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全世界200以上の地域で累計110億人(リピートユーザー数を含む)以上の利用者がいる、ノルウェー発のデジタル学習プラットフォーム「Kahoot!(カフート)」。4択やフラッシュカード形式での学習ができ、ユーザーがオリジナルのクイズを作成することも可能だ。学校の授業や企業のトレーニングで多く使われており、特に北米や欧州で高い支持を得ているという。
2025年2月には東京にオフィスを設立、日本でのユーザー拡大にも注力する。同社の日本担当/Vice Presidentのブレント・モリ氏に「カフートの強みと日本市場における戦略」を聞いた。
「クイズ」を活用した、インタラクティブな学習プラットフォーム

カフートは、ノルウェーの起業家であるMorten Versvik氏、Johan Brand氏、Jamie Brooker氏らによって開発され、2013年9月に正式リリースされた。「学習を素晴らしいものにする」をビジョンに掲げ、幼児から大人まで幅広いターゲットに向けて、デジタルプラットフォームを展開する。

既存コンテンツは全世界で約1億件で、そのトピックはバラエティに富んでいる。一般知識から国語、数学等の各教科のほか、「神経科学」「ロボット工学」「古代エジプト」「オーロラ」など、さまざまなテーマの学習コンテンツが並ぶ。

他社とのパートナーシップにも積極的で、ディズニーやMARVEL、BBC、TEDなどグローバルで知名度の高いパートナーが制作したコンテンツも。これらはユーザーの学習へのモチベーションを高めたり、楽しみを提供したりする要素となり、ユーザーの拡大にも寄与しているという。


「創業者たちは、『授業をよりおもしろくするには、どうしたらいいか』と考え、教師と生徒がインタラクティブに交流できるクイズ形式のカフートを開発しました。その後、米国テキサス州で開催されている世界最大級の複合カンファレンス『サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)』でデモを披露したところ、北米の教師の間で話題になりました」とモリ氏は語る。
教師たちに最も評価されたポイントは、リアルタイムのクイズ形式により生徒の集中力が高まり、クラス全体に一体感が生まれる点だ。生徒が出題されたクイズに回答すると、回答結果が即座に集計され、クラス全員で共有できる。

まずは教育機関で広まったカフートだが、徐々に企業のトレーニングでも広く使われるようになった。モリ氏によれば、「フォーチュン500企業の97%に利用されている」そうだ。フォーチュン500とは、米国のフォーチュン誌が毎年発表する全米のトップ500社のリストに選ばれた企業で、AmazonやAppleなどが含まれる。

無料でも多くのコンテンツが利用できるが、有料プランを購入すると、より幅広いコンテンツが利用でき機能も拡張される。有料プランは「個人向け」「企業・学校向け」「自治体向け」の3つに分かれており、個人は月額600円〜、企業・学校向けは月額2,208円〜、自治体向けは要見積もりとなる。
PDF資料やキーワードから数分でクイズを作成
既存コンテンツのみでも十分に学べるが、教師の多くは、カフートのコンテンツ作成機能を使ってオリジナルの問題を作っているという。それを授業中のコンテンツや宿題として活用しているわけだ。

また、カフートが認定したクリエイターも多数在籍しており、彼ら・彼女らは自由なトピックで学習コンテンツを作成して、カフート上でコンテンツを提供している。クリエイターによるコンテンツは基本的に有料で、収入の一部がクリエイターに分配されるビジネスモデルだ。

近年のアップデートでは生成AIの搭載により、問題作成がさらに容易になった。例えば、「PDFからkahoot」ではPDF資料をアップデートするだけで、「kahootジェネレーター」では特定のキーワードやURLなどを入力するだけで、数分でオリジナルのクイズが生成される。


実際にクイズを作成してみたところ、ものの数分で20問が作成できた。ただし、やや複雑性のあるテーマの場合は、問題の内容や回答の選択肢などの細かい調整が必要になりそうだ。また、全ての生成AIに通じるが、回答が正しいとは限らないためファクトチェックが求められる。とはいえ、一から作成するよりは格段に効率が良い。こうした利便性もまた、教師やクリエイターに支持されているのだろう。
サンリオともコラボ、日本市場でのユーザー拡大を加速
近年、カフートは日本以外のアジア地域へも本格進出を図っている。2024年にはシンガポールにもオフィスを設立したほか、2024年12月にはタイ語の対応も開始した。
日本市場での展開をさかのぼると、2021年に日本向けのウェブプラットフォームとモバイルアプリのローカライズを発表している。そこから、教師を中心にじわじわとユーザーが広がり、年間で約2億回プレイされるまでに拡大。2025年2月には東京にオフィスを設立して、さらなるユーザー拡大に注力していくという。

東京オフィス設立と同じタイミングで、サンリオとのコラボコンテンツも発表。ハローキティをはじめ、サンリオのキャラクターは世界的にも知名度が高く、「今回のコラボを非常にうれしく思っている」とモリ氏は話した。すでに、同コラボコンテンツは国内外から好評を得ているそうだ。
日本市場における戦略として、日本語のコンテンツ拡大などのローカライズを進めるとともに、すでに利用している教師のユーザーへのサポートを通じて、有料ユーザーを獲得していく方針だという。

「無料でも利用できますが、生成AIによるクイズ作成機能など有料版のほうがはるかに効率的です。そのメリットを日本でも広く伝えていきたいですね。米国では教育行政をつかさどる教育委員会と契約するケースが多いのですが、日本では個別の学校ごとの契約になるだろうと想定しています」
さらに、企業への導入促進にも意欲を示す。米国本社では使われているが日本支社では使われていないケースが多いため、そうした企業を中心にアプローチを強化したいとモリ氏は話した。
日本においては、同じくクイズを活用した学習ツールの「Quizlet」や学校向けに特化した教育支援プラットフォーム「Classi」なども利用者を拡大している。カフートが国内で事業を拡大するには、日本語でのきめ細やかな活用支援やコンテンツの拡充が求められそうだ。
取材・文:小林香織、編集協力:岡徳之(Livit)