オールドメディアにとって代わるYouTube

テレビや新聞などのオールドメディアの衰退が加速する一方で、新興メディアは着実に利用者を増やし影響力を拡大している。

中でもYouTubeの躍進は眼を見張るものでオールドメディアは戦々恐々としているようだ。

YouTubeはオワコンだという人も一部ではいるようだが、YouTube関連の数字を見れば、そのような主張が妥当でないことは明白となる。

Statistaのまとめでは、2021年7月時点のYouTubuのアクティブユーザー数は世界で22億9100万人。2013年に10億人となり、その後着実に利用者を増やしている。

日本でも2020年12月時点でのユーザー数は6500万人以上を記録した

YouTubeの広告収入も増加傾向にあり、またクリエイターのマネタイズ手段の多様化が進められており、動画の供給体制も強固なものとなりつつある。今後もYouTubeの成長基調は続くものと思われる。

音楽ストリーミング市場でもYouTubeが存在感

YouTubeはSNSの中でも動画メディアとして認知されているが、音楽メディア(音楽ストリーミングサービス)としても台頭する未来が見えてきている。

現在、音楽ストリーミングサービスとして人気が高いのはSpotifyだろう。2021年4〜6月期の四半期レポートによると、無料・有料登録者は計3億6500万人と前年同期比で22%増、前期比では900万人増と好調だった。

このうち有料ユーザーは1億6500万人。有料ユーザーは前期比で700万人増。前期比で見た全体の増加分900万人のうち80%近くが有料ユーザーだったということになる。

Spotifyに次いでユーザーが多いと見られるのがアップル・ミュージックだ。

2019年6月、アップルのシニア・ヴァイス・プレジデントのエディー・キュー氏は、フランスメディアNumeramaの取材で、サブスク利用者が6000万人に達しことを明らかにしている。これ以降、公式のデータは発表されていないが、2021年7月時点で各メディアは、7000万〜8000万人ほどと推計している。

これにアマゾン・ミュージックが5500万人(2020年1月データ)ほどで続く格好となる。無料・有料プラン別の内訳は明らかにされていない。

音楽ストリーミングサービスの有料ユーザー数で見ると、Spotify(1億6500万人)を筆頭に、アップル・ミュージック(7000万〜8000万人)とアマゾン・ミュージック(有料ユーザー割合は不明)が続く格好だ。

この勢力図を塗り替えるかもしれないのがYouTube Musicだ。

9月2日のYouTube公式ブログの発表によると、YouTube Musicとプレミアムプランの利用者が合わせて5000万人を越えたという。

ワシントンポストによると、YouTube Musicとプレミアムプランの利用者は、2019年末に1000万人に達し、2020年末には3000万人に増加している。2021年9月まででさらに、2000万人増えた格好だ。

このYouTube公式ブログの発表では、YouTube Musicとプレミアムプラン利用者の内訳は明らかにされていない。また1カ月のトライアルユーザーが含まれている点など考慮すると、5000万人すべてをYouTube Music利用者と断定することはできない。

しかし、この数年の増加率を見ると、アップル・ミュージックやアマゾン・ミュージックに迫る勢いで拡大していることは明らかだ。

YouTubeの特性と市場競争

YouTube Musicと他のストリーミングサービスでは、音楽に映像が伴う点で大きく異なる。好きなアーティストのミュージックビデオを楽しみたいという層がYouTube Musicを利用していることが考えられる。

実際コロナ禍の2020年、YouTube全体の視聴者が増え、テレビでYouTubeコンテンツを見る人が増加、ジャンル別では「音楽」が前年比で50%も増加したことが報告されている

こうした特性を持つYouTube Musicは、他の音楽ストリーミングサービスと直接的に競合せず、棲み分けた形で発展する可能性もある。

デジタルメディア企業Sweety HighがZ世代を対象に実施した調査によると、新しい音楽を探すときに利用するプラットフォームについて、YouTubeを利用するとの回答割合が75%で最多となったのだ。一方、最大の音楽ストリーミングサービスであるSpotifyは70%だった。

利用者は、音楽を見つける場合と連続で聴く場合で、プラットフォームを使い分けていることが示唆されている。YouTubeの特性である映像が音楽探しに役立っているのだろう。

また、YouTubeはライブ配信機能を使い、多くのユーザーが同時に同じ楽曲を視聴する「シェアリスニング」とも呼べる聴き方が可能。これも他のプラットフォームとの差別化要因となる。

MIDiAがこのほど発表したレポートによると、音楽ストリーミング市場は2022年に333億ドル (約3兆6432億円)、2026年には453億ドル(約4兆9561億円)に拡大する見込み。Spotifyを頂点とする勢力図はどう変化していくのか、今後の展開に注目したい。

文:細谷元(Livit