが集うは同国最大都市ラゴスだ。ラゴスはアフリカ全土のスタートアップキャピタルとも呼ばれ、アフリカ大陸随一のスタートアップエコシステムを有しているといわれている。デジタルテクノロジーに精通した人材が多く集まることから、グーグルやフェイスブックも、ラゴスに拠点を設立する計画を明らかにしている。


ナイジェリア最大都市ラゴス

ラゴスの中心的なスタートアップハブとして知られているCo-Creation Hubには、リサイクルとごみ収集からビジネスモデルをつくったWecyclersや、母親どうしのコミュニケーション支援プラットフォームを開発するMamaletteなど、ユニークなスタートアップが数多く在籍している。

「シリコン・サバンナ」から多くのスタートアップを輩出するケニア

ケニアといえばサバンナをイメージするかもしれないが、近年テクノロジースタートアップの輩出・育成を支援する環境が整い、多くのスタートアップが登場している。

HydroIQは、IoT技術を活用した水マネジメントシステムを開発するスタートアップだ。このほど開催された「スタートアップ・オブ・ザ・イヤー2018」では、アフリカ600社以上のスタートアップから最優秀賞に選ばれている。

同社によると、アフリカでは水道会社から消費者が水を使うまでのプロセスで水漏れなどにより50%の水が失われているだけでなく、水道代の支払いシステムが十分整っていないため45%の収益が失われているという。

HydroIQのソリューションを使うことで、消費者はモバイルで水漏れがないか確認できるだけでなく、水の消費具合もチェックでき、さらに水道代の支払いまでモバイルで完結することができる。


HydroIQウェブサイト

水資源問題が世界中で深刻化するなかで、同社のソリューションがアフリカ以外でも注目されるのは間違いないだろう。

ケニアの首都ナイロビは「シリコン・サバンナ」と呼ばれるほど、スタートアップのエコシステムが整うハブとなっている。

2010年に登場したコワーキングスペースiHubはケニアの起業家が集う中心的コミュニティーになっており、これまで170社以上のスタートアップが誕生したという。現在、このようなコミュニティーはナイロビだけでなく、他の都市にも広がりを見せており、ケニアのスタートアップシーンの盛り上がりを象徴するものとなっている。


ケニアの首都ナイロビ

ケニアはおそらくアフリカでも一二を争うデジタル化促進国家といえるだろう。モバイルインターネット速度はアフリカでもっとも速く、政府は経済発展に向け人工知能やブロックチェーン活用を積極的に進めようとしているのだ。3月にはナイロビで「ワールド・ブロックチェーン・サミット」を開催するなど、その力の入れ具合を見て取ることができる。

ライドシェアプラットフォームを開発するGawana、人工知能を活用した救急システムを開発するBridify Connect Africaなど、ケニア発のユニークなスタートアップが続々登場しており、今後の発展に期待が寄せられている。