INDEX

新世代のA(Action)面とB面(Business)に密着するインタビュー企画。第11回に登場するのは、福田駿さん。B面では、新卒領域日本一のYouTubeチャンネルを運営し、株式会社Diary代表としてもクリエイターとしても活躍する福田駿さんの価値観に迫ります。
- 【福田駿】
-
株式会社 Diary代表取締役。就活YouTubeチャンネル「しゅんダイアリー」を運営している。
登録者は25万人を超え新卒特化型のYouTubeチャンネルでは日本一を誇る。
「地方と都会の情報・機械格差を無くすこと」をテーマにオフラインでしかしらない就活情報を発信しており、これまで100社以上の採用PR動画の制作を行ってきた。
- YouTube: https://www.youtube.com/@shundiary
- Instagram: https://www.instagram.com/shukatsu_diary/
- X: https://x.com/shundiary55
- TikTok: https://www.tiktok.com/@shundiary
福田駿のA面はこちら
「現実の方が良くない?」等身大の自分で生きたい|福田駿のA面
熱意を源に本質的なアプローチを。コンテンツ作りの秘訣
ーアカウントを運営する上で最も重要だと考えていることは何ですか?
「動画を上げ続けること」です。7年ほど前に動画投稿を始め、エンタメ系として半年間、仮面浪人系として1年間、そして大学3年生からこれまで就活チャンネルとして投稿を続けてきました。動画を上げ続けたからこそ分かったことが多いと感じています。
個人によるコンテンツ配信のハードルが下がり、毎日大量のアカウントが生まれている中で、1年以上動画を上げ続けられるチャンネルは、肌感覚で5%くらいだと思っていて。少ない投稿でもうまくいっているケースもありますが、僕はそういったやり方で登録者を伸ばせるタイプではないので、「量」と「スピード」は特に重要だと考えています。
ー動画を上げ続けるための戦略や計画はありますか?
あまり考えたことはないですね…。ただ、僕は強い原体験があると走り続けることができるタイプで。例えば「しゅんダイアリー就活チャンネル」は、地方での就職活動をする中で都会との格差を強く感じた経験が原点になっています。
今は27歳になって就活生とは世代が離れてきましたが、数年前に会社の事業を他の会社に譲渡(M&A)したとき、売り手と買い手の間に格差を感じたことをきっかけに、新たにM&Aのチャンネル「M&A CAMP」を立ち上げました。
こうした「○○を解決したい」という思いがあると、頑張り続けられるんですよね。逆に、自分の体験に基づいていないテーマだと上手くいかないことが多くて。これまでお金系のチャンネルや転職系のチャンネルも作ったのですが、10万人まではいっても、そこからがなかなか伸びていかないんです。それはきっと、僕自身が就職も転職したこともないからだろうと思っていて、やっぱり原体験ありきだなと感じています。

