ソフトバンクおよびKDDIら電気通信事業を営む28社は、趣旨に賛同する37社を代表し、2020年11月11日、電気通信市場の持続的発展に向けた公正な競争環境の整備を目的に、NTT持株によるNTTドコモの完全子会社化に係る意見申出書を総務大臣に提出したと発表した。

同意見申出書は、2020年9月29日にNTT持株がNTTドコモの完全子会社化を目的に公開買付けの開始を公表したことを踏まえ、電気通信事業を営む37社の総意として、電気通信市場の持続的発展に向けた公正な競争環境整備を求めるものであるという。

NTT持株によるドコモの完全子会社化は、そもそもNTT等に関する法律(以下、NTT法)に定めるNTT持株の目的・事業内容にそぐわないものであり、また、電電公社の民営化と共に積み重ねてきたNTTの在り方を巡る政策議論(郵政省における審議、閣議決定、NTT法の改正など)を経て、公正競争環境の確保のために必要とされた「ドコモの完全民営化」や「ドコモに対するNTT持株の出資比率の低下」といった措置の趣旨に明確に反するものであるとしている。

過去に措置されてきた公正競争要件を、何ら議論・整理することなく、規制対象の当事者であるNTT持株が一方的に反故にすることは、政策の策定・運用、規律遵守の体系を覆すこと、ついては電気通信市場の持続的発展を阻害することになるとのことだ。

仮に、適切な措置が講じられないまま、ドコモの完全子会社化が実現した場合、NTT東日本およびNTT西日本とドコモの資本的な関係性がNTT持株の下で強化され、人的・物的・財務的な一体性がさらに強まる。

これにより強大な市場支配力が生まれ、競争事業者が排除されるなど、電気通信市場における公正競争が阻害され、競争を通じて生まれる利用者利益を損なうことに繋がるとのことだ。

加えて、NTT持株より、ドコモの完全子会社化を公表した際の記者会見において「NTTコムやNTTコムウェアをドコモグループに移管することを検討している」旨の発言があった。

NTTコムおよびNTTコムウェアは1999年のNTTの分離・分割(NTT再編成)などに際して求められた分離時の公正競争要件の対象となる特別な会社。

このような公正競争要件の対象となるNTTグループ会社の組織改編については、NTTの在り方に関する政策議論を踏まえて措置されてきたNTT再編成の趣旨は維持しつつも、組織改編によって起こり得る各社のネットワーク・顧客基盤の統合などが及ぼす公正競争への影響を踏まえて、5G、Beyond 5Gに向かうにあたり必要な公正競争要件を改めて議論する必要があるとしている。

意見申出の内容は以下となる。

  1. 情報通信審議会または同等の場において、競争事業者などのステークホルダー、有識者などの第三者を含めた公開の議論を実施すること
  2. 総務省は公正な競争環境確保のための担保措置を定め、遵守・履行を指導・徹底すること
  3. 事後においても、措置の対象事業者から当該担保措置の遵守・履行状況の報告を求め、総務省において内容を確認した上で、確認結果について公表すること

なお、意見申出書を提出した28社とは、以下のとおり。

IDCフロンティア、アットアイ、EditNet、オーシャンブロードバンド、沖縄セルラー電話、沖縄通信ネットワーク、オプテージ、関西ブロードバンド、QTnet、KDDI、Coltテクノロジーサービス、ZIP Telecom、ソフトバンク、ソラコム、中部テレコミュニケーション、TAM、徳之島ビジョン、有限会社ナインレイヤーズ、新潟通信サービス、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟、ビー・ビー・バックボーン、ビッグローブ、北陸通信ネットワーク、北海道総合通信網、UQコミュニケーションズ、LINEモバイル、楽天モバイル、Wireless City Planning(五十音順)

趣旨に賛同した37社は上記の28社に加え、以下の9社。

イッツ・コミュニケーションズ、エネルギア・コミュニケーションズ、愛媛CATV、ケーブルテレビ、コミュニティネットワークセンター、CCJ、ジュピターテレコム、東北インテリジェント通信、ハートネットワーク(五十音順)