小学館は、教員向けWebメディア「みんなの教育技術」において、全国の教育関係者を対象に勤務実態に関するアンケートを実施し、その結果を公表した。

教員の勤務実態に関するアンケート調査

■ 平均勤務時間は11.17時間、4人に1人が12時間以上働いている

有効回答数は5,412人で、そのうち5,181人が現役教員と回答している。勤務時間については、出勤から退勤までの平均時間が11.17時間、中央値は11時間という結果であった。さらに、全体の4人に1人が12時間を超える勤務をしており、法定の勤務時間を大きく上回る長時間労働が常態化している実態が明らかになった。

出勤から退勤までの平均時間

自由記述では、「寝る、入浴以外の時間をすべて仕事に使っているのに、授業準備が間に合わない。土日に休むという感覚もない」(20代・男性)「仕事量が多すぎて育児もままならず、意欲が湧かない」(30代・女性)といった、長時間勤務が家庭や心身に深刻な影響を与えている様子が語られている。

■ 休憩時間「ほとんど取れない」65.6%、45分以上確保できる教員は1.5%のみ

1日の休憩時間に関しては、「ほとんどとれない」と回答した人が65.6%に上り、「15分未満」も含めると約85%が十分な休憩を取れていないことが判明した。労働基準法が定める45分以上の休憩時間を確保できているのは、わずか1.5%にとどまった。

1日の休憩時間

休憩をとれない理由には、「終業時刻直前に休憩時間が設定されているが、仕事量が多すぎて休むと帰宅が遅くなる。実質15分しかない」(40代・男性)といった声が上がった。

■ 約半数が週3日以上の「持ち帰り残業」、9割が休日も勤務

また、週3日以上の「持ち帰り残業」を行っている教員は半数を超えており、休日勤務も広く見られた。実際、「持ち帰り残業」「休日勤務」の両方が「ほとんどない」と答えた人は401人のみで、回答者の約9割がいずれか、もしくは両方を実施していることになる。

「持ち帰り残業」を行っている日は週に平均何日あるか

自由記述では、「働き方改革といいつつ、現場では仕事の削減より早く帰ることばかりが求められる。結果、家庭で大量の仕事をする羽目になる」(50代・女性)といった、制度と実態の乖離を嘆く声も寄せられている。

休日に仕事をする日は平均でおよそ何日あるか

■ 時間外勤務の主因は「業務量が8時間以内に収まらないこと」89.4%が複数選択

時間外勤務が常態化している要因として、最も多く挙げられたのが「1日の業務量がそもそも8時間以内にできる設定ではないため」であり、89.4%が複数の理由を選択していることから、構造的な課題であることが示唆されている。

時間外勤務が発生する主な要因

■ 精神的に「つらい」のは教育の本筋に集中できないとき

勤務時間の長さ以外で「つらい」と感じる状況としては、「保護者からの理不尽なクレーム」や「目的のはっきりしない会議」、「授業準備の時間が取れない」など、教育本来の業務に集中できないことへの不満が多く寄せられた。

一方で、「やめられない理由」としては「子どもの成長」や「授業の手ごたえ・楽しさ」が挙がっており、回答者の約7割が教員としてのやりがいや喜びを実感していると回答した。

■ 外部人材への満足度は38%にとどまる 求められるのは「授業への集中支援」

外部人材による学校支援制度に関しては、導入されている回答者の中で「とても満足」「ある程度満足」と答えた割合が合わせて約38%にとどまっている。不満の主な理由は「人手が足りないこと」と「質のばらつき」であった。

外部人材による学校支援制度に対する満足度

また、「自分の裁量でサポーターを配置できるとしたら」との問いに対しては、「授業補助」や「児童への個別対応」など、授業に集中するための支援を求める声が約半数を占めた。そのほか、「丸つけ」「会計」などの間接業務や「保護者対応専門スタッフ」の配置を希望する回答も多かった。

教員給与特措法では、2029年度までに教員の時間外勤務を月平均約30時間に抑える目標が掲げられているが、今回の調査結果からは、実態の把握と制度的な見直しの必要性が浮き彫りとなった。

今後の学校教育の在り方を考える上で、教職員の勤務環境改善と、支援体制の柔軟な運用がより一層求められると考えられるとしている。

<参考>
Webメディア「みんなの教育技術」『教員の勤務実態に関するアンケート調査