ーコンテンツを通じてどのようなメッセージを伝えたいと考えていますか?また、それを伝えるためにどのようなことに取り組んでいますか?
「自分軸で生きるっていいよね」というメッセージを伝えたいです。ただ、就職活動ではそんなことも言っていられないので、就活生のうちは納得感が大事だと考えています。大手企業に内定をもらったから幸せになれるわけではないですし、逆にブラックと言われる会社に入ったとしても、その人が納得すればいいと思うんです。
だからこそ、情報格差をなくすことで納得感を得られるよう、「就職活動における情報や機会の格差をなくすこと」をコンセプトに動画づくりをしています。そして、コンテンツは「自分を知ること」「選択肢を知ること」「会社を知り、受かる方法を知ること」の3つの軸で設計しています。
ー視聴者の多くを占めるZ世代に向けて発信する上で意識していることは何ですか?
「体当たり感」「等身大」「親近感」です。最初は僕自身が出演していましたが、今は就活生をキャスティングして実際の就活の様子をドキュメンタリーのように動画にすることで「体当たり感」を演出しています。また「自分にもできそう」と思ってもらえるような「親近感」、そして、ありのままをさらけ出すという「等身大」の魅力を大事にしています。これらは、僕たちのメッセージや価値観を伝わりやすくするために大切な要素だと考えています。また、視聴者に自分と似ている部分に共感しつつ、憧れを感じてもらえるようなコンテンツにすることで、ファンを獲得しやすい印象があるので、そういった意味でもこの3つを大切にしています。
「やめる」という選択肢はなかった
ークリエイターとしての活動を始めた当初に直面した壁は何でしたか?
活動を始めた当初は、毎日投稿をしていても思うように登録者が伸びなくて。僕自身はとても楽しく動画づくりをしていても、登録者が増えなければ見てもらえないんだという、現実の厳しさを痛感しました。
ーそこからどのように壁を乗り越えたのですか?
当時、仮面浪人で1年間頑張ったものの失敗して、地方に残ることになったんです。そのことをコンプレックスに感じながらも、「何者かになりたい」ともがいていました。そんな中で、大学や社会の枠組みにとらわれずにできることは、YouTubeしかなかった。これしか生きる道はない、と信じ込んでいたからこそ、「やめる」という選択肢はなかった。だから、乗り越えられたんだと思います。
ー失敗を乗り越えるために大事だと思うことは何ですか?
ちゃんとした大人や周りの人に相談することですね。理想としては、失敗する前に相談することです。僕は大きな炎上を経験していないものの、大学生からYouTubeを始めて、その流れで会社を設立して就職もしていないので、社会の常識や会社というものを知らずにここまで来ているんですよね。だから、周りの人に怒られながら学ぶ日々です。分からないことが多いからこそ、しっかりした大人を味方につけて相談することが大事だと感じています。
最近の就活は「人起点」。視聴者との接触が重要な理由
ー視聴者とのつながりを強めるために大事にしていることは何ですか?
視聴者との接触を増やすことです。例えば、就活生向けのイベントやライブ配信、動画経由の面談など、できるだけリアルやオンラインで会える機会を作っています。
最近の就活は“企業名検索”より“人検索”に変わってきている印象があって。「有名な企業だから」といった理由も変わらずあると思いますが、「大学の先輩が入社したから」「先輩が紹介していたから」といったように、自分のキャリアの参考として“人”を起点にする人が増えていると感じています。
そういった「人」の存在を、「しゅんダイアリー」に置き換えていけたらと思っているんです。そのためにも、動画をきっかけにリアルな接触の場へとつなげていく構成を意識しています。

ー視聴者からのフィードバックをどのように取り入れていますか?
やっぱり実際の就活生の意見が一番参考になるので、いただいたコメントを動画に取り入れることが多いです。例えば、以前までグループディスカッションは短く編集するのが良いと思っていたのですが、「ノーカットで見たい」というコメントがあったんです。実際にそれを取り入れて動画を出したら再生回数がかなり伸びて。リアルな声にこそニーズがあることを日々実感しています。
ーエンゲージメントを高めるために行っていることは何ですか?
Instagramのストーリーズで質問返しやクイズを行うなど、視聴者と毎日コミュニケーションが取れる体制を整えています。YouTubeはInstagramと比べるとエンゲージメントが下がる印象があるため、就活生がインタビューをする就活生視点のコンテンツを作ったり、コメントに返信したりと、日々模索しています。
リアルな声や様子がコンテンツの源泉
ーどのようにコンテンツを選定していますか?
就活は時期によってある程度スケジュールが決まっているので、まずはそれに合わせること。そしてキャスティングは、就活生に人気で勢いが出そうな人や、ビジネスメディアには出ていないけれど個性がある人に依頼することが多いです。
ー就活生の関心やニーズをどのように把握していますか?
最近力を入れている企業の密着動画は、人気企業ランキングを参考にして上位の企業から訪問しています。あとはSNSで目立っている人事系の方に取材したり、実際の就活生の悩みをヒアリングしたりしながらコンテンツを作っています。
ーコンテンツ制作のアイデアを得るためにどのような活動をしていますか?
就活生とのリアルな接点を持ち、ヒアリングすることです。最近は少ないですが、インターン生を採用してリアルな就活の様子を間近で見せてもらうこともあります。そうすると、見聞きするよりも感覚的に就活のリアルを知ることができますし、本人たちの様子をありのまま動画に落とし込むこともできます。
また、登録者は少ないけれど、特定の動画だけ伸びているようなコンテンツもチェックしています。学びや知的好奇心を満たしてくれるコンテンツは、1~2時間の長尺の方が伸びやすい傾向があり、ショート動画やその他の多くの動画とはニーズが異なるので、どのような動画が伸びているかを意識して見るようにしています。

