内閣府が6月に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2018」によると、人口減少・少子高齢化は、経済再生と財政健全化の両面での制約要因となり続けると予測している。
そして、2024年には歴史上初めて50歳以上の人口が4割を超えることになるという。

その後も、若年人口や生産年齢人口が急速に減少していく一方、高齢者人口は2040年頃のピークに向け増加を続け、75歳以上の後期高齢者の総人口に対する比率は2030年頃には2割に近づくとみている。

このなかで、女性や高齢者の労働参加が進んだ場合でも、2030年までに就業者数は減少に転じている可能性が高いと予測している。

そして、この人手不足解消のために、即戦力となる外国人労働者を幅広く受け入れるための新たな在留資格を設けることを明らかにした。

現在、日本には約128万人の外国人労働者が働いているが、新たな在留資格の創設により、今後一層の外国人労働者の増加が見込まれる。

では、外国人労働者の実態はどうなっているのか。

日本労働組合総連合会は、ネットエイジアの協力のもと、外国人労働者の受入れおよび、外国人との共生に対する意識について把握するため、「外国人労働者の受入れに関する意識調査」を以下の条件で行った。

  • 期間:2018年9月25日~9月26日
  • 方法:インターネットリサーチ
  • 対象:全国の20歳~69歳の働く男女1,000名

3割弱の職場に外国人が「いる」。肯定派が多数に

この調査は、全国の20歳~69歳の働く男女1,000名(全回答者)に、職場における外国人労働者の受入れ状況や外国人労働者の受入れに対する意識を聞いたもの。

まず、全回答者に、自分の職場に外国人労働者がいるか、いないかを聞いた。その結果、「いる」が27.7%、「いない」が72.3%となった。

居住地別にみると、「いる」の割合がもっとも高かったのは関東の33.0%、もっとも低かったのは北海道・東北の12.1%だった。

日本の首都であり、世界最大クラスの都市である東京を擁する関東に外国人労働者が集中するのは、当然のことだろう。また、北海道・東北に少ないのは気候や居住環境が外国人には、厳しいということがあるのかもしれない。

また、業種別にみると、「いる」の割合が高いのは、情報通信業の47.9%、教育、学習支援業の46.6%、製造業の46.3%の順だった。

一方、もっとも低かったのは医療、福祉で14.2%だった。この分野は、人とのコミュニケーションが最重要視される分野であるため、外国人の就業は少し難しいかと思われる。

次に、日本全体として外国人労働者が増えることについて、どのように思うか聞いた。

その結果、『よいことだと思う(計)』(「非常によいことだと思う」「まあよいことだと思う」の合計、以下同様)は54.9%、『よくないことだと思う(計)』(「非常によくないことだと思う」「あまりよくないことだと思う」の合計、以下同様)は21.7%となり、肯定的な人が多数派となった。また、「わからない」は23.4%だった。

世代別にみると、『よいことだと思う(計)』の割合がもっとも高かったのは20代で65.5%だった。20代は他の世代に比べて外国人労働者が増えることをよいことだと考える人が多いようだ。

一方、『よいことだと思う(計)』の割合がもっとも低かったのは40代で46.5%と半数を下回った。

ここで、意外なのは否定派が40代をピークに50代、60代と少なくなっていることだ。一般的に、年齢が上がるほど、外国人に対する拒否が大きくなると思われがちであるが、実際はそうではないことがわかる。

40代といえば、働きざかりのピークの年代だ。この年代には、外国人に仕事を奪われるという危機感が強いのかもしれない。

人手不足を補うためには外国人労働者が必要

そして、日本全体として外国人労働者が増えることを「よいこと」だと考えている人(549名)に、よいことだと考える理由を聞いた。

その結果が以下のとおりになる。

  • 「人手不足を補うためには必要であるから」(63.9%)
  • 「外国人労働者が増えて多様な考えに触れると、新しいアイディアなどが生まれるから」(40.4%)
  • 「外国人労働者、日本人労働者と区別すること自体がおかしいから」(39.7%)

近年深刻化している人手不足を補うために外国人労働者が必要だと考えている人が多い結果となった。

業種別にみると、「外国人労働者が増えて多様な考えに触れると、新しいアイディアなどが生まれるから」は、情報通信業の54.8%と教育、学習支援業の64.0%が、他の業種より高くなっている。

情報報通信業では「日本人の雇用・労働条件、働き方や意識にプラスの影響があるから」の45.2%も他の業種より高くなった。

また、医療、福祉では、「人手不足を補うためには必要であるから」が76.5%で他の業種に比べて高い結果となった。

これらの結果から、最近の日本人は総じて、ビジネスに対してグローバルな視点を取り込もうと考えている人が多いと思われる。

一方、日本全体として外国人労働者が増えることについて「よくないこと」だと考えている人(217名)に、よくないことだと考える理由を聞いた。

その結果は以下のとおりになった。

  • 「外国人労働者の雇用より、まずは日本人の雇用を優先すべきであるから」(61.8%)
  • 「日本人の雇用・労働条件、働き方にマイナスの影響があるから」(45.6%)
  • 「日本人が就きたがらない仕事に、外国人労働者を活用すればよいという考えはよくないから」(30.0%)
  • 「日本全体として、多言語化などの環境整備が進んでいないから」(18.4%)
  • 「国民の中に外国人労働者を受け入れるという意識がないから」(16.6%)

