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幼いころ、年上の従兄弟の家でよく「レゴ遊び」をしていた。さまざまな形のブロックを組み立てて形をつくり、そこに意味を持たせて小さな世界をつくっていく。その作業がとても楽しかったのを覚えている。
今振り返ってみると、これがなにかを「自分で創造した」という生まれて初めての記憶かもしれない。
レゴが大規模なリストラを実施。業績不振の裏に『マインクラフト』の存在?
世界中に名を馳せるレゴブロック。メーカーであるレゴ社もまた、世界第3位の売上を誇る玩具メーカーだ。しかし、そんなレゴ社がいま、業績不振に陥っている。
2017年9月5日、世界の従業員の約8%にあたる約1,400人を年内に削減すると発表したのだ。主に米国や欧州における、2017年上半期の売上高が減少していることを受け、コスト削減による業績改善を目指すのだという。
それではなぜレゴの業績は悪化したのか。原因の一端となっているのが『Minecraft(マインクラフト)』の台頭だろう。
『マインクラフト』は、特定のクエストやタスクが存在せず、プレイヤーが自分で目標や目的を決めていく「サンドボックス型ゲーム」の代表的なタイトル。3Dブロックが溢れる世界を舞台に、探索や採掘を通して自分の思い描いた世界を作り上げていくゲームだ。世界中にプレイヤーがいて、その数は年々増加している。
さらに、PC版ではプログラミングによってオリジナルの立体ブロックを作ることができる。パズルゲームに近い感覚で、プログラミング初心者でも気負わず挑戦できるのだという。そのため、子どものプログラミング入門として『マインクラフト』が推奨されており、実際に専門の教室や教材も増えてきている。
つまり、これまでレゴブロックが担ってきた、子どもたちに「自分で何かを創造する経験」を与える役割は、『マインクラフト』をはじめとするビデオゲームに取って代わられてしまったということだ。
「子どもがゲームで遊ぶのは悪」という偏った考えも、プログラミングの学習という付加価値がつくことで大きく変化してきているのだろう。
310億円の赤字から劇的な復活。レゴが目指した「原点回帰」
ここでひとつ触れておきたい事実がある。
実は、レゴ社が業績不振に陥るのは今回が初めてのことではないのだ。90年代以降、ゲームボーイをはじめとするデジタル玩具が流行したことで、同社もテレビゲーム開発やテーマーパーク開設など、さまざまな新規事業に乗り出した。
しかし、これらの新規事業は新たな収入源となるどころか、大きな負債へとつながり、2004年には当期損失約310億円という赤字を抱える結果となってしまったのだ。
そんな状況からレゴ社を立ち直らせたのが2005年にCEOに就任した経営コンサルタント出身のJørgen Vig Knudstorp氏。彼は、急激に事業の多角化を進めた結果、見失ってしまったレゴ社ならではの強みやミッションを再度定義させるところから経営の立て直しを図った。
そして「子どもたちに最高のものを」という創業当時の理念に原点回帰。ブロック玩具の商品開発に全力を注ぐことを決めた。するとレゴ社のビジネスは再度軌道に乗り売上が増加。右肩上がりに増収増益を続け、劇的な復活を遂げたのだった。
(LEGOグループ社員の心構えについて話すJørgen Vig Knudstorp氏)
プログラミングができるおもちゃが「遊び」を「学び」に昇華させる
原点回帰をしたことによって業績を回復したレゴ社。しかし、新しい取り組みを行ってこなかったわけではない。代表的なのが、レゴブロックを活用したプログラミング教育だ。
レゴ®パーツやプログラミングブロック、モーターやセンサーを組み合わせることで、さまざまに動作するロボットを作ることができる「LEGO MINDSTORMS(レゴマインドストーム)」、組み立てたレゴをさらに簡単なコードで動かすことができる「LEGO BOOST(レゴブースト)」などの商品が発売されている。
「レゴマインドストーム」や「レゴブースト」は、レゴブロックの進化を象徴する商品といえる。しかし、子どもの創造性を育てるおもちゃは、もっと大きな進歩を遂げている。
たとえば、いもむし型のロボットの走り方を自分でデザインすることで、プログラミングの基本思考を学ぶフィッシャープライスの「プログラミングロボ コード・A・ピラー」、スマートフォンやタブレットと連動させてプログラミングの仕組みを理解するバランスボディ研究による「プログラミングロボット ダッシュくん」など、幼児期からプログラミングの基礎に触れられるようなおもちゃが続々と開発されているのだ。
さらに、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボが開発した「Scratch」は、簡単に自分だけのゲームやアニメーションを作れるプログラミング学習環境だ。
常にプログラムがどのように動作するかを確認しながらプログラミングを進められるため、子どもでも簡単に理解することができる。
また、キーボードではなく画面に表示されるブロックを組み立てていくように扱うため、パソコンの基礎知識も少なく済む。作った作品はウェブ上に公開でき、自由に遊び合うことが可能。子どものプログラミング学習の第一歩として最適な「言語」だ。
また、ソニーが開発したデジタル玩具「toio」は、ふたつのキューブを自由自在に動かすことで、自分ならではの遊びを創造できる。キューブの上に自分で作ったパーツを乗せれば、それだけで世界でひとつだけのおもちゃになるのだ。
ちなみに、キューブの突起はレゴブロックを組み合わせるためのもの。工夫次第で「toio」はいわば、遊びのプラットフォームになるのだ。
このように、遊びを学びに昇華させる新しいおもちゃは続々と進化を遂げている。なかでもプログラミング学習ができるおもちゃは、子どもたちの将来の可能性を大きく切り拓くものとなるだろう。
プログラミングはすでに、学ぶものというより、遊びのひとつとなっているのかもしれない。
image:LEGO EDUCATION, Minecraft, Scratch, toio