
日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「サステナブック」。第35回に登場するのは、作家で環境保護アンバサダーの四角大輔さん。ニュージーランドでサステナブルな暮らしを実践する四角さんが、情報リテラシーの重要性や、自分軸を持った選択のあり方を語る。
- 【プロフィール】
- 四角大輔さん
- 作家/森の生活者。元レコード会社のヒットメーカーで、現在はニュージーランド湖畔の森に住まいを構え、自給自足の暮らしを実践。大量消費・過重労働社会を生き抜く術を綴った著書『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』がベストセラーとなり、数々のNGOや環境省のアンバサダーも務める。
確かな情報にアクセスし、情報リテラシーを高める
——環境保護アンバサダーとして、一番に伝えたいことをお聞かせください。
「まず自分から」と、2010年からニュージーランドでサステナブルな自給自足の生活を開始。その実践と研究から得た知見と、私たちが生きやすい地球環境と社会にするためのライフスタイル・シフト術を、Instagramや書籍を通して発信しています。複雑化する社会課題に向き合うなかで強く感じているのは、エビデンスに基づいた情報源にアクセスすることの大切さです。
かつては、ファクトチェック機能がある4大メディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)がある程度信頼できる情報を提供していました。しかし今は、誰もが自由に発信できる時代。それは素晴らしいことである反面、フェイクニュースが蔓延しています。だからこそ、信頼できる情報にアクセスし、自分自身で考える力が必要です。
私は、伝統ある報道機関、地道な活動を続けるジャーナリスト、そしてジャーナリスティックな視点を持つNGO/NPOの発信を中心にチェックしています。特に、私がアンバサダーを務める国際NGO「グリーンピース・ジャパン」と「フェアトレード・ジャパン」のSNSがおすすめです。平和・環境・人権などの課題に特化した研究者や専門家との連携により、事実や科学的根拠に基づいた情報がわかりやすく整理されています。

——さまざまな社会課題に触れるなか、四角さんが危惧している日本の課題についてお聞かせください。
私はこれまで70カ国以上を旅し、ニュージーランドに16年暮らしていますが、日本ほど情報過多な国も珍しいですね。情報リテラシーの重要性は世界共通の課題でもありますが、特に日本では不確かな情報に振り回されている人が多いのではないかと危惧しています。
その背景には、「世間」や「風潮」といった他人軸に左右されやすい国民性があるかと。自分軸という独自の選択基準で情報の取捨選択をすべきですが、和を重んじ、同調圧力が強い社会がそれを難しくしているのかもしれません。これは「正解ありき」の日本の教育にも原因があります。与えられた正解を探すのではなく、自分で問いを立てる教育が必要です。
私なりのサステナビリティ
——ニュージーランドでの自給自足ライフを送っていらっしゃいますが、移住して得られたものは何ですか?
レコード会社プロデューサー時代、アーティストとの仕事を心から愛していた一方で、CDが爆発的に売れることで大量生産・大量消費に加担しているという感覚が拭えず、常に心の葛藤があったんです。その自己矛盾から抜け出すため、学生時代からの夢でもあったニュージーランドへの移住を決めました。
今は圧倒的な幸福感があります。日本では心の葛藤に加え、過酷な職場や人間関係にエネルギーを消耗していましたが、本来の自分を取り戻せた感覚です。想像もしていなかったこととして、仕事への集中力や創造性も何倍にも上がりました。自分を解き放つことで、本来の能力も解き放たれたのでしょう。また、オーガニックなナチュラルライフを続けるうちに、体調も最高潮を維持できています。

——日本に住んでいる私たちでも実践できる、サステナブルなアクションはありますか?
ご紹介した「グリーンピース・ジャパン」と「フェアトレード・ジャパン」の投稿をシェアするだけでも充分なアクションになります。根拠ある情報の拡散は大きな力になります。誤った情報に対抗できるのは、確かな情報の拡散だと信じています。
また私は、“Lifestyle is Activism”をキーワードに掲げています。これは「生活を通して活動する」という考え方です。みんなで、日々の小さな消費行動をサステナブルでエシカルなものへ転換していくだけで、大きな変化を生みます。例えば、おにぎり1つにしても添加物が少ないもの買う——。添加物の製造には環境負荷がかかり、複合的な摂取は健康を害する恐れもあるからです。「買い物は投票」という言葉がありますが、1日に3度ある食事が地球環境や社会のため、そしてあなた自身のための大きなアクションになるのです。
——今後、私たちはサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか?
環境問題や社会課題に本気で向き合っていると、「ストイックですね」と言われることもあります。でも今の暮らしや活動は、自分のなかにあった“心理的な重荷”を手放して、楽に心地よく生きようとした結果です。
私のような自給自足の暮らしは極端な例ですし、住む場所や環境にも左右されることですから、決してすべての人に真似してほしいとは思っていません。
大切なのは、しっかりと自分軸を持ち、自分が心地よいと感じる選択を積み重ねていくこと。なるべく自然や他者を傷つけないベターな選択って、気持ちいいですよね。何事も自分にとって心地よいことでなければ続かないですから。

