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産業カウンセラー育成や個人向け電話相談などの活動を続ける日本産業カウンセラー協会では、日本労働組合総連合会(連合)と協力し、9月10日の「世界自殺予防デー」にあわせ、「働く人の電話相談室」を2007年から毎年開設している。
2018年9月10日(月)~12日(水)に実施した「第12回『働く人の電話相談室』」では、延べ843人から1,363件(※相談者からの主訴を最大3つまで選択する方式として集計)に及ぶ相談が寄せられた。
相談の実施方法は、フリーダイヤルによる電話受付。実施場所は日本産業カウンセラー協会の各支部だ。(※北海道胆振東部地震のため、北海道支部を除く。)
同協会では、今回の相談内容を集計分析し、結果をまとめて公開。相談件数については昨年の940件と比べて約1.5倍に増加した上、職場以外でのさまざまな悩みの比率が増え、相談内容の多様化がみられた。
また40~60代の相談が大幅に増大した一方、70代・80代の相談に関しては前年比2倍以上の増加がみられた。
職場以外での悩みの比率上昇が顕著に
同協会によると、今回の相談室開設で最も顕著だったのが、相談内容全体のなかで職場以外での悩みの比率が上昇したこととのことだ。
相談内容は「職場の悩み」のほかに、「キャリアに関する悩み」「自分自身に関する悩み」「メンタル不調・病気の悩み」「家族に関する悩み」「生活上の悩み」という分類をしている。
そのなかでも、「自分自身に関する悩み」「メンタル不調・病気の悩み」「家族に関する悩み」「生活上の悩み」についての相談件数が2017年と比較して2018年は30%以上増えた。
一例として生活上の悩みについて、2017年では73件だったところ、2018年は167件と倍以上に増えている。
同協会では、この結果が働き改革の進行やストレスチェック制度の浸透にともない、さまざまな相談先がある認識が広まった結果、職場以外の悩みについて第三者へ相談しやすい状況が生まれたことが理由と分析している。
なお、悩みの詳細に関しては「職場の人間関係」「セクハラ」「パワハラ」「その他 ハラスメント」などに分類してさらに細かく集計している。
そしてこのなかの1つであるパワハラ問題に関し、全相談項目のうちでも人間関係に次ぐ2番目に多い70件を記録。改善されないどころか、微増とはいえ年々増加する傾向にあると、同協会では分析している。
専門家・公的機関へ相談する人が大幅に増加
悩みの相談相手を聞いたところ、上の表をみてわかるように、職場や家族・友人・知人の割合が昨年の49.7%(「職場」+「家族・友人・知人」)から41.8%へ減少する一方で、公的機関や医者・産業医・カウンセラーといった専門家の比率が大幅に上昇。
昨年の43.5%(「医者・産業医・カウンセラー」+「公的機関」)から全体の5割を超える結果となった。
これは専門家や公的機関への相談が認知されて身近になったことや、「キャリアに関する悩み」「自分自身に関する悩み」「メンタル不調・病気の悩み」「家族に関する悩み」「生活上の悩み」など、悩みの内容によっては同僚や友人・家族などといった近しい存在に相談しにくいのではないかと同協会では分析している。
40代から60代の相談が増加、70代・80代の相談件数は昨年比2倍以上に
今回の調査では年齢別の相談件数についても集計している。例年と同様に50代中心に40代~60代からの相談が多く、この世代からの相談が全体の約60%を占めている。
一方で、前年と比較してみると、この世代からの相談件数は、2017年の合計318件から2018年は520件へと大幅に増加。
同協会では、世代的に管理職などのマネジメント層の悩みが増えたとも想像できるものの、就労人口の年齢分布からみて、ボリュームゾーンの団塊ジュニア(40代・50代)からの相談が多いという現実も考えられると述べている。
その一方で、70代や80代からの相談件数に関しては、2017年の合計51件から2018年の合計119件と2倍以上に増加。同協会では、シニア世代でも悩みを抱える方が増えている実態が明らかになったと述べている。
相談先の選択肢が身近な人から専門家へ
今回の調査の結果にもとづき、同協会では働く人の悩みが多様化し、職場以外にも悩みの内容が拡大しているとまとめている。
また40~60代をはじめ、さらにその上の世代からの相談が急増し、相談相手に関しては家族や同僚、友人といった近しい存在から医者・産業医といった専門家への比率が伸びていると指摘している。
なお「働く人の電話相談室」の活動については多くのメディアに取り上げられたこともあってたくさんの相談が寄せられており、同協会では今後も継続するとのことだ。
img:PR TIMES