資生堂は最先端の3D弾性イメージング技術を独自に開発し、外見にシワが現れる前からその根源を観察することに成功したと発表した。

さらに、同技術を用いて若年層からマチュア層まで幅広い人の肌弾性率を解析したところ、加齢にともなって「角層と真皮層の間で生じる弾性バランス」の崩れが生じており、この現象がシワの本質であることを発見。

これまでのシワに対するアプローチは、抗シワ薬剤配合クリームの使用など、肌の表面に刻まれたシワをターゲットに行ってきたが、角層と真皮層、両方のケアによって弾性のアンバランスを解消することで、刻まれたシワだけでなく、外見に現れる前のシワの根源まで改善ができることを見出したとのことだ。

今回の研究成果は、まだ見えない未来のシワから、深く刻まれたシワまで、予防・改善できる画期的なスキンケアに繋がる重要な知見であるという。

今後、資生堂のスキンケアの新たなアプローチとして、さまざまな商品の設計に活用していくとしている。

なお、同研究成果の一部は「第31回国際化粧品技術者会連盟横浜大会2020」(The 31th IFSCC Congress 2020 Yokohama 2020/10/21-30)で発表したとのことだ。

皮膚の力学物性はこれまで、皮膚を押す力に対し、どのように跳ね返るかなど、皮膚を「1つの物体」として測定するのが一般的であったという。

しかし、皮膚は性状の異なる複数の層から形成されているため、その物性を正確に理解するためには、層ごとの特性を評価する技術が必要とされていた。

そこで同社は、超音波技術を活用することで、従来法では不可能であった皮膚の中の微小領域ごとの弾性(押した際の反発力)を解析する技術開発に成功。

この最先端の超高解像度の超音波技術を用いることで、マイクロメートルオーダー(1ミリの1000分の1レベル)の領域の測定が可能になり、角層のような数十マイクロメートルしかない薄い層においても正確に層ごとの特性を解析することが可能になったとしている。

シワは角層と真皮層弾性率のかい離によって生じる

上記の測定技術を用いて20代から60代の日本人女性130名の肌について、層ごとの弾性率の解析を実施。その結果、加齢に伴って角層がかたくなる一方、真皮層はやわらかくなり、角層と真皮層の弾性率がかい離するほど、シワが深くなることを同社は発見。

さらに、外見にシワが現れていない若年世代においては、角層と真皮層の弾性率がかい離している人ほど、表情を作った時など皮膚が変形した際に、シワになりやすい状態にあることを見出したとのことだ。

この結果は、角層と真皮層の間の弾性率のバランスが全てのグレードのシワの状態と密接な関わりがあることを表しているという。

シワは角層と真皮層の弾性率のかい離を解消すると根本的に改善できる

40代女性の被験者にレチノールおよび保湿剤・柔軟化剤を配合したクリーム製剤を4週間連用してもらい、連用前後の肌弾性率を今回開発した手法により解析。

その結果、外見のシワの有無に関わらず、弾性率のかい離が解消していく様子が捉えられたという。この時、外見で顕著なシワが改善しただけではなく、シワが顕在化する前の肌においても、動き(表情)で発生するシワが有意に軽減することが見出された。

この結果から、角層の柔軟化と真皮層強化の両面のケアを組み合わせたアプローチにより、シワが外見に現れる前から、肌内部で生じる「シワのなりやすさ」が改善できることが分かったとのことだ。

今後の展開

同社は、安全性と効果を高次元で両立した薬剤の開発により、シワ改善の有効成分「レチノール」を開発し、市場での好評を博すなど、常にユーザーのニーズに応えてきた。

今回の研究結果は、シワの根源に迫る重要な発見であるとし、今後、これまでの、皮膚に深く刻まれたシワだけでなく、通常外見からは知りえなかった未来のシワもモニタリングすることで、新たなスキンケアへのアプローチに繋がることが期待されるとしている。

同社は今後も最先端の研究知見をもとに、世界中の人々の肌悩みを解決するべく、革新的な研究を進めていくとのことだ。