「『直行・直帰』って予定表に書いているとサボっていると疑われるから、朝7時と21時にタイムカードだけ押すために会社に行ってた」という営業職の友人がいた。

彼の営業成績はとても優秀だった。だが、見えないところで仕事をしていると「サボっているのでは」と疑うカルチャーが抜けない会社だったというのだ。

多様な働き方を提供し、柔軟に働ける職場を提供していく流れが強まっている。実際には、仕組みばかりが整備され、働く人々のマインドがいつまでもアップデートされていない職場は多い。

古い価値観が根強い職場環境では、ミレニアル世代を上手く取り込むことは難しいだろう。ミレニアル世代の「働き方」に対する価値観は、仕組みと同様、常にアップデートされてきている。

デロイト・トウシュ・トーマツは、毎年ミレニアル世代の動向を調査する「デロイト ミレニアル年次調査」を行っている。今年の「デロイト ミレニアル年次調査 2017」では会社への帰属意識や仕事への価値観についてリサーチ・レポーティングが行われた。

調査対象は、新興国・先進国合わせた世界30カ国、約8,000人のミレニアル世代。大卒のフルタイムで働くオフィスワーカーだ。同レポートから、ミレニアル世代の「働き方」に対する価値観を紹介していく。

グローバルでは84%の企業が柔軟な勤務形態を導入している

日本では、働き方改革をはじめ働き方の選択肢を多様化させる流れが進み始めている。企業は従業員に対し、個々人の要望に合わせた柔軟な働き方を提供できるよう環境を整備してきた。

フレックスタイム制や、役割選択、雇用形態などを含めたグローバルにおける働き方の変化を見てみると、ミレニアル世代の84%が「自分たちの所属する企業では何らかの形で柔軟な勤務形態を導入している」と回答している。

柔軟な働き方を享受するミレニアル世代に、柔軟な働き方の影響を問うと、「生産性」「モチベーション」「健全な生活、健康、幸福度」などに影響していると8割前後が回答した。

柔軟な働き方が提供されることで、ミレニアル世代はさまざまな価値を手にしていると感じているのだ。

逆に柔軟な働き方を導入していない企業に勤めるミレニアル世代は4割前後にとどまり、体感したことがある人ほど柔軟な働き方に価値を感じていた。

柔軟性は企業へのロイヤリティにも結びつく

働き方を柔軟に選べることは「会社への帰属意識」にも影響している。この傾向を掘り下げていくと、企業に対する当事者意識との関連性が見えてきた。

リサーチではミレニアル世代は自身が所属する企業に対し、以下の点で責任感を感じるかを問う質問が行われた。「倫理的行動/企業の品位」、「企業の全体的な評判」、「企業の戦略的方向」などの項目でだ。この問いにおいて、柔軟な働き方をするミレニアル世代はそうでない人に比べ、項目ごと差はあれど、いずれも2−3倍近く責任感を持っていることが明らかになった。

数字的には全体の1/3程度にとどまっているものの、ミレニアル世代は働き方を柔軟に選択できるという自由を享受する代わりに、自身の行動を通し企業に価値を返すかたちで責任を全うしている。

性善説に基づく信頼が、柔軟で自由な働き方を可能にする

柔軟に働けることは、個々人の考え方にとどまらず、従業員同士の関係性にも影響を与えている。リモートワークや、フレックス勤務など「自由な働き方を提供すると、従業員はサボり出すのではないか」という懸念はこの文脈において都度語られてきた。

しかし、柔軟に働くミレニアル世代はその「懸念」をいい意味で感じていないようだ。柔軟性の高い勤務形態を導入している人の86%は「同僚が柔軟な勤務形態を悪用していないと信頼している」と回答。

同様に、86%の人が、自分自身のことを「ラインマネージャーから柔軟な勤務形態を悪用していないと信頼されていると思う」と回答した。この結果から分かるのは、性善説にたち、お互いを信じ合っているということだ。

「会社員」が選択肢の1つとなる時代

ミレニアル世代が柔軟に働くことで、企業へのロイヤリティが高まり、お互いを信じてより生産性高く働けているという事実はある。ただし、これは実際に柔軟に働く経験をした人にしかわからないものであるということも数字が示している。

2020年には米国の労働人口の50%がフリーランスになるという予測があるように、「会社員」はあくまで選択肢の1つでしかなくなっている。この選択肢をあえてとるためにはそれなりの理由が必要になっていくだろう。

フリーランスと比較されることを考えると、企業はガチガチに固まった旧来の働き方を提供していては、人を雇うことも難しくなっていく。従業員を規則で縛り、性悪説的に管理する必要はない。データでは、ミレニアル世代の労働者は柔軟な働き方を悪用することもなく、そのメリットだけを上手く享受している。

メリットを体感したことのない人が疑心暗鬼になっているにすぎない。競合企業だけではない、フリーランスや場所を問わない働き方などがライバルになったとき、企業は従業員に何を提供できるのか。働き方の面を含め、考え続けなければいけない。

ちなみに冒頭の彼は転職し、いまはスタートアップのCMOとして顧客を次々と開拓し結果を残している。

Img: Deloitte, PEXELS

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