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共感される行動の背景にある理由を明らかにするインタビュー企画。数多くのユーザーに支持されるクリエイターにA(Action)面とB面(Business)の両面から、その行動の原理を探ります。第8回に登場するのは、はるあんさん。A面ではYouTubeをベースに、SNSで活躍の幅を広げるはるあんさんのパーソナルな部分をQ&A形式で解剖していきます。
- 【はるあん】
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12歳で料理を始め、16歳でYouTubeチャンネルを開設。「おいしい動画」と題して、これまでに1000本を超える動画を投稿。料理やお菓子、パンのレシピなど、誰でも簡単に楽しくおいしく作れるレシピを提案しており、同世代の女性のみならず自身の祖母世代までの幅広い年齢層のファンから支持を得ている。19歳で初めての書籍『はるあんのとっておきレシピ(KADOKAWA)』を発売。発売前重版、Amazonランキングで1位を獲得。「料理は楽しい!」を伝えることをモットーにYouTube、Instagram等のSNSをはじめ、テレビ、イベント、料理教室などで活動中。
- YouTube: https://www.youtube.com/@haruanne
- Instagram: https://www.instagram.com/haru_fuumi
- X: https://x.com/haruanne22
- TikTok: https://www.tiktok.com/@haruanne22
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自分軸がないと発信する意味がない。|はるあんのB面
若者のトレンドの最先端は韓国
Q.普段最も利用するSNSはなんですか?
InstagramやYouTubeをよく利用します。ただ、プライベートでは閲覧が中心で、主に友人や好きなクリエイターの投稿を見たり、料理の情報を集めたりしています。Instagramは、大まかなイメージを知りたい時やインスピレーションを得たい時に、海外の投稿を見ることが多いです。YouTubeはレシピや情報を細かく知りたい時に、日本語の解説動画を見ています。
Q.訪問先(お店)選びの際にはどのように検索し参考にしますか?
お店や旅行先を決める際は、友人の口コミを参考にすることが多いです。「あの場所、良かったよ」と言っていたことをふと思い出し、それが第一候補になることがよくあります。SNSについては、発信を始めた当初から仕事の一環として捉えているため、プライベートの行動に反映させることはあまりないですね。
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Q.コミュニケーションの取り方の変化について教えてください。
プライベートではほとんどLINEを使いますが、本当に必要なことを連絡する程度です。私自身、プライベートと仕事の境界があまりないので、「誰かに共有したい」「見せたい」と思ったことは、Instagramのストーリーズに投稿することがほとんどです。
Q.今若者の間でトレンドとなっている商品や、サービスなどはありますか?
若者のトレンドの最先端は韓国だと思っていて、特に最近は麻辣湯(マーラータン)が流行っていると思います。もともとは中国の料理ですが、韓国のお店のスタイルが人気を集めています。
やはり、韓国で流行っているものが日本に入ってくる流れがあると感じます。最近の若い子たちは舌が肥えていて、数年前のようにただかわいいだけでは流行りにくくなっています。その点、韓国のものは見た目だけでなく、味もしっかり美味しいことをみんなが知っているんだろうと思います。
50年後も料理を好きでありたい
Q.普段、何をして過ごしていますか?
出かけることはあまり得意ではないので、基本的には家の中で動き回っています。ただ、決まったルーティーンを作るのではなく、料理を中心に日々違うタイムスケジュールで過ごすのが好きです。例えば、パンを焼く日は朝から発酵の準備をしたり、試作をしたり、編集作業をしたり……。その日の気分や必要に応じて、やることは変わります。
Q.ネット上で尊敬している人や信頼している人はいますか?
料理家の栗原はるみさんを尊敬しています。今は料理を軸に生きることができていますが、これからもずっと好きでいられるかはわかりません。栗原さんは私より50年ほど長く料理を楽しんでいて、その生き方から「料理を軸に生きる」ということがすごく伝わってきます。将来、私もあんなふうに料理と向き合い続けられたらいいなと思っています。また、尊敬しているからこそ、無意識のうちに影響を受けているのかもしれません。写真の撮り方や食器の使い方が似てきている気がしますし、文章を書くときも栗原さんのように優しい言葉を選ぶようになったとも感じます。
Q.仕事への考え方や、何に重きをおいているのかを教えてください。
私にとって料理は一番好きなことであり、一番大切なものです。そのため、「いかに料理を仕事として続けていけるか」ということを常に考えています。ただ、仕事として意識しすぎるとプレッシャーを感じてしまい、料理を心の底から楽しめなくなってしまうんです。「この料理はどのターゲットに向けて、どんなレシピにしようか」と考え始めると、自分らしさが薄れ、料理そのものがズタボロになってしまう感覚があります。だからこそ、仕事を仕事と思わないことを意識しています。料理を楽しんでいれば、その気持ちは自然と視聴者にも伝わるとも思うので、何も考えずにただ料理を楽しむことを大切にしています。
結局は料理関係のお店にたどり着く
Q.普段、何にお金を費やすことが多いですか?
