「月曜がつらい」は、みんなの悩み

週明けの月曜日に倦怠感を覚える人は少なくない。週末の余韻を引きずりながら始まる月曜の朝、メールボックスは満杯で、タスクリストには未処理の業務が山積みという状況は、誰しも一度は経験があるだろう。

“ベア・ミニマム・マンデー”――TikTok発のライフハック

こうした月曜特有の負担感に一石を投じるコンセプトが「bare minimum Monday(ベア・ミニマム・マンデー)」だ。発案者は、米国在住のクリエイター、マリサ・ジョー・メイズ氏。自身のTikTokの投稿を通じて、「月曜日はあえて最低限の業務だけにとどめる」というライフスタイルを提案したことで注目を集めた。

マリサ・ジョー・メイズ氏のTikTok投稿
https://www.tiktok.com/@itsmarisajo/video/7197198175072046379?lang=ja-JP

メイズ氏は投稿内でこう語っている――「日曜の午後、私は翌日始まる週に押しつぶされそうな感覚になる。だから月曜は“最低限のことしかやらない日”にした。すると、月曜が怖くなくなった」。この投稿はTikTokで数多く再生され、Z世代を中心に多くの共感を集めることとなった。

このムーブメントは単なるタイムマネジメントの工夫にとどまらず、近年深刻化するBurnout(燃え尽き症候群)への対策としても注目されている。

なぜZ世代に共感されているのか?

メイズ氏は、もともと大手企業で営業職として勤務していたが、燃え尽き症候群をきっかけに独立。フリーランスとしての活動を始めたものの、週の始まりには再びパニック感を覚えたという。そこで彼女は月曜日にやるべきタスクを最小限に絞り、自分の精神的なリズムを最優先する働き方へと切り替えた。

「アイデア出しを1件、メール対応は1時間以内」といった運用にとどめ、SNSやチャットアプリなどの外部刺激も制限する。それにより、全体の業務効率がむしろ向上したと本人は語っている。彼女の取り組みは『Insider』や『Forbes』といった米メディアでも取り上げられ、ライフスタイルの再設計として一定の評価を受けている。

生産性が上がる?逆説的なメリット

月曜の業務を削減することが、生産性向上につながるのか。研究者の間でも関心が高まっている。

2023年に米・テキサス大学が発表した研究では、「形式的な儀式化された業務」よりも「自己決定型のプランニング」によってメンタルヘルスが改善される傾向があると示された。また、マインドフルネスの概念と組み合わせることで、業務効率だけでなく、チーム全体の心理的安全性にも好影響を及ぼす可能性が指摘されている。

企業やチームではどう取り入れる?

ベア・ミニマム・マンデー的な発想は、個人だけでなく一部の企業にも波及している。

リモートワーク文化が定着しつつある中で、BufferやDoistといった海外企業では、非同期での作業を基本とし、週明けに会議を極力排除する体制が整っている。Bufferは動画やツールを通じた非同期コミュニケーションが主流となっており、Doistでは社内のほぼ全ての情報共有を文字・スレッドベースで行い、会議を最小限にしている。

SNSユーザーの実例から見える共感の広がり

X(旧Twitter)やInstagramでは、ベア・ミニマム・マンデーをキーワードにした投稿が増加傾向にある。実際に「月曜は“やることリスト”を3項目に限定」といったユーザーの投稿には、「わかる」「その方がむしろ仕事が早く終わる」といった反応が多数寄せられている。

また、Instagramでは「#bareminimummonday」とともに、シンプルな朝食、静かなワークスペース、自分に優しいルーティンなどの投稿が並び、ビジュアルによる共感の輪も広がりを見せている。

最低限のことだけをする――この一見消極的にも映る選択肢に、現代の働き方の本質が潜んでいる。行動量ではなく、リズムと目的の明確さに重きを置くアプローチは、個人にも組織にも持続可能性をもたらす可能性がある。

ベア・ミニマム・マンデーは、決して「怠け」を肯定する運動ではない。むしろ、“やらなきゃ”という呪縛から自分を解放し、自らの意思で働き方を設計するという主体的な選択なのである。

文:岡徳之(Livit