同社ではこの結果から、外国人労働者の雇用より日本人の雇用を優先するべきとの考えから、外国人労働者が増えることをよくないと思う人が多いようだと分析している。

また、日本人の労働条件や働き方にマイナスの影響が出ることを懸念し、よくないと考える人は少なくないとみている。

たしかに、「外国人労働者の雇用より、まずは日本人の雇用を優先すべきであるから」という考え方が最多だったのは納得できる。同胞である日本人を雇用して、さらに不足であれば外国人を、と考えるのは自然だろう。

多数の人が「政府の説明は十分ではない」

続いて、全回答者に、自分の職場に外国人労働者が増えることについてどのように思うかを聞いたところ、『よいことだと思う(計)』は51.3%、『よくないことだと思う(計)』は25.4%となった。

自分の職場に、外国人労働者が増えるのをよいことだと思う人が半数を超えた。また、「わからない」は23.3%となっている。

世代別にみると、肯定派の割合がもっとも高かったのは20代(『よいことだと思う(計)』63.5%)、もっとも低かったのは40代(『よいことだと思う(計)』42.5%)だった。

ここでも、肯定派の最多は20代、否定派の最多は40代と、日本全体としての意識と同じ結果となった。職場で一緒になるとなれば、言語やコミュニケーションの問題が発生するが、20代はあまり抵抗がないようだ。

冒頭でも述べたが、現在、政府は人手不足への対応のために、外国人労働者の受入れを拡大しようとしている。そこで、全回答者に、政府は、外国人労働者の受入れ拡大について、国民に対して十分に説明していると思うか聞いた。

その結果、『そう思う(計)』(「非常にそう思う」「まあそう思う」の合計、以下同様)は17.0%、『そう思わない(計)』(「全くそう思わない」「あまりそう思わない」の合計、以下同様)は68.8%となった。政府の説明が十分ではないと考えている人が多数派であることがわかる。

次に、外国人労働者の受入れ拡大が行われた場合、日本人の雇用や労働条件に影響があると思うか聞いたところ、『そう思う(計)』は49.1%、『そう思わない(計)』は35.3%となった。

業種別にみると、『そう思う(計)』の割合がもっとも高かったのは情報通信業の64.6%、もっとも低かったのは医療、福祉(40.6%)となった。

重要なのは企業の受入れ体制の整備

続いて、全回答者に、外国人労働者の受入れの環境整備にあたって、何が重要だと思うかを聞いた。

その結果が以下のとおりになる。

  • 「外国人労働者を受け入れる企業の体制整備」(46.2%)
  • 「外国人労働者も同じ職場の仲間として受け入れる日本人の意識の醸成」(45.3%)
  • 「外国人労働者に対する日本語教育」(39.8%)
  • 「外国人労働者の権利を保護するための法律や制度の整備」(38.2%)
  • 「外国人労働者に対する母国語による相談・支援体制」(27.3%)

企業の受入れ体制の整備が重要視されているようだ。

また、外国人労働者の受入れ拡大を行う場合、外国人労働者の日本語の能力はどの程度必要だと思うかを聞いた。

その結果、「仕事で使うレベルの日本語が理解できる」が32.4%、「日常会話レベルの日本語が理解できる」が35.2%となり、『日常会話レベル以上』の日本語が理解できることが必要だと考える人は67.6%になった。

他方、「簡単な日常会話レベルの日本語(片言)が理解できる」は16.3%、「受入れ時点で日本語ができなくとも、入国後に訓練すればよい」は4.5%、「日本語は全くできなくてよい」は1.0%だった。

やはり、言語の問題は大きい。いくらその人のスキルが高くても、コミュニケーションできなければ、ビジネスはうまくいかない。受け入れ側もそのことは十分承知していることがわかる。

異文化と接する準備の必要性

たとえば、日本では「刃物」は引いて使う。ところが、西洋では押して使う。また、歴史的に日本の建造物は「木」で作られてきたが、西洋では「石」を主体に作られている。

このように、その地域や国の風土や気候によって、大きく文化は異なる。わが国では「常識」であることが、外国では「非常識」であることはザラにあるのだ。

いずれにしても、今後、グローバル化が進むなか、人手不足解消のみならず、外国人労働者は増加していくと思われる。

言語の問題はもちろんだが、文化の違いによるコミュニケーションの行き違いなどを、どううまくとりまとめていくか。そして、どうお互いを尊重しながら、生きていくか。われわれも準備をしておかなければならなくなってきているのだ。

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