食費と食器とキッチングッズです。服を買いに行くよりも料理をしていたいと思うくらいなので、買い物に出かけても、自然と食器や食材、スパイスなどを選んでしまいます。それが仕事にもつながりますし、特に意識していなくても最終的には料理関係のお店にたどり着いているんです(笑)。
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Q.商品購入までのプロセスを教えてください。(まずはどこで商品の存在を知り、どこでその詳細を調べるのか、最終的にどこで購入するのかなど)
基本的に、お店で自分の目で実際に見て、直感で選んで購入することが多いです。そうして選んだものの方が、長く使い続けている気がします。
お店では買えないものや手に入りにくいもの、オンラインの方が安くて高品質のものなどは、ネットで購入することもあります。その場合は、すで欲しいものが決まっていて、それを購入することがほとんどです。料理は「あるものをどう組み合わせるか」が大切なので、SNSで新しい商品を探すことはほとんどありません。
推しは生活を動かしてくれる
Q推しの存在はいますか?その人の存在がどう購買行動に影響を与えていますか?
推しはやっぱり栗原はるみさんです。食材を買う時に「栗原さんが卵料理を作っていたから、私も卵を買おう」と思ったり、ティラミスをガラスのボウルで作っていたのを見て、無意識のうちに似たようなものを探してしまったりします。常に頭のどこかにある存在で、それが欲しいものの選択に影響していると思うので、推しは生活を動かしてくれる存在だと感じますね。
Q.推しの企業や印象に残っている企業はありますか?
ストウブ(STAUB)とキッチンエイド(KitchenAid)です。ストウブは、さまざまな色や大きさのストウブ鍋を展開しているブランドです。日本のキッチングッズは実用性重視のものが多いですが、見た目が楽しいと料理へのモチベーションも上がるので、ストウブのような製品は生活をより豊かにしてくれると感じています。
キッチンエイドは、海外では一般的なスタンドミキサーのブランドで、メレンゲや生クリームを簡単に泡立てることができます。日本では総合点の高さで実用性を判断しがちですが、一点集中型も悪くないのではと思います。日本での生活に馴染むと思いますし、料理がもっと楽しくなるので、もっと広まってほしいブランドです。
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Q.最近気になった広告や企業のPRはありますか?
AirbnbのCMです。実際に宿泊している写真と音楽だけのシンプルな作りですが、広告の方向性を大きく変えたことで印象もガラッと変わり、衝撃を受けました。以前は「若者が安く泊まるための民宿」のようなイメージだったのが、そのCMでは「手軽だけど品が良い」印象を受け、わざわざ泊まりに行きたくなるほどでした。実用性よりもブランディングに振り切った点が、刺さったポイントだと思います。
実は、料理関係の広告はあまり刺さったことがないんです。多くの広告が実用性を前面に押し出しているため、印象に残るものが少ないんです。知っている商品でも、広告の表現によって印象が変わることがあるので、もっとクリエイティブな広告があったら面白いのにと思います。
例えば、料理に全く興味がなかった人が「ちょっとやってみようかな」と思うきっかけになるような広告があったらいいなと思います。印象を残すためには、見た目や色使いが重要になると思うので、ストウブのようなかわいいカラー展開を押し出したり、AirbnbのCMのように斬新なアプローチを取り入れたりするのが効果的なのではないでしょうか。
料理を人生の軸として発信を続けてきたはるあんさん。取材の中で「頭の中が料理でできているんです」とお話しされていたが、確かに常に料理を軸に生活が回っているのだと感じられた。逆に、そんな自分の軸である料理を発信しているからこそ、SNSにおいてもプライベートと変わらないそのままのはるあんさんを感じることができるのではないだろうか。
文:安藤 ショウカ
写真:小笠原 大介