“文字では見えないリアルな情報”が動画の価値
ーこれからコラボしたいと思う企業はありますか?
海外企業や、あまり情報が表に出ていない投資銀行や商社とコラボレーションして密着動画を作りたいです。
動画メディアの価値は、世の中でブラックボックス化されている情報を可視化できることにあると考えています。口コミサイトを見れば面接での質問や回答を知ることはできますが、その場の雰囲気や人事のスタンス、口調などは分からないじゃないですか。動画は嘘がつけないので、そうした雰囲気だけでなく、企業の内情や社風も節々から伝わってくると思うんです。
そうしたものを動画にしていくことで、様々な企業の情報を“民主化”していきたいと思っています。
ー過去のコラボレーションで特に成功したと感じるプロジェクトはありますか?また、その成功の秘訣は何だと思いますか?
サイバーエージェントさんの密着動画は特に伸びて、上手くいったコラボレーションでした。サイバーエージェントさん側も社員のリアルを見せるスタンスで動画を撮らせてくださったので、リアルな内情を映すことができ、「就活生の憧れ」という要素ともマッチしたのが、成功の理由だと思います。
キャリアに悩むあらゆる人へ届けたい。チームでさらなる成長を
ー活動を続ける先で、どのようなことを最終的に実現したいと考えていますか?
キャリア領域で日本一になり、就活生やキャリアに迷う人たちの悩みを解消し、選択肢を広げ、一歩踏み出すことを後押しできるようなチャンネルにしたいです。
ーそれに向けて今後取り組みたいと考えているプロジェクトはありますか?
直近ではコンテンツの拡充を進め、密着動画は1,000本くらい上げたいです。新しいプロジェクトとしては、エンターテイメントとしても楽しんで見られるコンテンツを作っていきたいと考えています。40万人の就活生がいる中で、僕たちのチャンネルを見てくれている人が2割だとすると、32万人もの学生がライト層なんです。そういう人たちにも届けるためには、エンタメ系の動画を見ていた流れでしゅんダイアリーがおすすめに出てくるくらい、ポップな動画も作っていく必要があると考えています。

ー福田駿さんは自身の成長を大切にされていますが、チャンネルとして成長するために行っていることはありますか?
僕だけでなく会社としてもまだまだひよっこなので、みんなで成長するために様々なことに挑戦しています。その一つが、プロを呼んでの月一勉強会です。AIやフィジカルアップ、キャリアアップ、営業などテーマを決めて、その領域のプロに来ていただいています。営業勉強会に来てくださった方に営業部長代理を務めてもらうといったケースもあり、自分たちだけでは補えない部分は、周りの人を巻き込んで補っていく姿勢を大切にしています。
「都市と地方の就活格差をなくしたい」という思いを原点に、就活領域で最前線を走り続ける「しゅんダイアリー就活チャンネル」。その思いがチャンネルとしても企業としても強固な軸となり、動画という形で就活生たちにきちんと届いているからこそ日本一であり続けられるのだろう。福田駿さんは、軸がぶれることなく、かつ本質を見落とさずに動画を作るプロフェッショナルだ。この取材にも、そんなコンテンツ作りのヒントが詰まっていたのではないだろうか。
文:安藤 ショウカ
写真:小笠原 大介