家を引っ越す、もしくは購入するといったタイミングはその人にとって大きな転機であるし、その実行のためにはじっくりと物件を選びたいと思うのが普通だろう。

しかし仕事をしていると、なかなか不動産の内覧の時間を捻出することは難しく、自身が気に入った物件を内覧できずにその物件が埋まってしまったり、ということも起こりうる。

そんな問題をテクノロジーで解決しようとしているのが不動産企業がある。ケイアイスター不動産株式会社は、12月より株式会社ライナフが提供する「スマート内覧」を同社の一部物件を対象に試験導入を始めた。

スマホや携帯電話を使い「開錠」。業者との対面なし

気に入った物件を見つけて「実際の建物を見てみたい」と思った際、「内覧予約」まではサイト上で気軽に出来る。ただし、特に不動産売買物件での内覧は、不動産会社に鍵を開けてもらい案内してもらうという、不動産営業との対面内覧が一般的だ。

これに対し、スマート内覧は、携帯電話を利用して、セルフで内覧できるサービスとなっている。専用のサイトからアカウント登録(無料)をし、webカレンダーより内覧したい物件の空き状況を確認した上で、空いている中から希望の時間をオンラインで予約する。

予約当日、ユーザーのみで現地に向かい、アカウント登録した携帯電話で「開錠」ボタンを押すと、施錠されている鍵が開き、自由に内覧することができる。退出の際も開錠同様に携帯電話から施錠をすることができるという仕組みだ。

これは、玄関のシリンダーに直接貼り付けることが出来る「NinjaLock」というドアロックシステムを使用し、予約されている携帯電話の情報を確認し、予約時間内のみ開錠・施錠の指示を受け取ることができるもの。

家族だけのプライベート空間を疑似体験してもらえるよう、家具を入れたモデルハウスを優先的に一部の完成現場にて試験運用を行うとしている。

スマートスピーカーが不動産業にもたらす影響とは

2017年は日本市場でスマートスピーカーの発売が相次いだ。

スマートスピーカーはAIを搭載しており、無線通信接続機能と音声操作のアシスタント機能を持つスピーカーである。これまでも、LINEの前機種LINE Clova、Google
Home、Amazon Echoが発売されている。2018年にはAppleのHome Podが発売予定である。

今後スマートスピーカー市場の競争は激化が予想され、それに付随した新たなサービスが生まれてくる可能性も大きい。

スマートスピーカーが普及すれば、今回のようなスマートホーム化は一層進む可能性を秘めている。営業スタッフを必要としない代わりに、内覧先の物件にスマートスピーカーが備え付けられていて、内覧者の要望に応える、というスタイルが出来上がるかもしれない。

スマホと同じように豊富な機能を持つスマートスピーカーの普及は、スマートホーム化をより身近なものとし、住宅内覧のスタイルが大きく変貌することで不動産のビジネススタイルの変化にも寄与するという想像はいきすぎたものではないだろう。

さらなる機能の充実が普及のカギ

今回のケイアイスター不動産の試みは、不動業界に新風を巻き込むものだと言える。今後、この住宅内覧のスタイルに追随する動きがみられるかもしれない。

しかし、家の購入は人生の転機であるからこそ、やはり業者との対面でないと不安だ、あるいは内覧が簡単にはなったが、もっと詳しく説明を聞きたいといったニーズも出てくるのはないだろうか。そのためには、さらなる機能の充実が普及のカギとなるだろう。