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- 本コラムは、企業・団体などから寄稿された記事となります。掲載している取り組みやサービスの内容・品質、企業・団体などをAMPが推奨・保証するものではありません。
各企業・一人ひとりのパートナーシップ構築の加速をサポートするため、サステナブル推進企業の取り組み事例をコラム形式で提供。
今回はイタンジ株式会社の取り組みを紹介する。
イタンジの取り組み
アプローチ視点 | 「テクノロジーで不動産取引をなめらかにする」をミッションに掲げ、テクノロジーの力でDXを推進することで、不動産業界の構造から生まれる社会課題の解決に取り組んでいます。 |
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実施内容 |
不動産会社様向けに、物件検索から内見、入居申込、契約、更新、退去、原状回復工事までの一連の手続きや顧客管理を、オープン化・省力化・高度化するサービスを提供しています。 賃貸市場では、「不動産仲介会社が最新の空室情報をリアルタイムに把握できない」という業界構造が原因で、「おとり広告(=成約済み物件の広告)」が発生し、入居希望者の不利益につながる社会課題となっています。 イタンジは、提供サービスを通じて入居申込情報と募集情報を即座に同期し、賃貸可能な物件をリアルタイムで検索できる環境を構築。「おとり広告」の削減を実現し、入居希望者の情報格差の解消に貢献しています。 さらに、手続きのデジタル化により、年間1,135万枚の紙を削減し、環境保全にも寄与しています。 |
取り組み実施に至った背景
イタンジは、不動産業界やその周辺領域をテクノロジーでサポートするサービスを提供しています。部屋探しを経験したことのある方の中には、やり取りに煩わしさを感じた方も多いのではないでしょうか。不動産会社の店舗へ何度も足を運んだり、大量の書類を記入したり、「空室」と表示されていた部屋がすでに埋まっていたり……。
こうした煩わしさを生んでいる原因の一つが、紙やFAXなどの商慣習が根強く残る不動産業界における「DXの遅れ」です。
DXの遅れは、不動産会社への不信感や顧客満足度の低下を招くだけでなく、業界全体の長時間労働の常態化や、それに付随する「働き手不足」といった課題にもつながっています。特に、「不動産業界=激務」「残業が多い」というイメージが若い人材の流入を妨げ、人手不足が深刻化しています。しかし、不動産業界は「衣食住」の一つである「住」に関わる重要な産業です。この状態を改善し、持続可能な体制を構築することは、私たちの生活を維持していく上で喫緊の課題となっています。
賃貸物件の入居申込では、仲介会社が入居者情報を記載した入居申込書をFAXで賃貸不動産管理会社(以下、管理会社)に送付し、管理会社はその情報を家賃債務保証会社や保険会社などへ送付していました。この手続きでは、情報の転記に手間がかかるだけでなく、記入漏れやFAXの判読性の低さによる手戻りが頻発し、業務の進行が滞る要因になっています。さらに、取引先が電話に出ず進捗状況を確認できないことも多く、手続きに多くの時間と労力がかかっていました。
これらの課題を解決する手段として、不動産取引のデジタル化(DX)が注目されています。
2022年の宅地建物取引業法の改正により、賃貸借契約の完全電子化が実現されました。これにより、入居申込から契約までの手続きをオンラインで完結できるようになりました。さらに、コロナ禍による対面業務の減少も相まって、不動産取引におけるDXのニーズは急速に高まっています。「不動産業界のDX推進状況調査 2024」によると、調査対象の不動産関連事業者の99%が「DXを推進すべき」と回答しています(※1)。
(※1)関連プレスリリース:https://www.itandi.co.jp/news_posts/1276
実施している取り組み
イタンジは、賃貸管理、賃貸仲介、売買仲介などを行う不動産会社向けに、不動産取引をなめらかにするSaaSを開発し、運営しています。
管理会社向けには、物件検索から内見、入居申込、契約、更新、退去、原状回復工事手続きまでの一連の手続きをWebで完結し、生産性を向上させるサービスを提供しています。
その一つである入居申込サービスは、入居希望者がWeb上で入力した情報を管理会社、仲介会社、保証会社、保険会社などと連携し、申込書の提出から審査までをワンストップで行えます。
紙の申込書では記入漏れや不備が発生しやすく、その度に申込を再度行う必要がありますが、イタンジの入居申込サービスでは、申込内容に不備がある場合は手続きが進められないため、やり直しのためのコミュニケーションコストを削減できます。また、入力データをそのままWeb上で保証会社の審査へ移行できるため、情報の転記ミスを防ぎ、業務の効率化を実現します。
電子契約サービスでは、入退去や更新に関する契約締結をオンラインで完結できるため、不動産会社への来店や書類の郵送が不要になります。
入居申込サービスと連携することで、申込時に入力した氏名や住所、連絡先などの入居者情報をそのまま契約情報として使用でき、最短約1分で賃貸借契約書を作成することが可能です。
当社の入居申込サービスや電子契約サービスを含む4つのサービスは、2年連続で賃貸不動産仲介会社(以下、仲介会社)の利⽤率No. 1(※2)を獲得。多くの仲介会社にご利用いただき、不動産事業者の生産性向上や残業時間の削減に貢献しています。
また、入居申込書や賃貸借契約書に限らず、入居中の手続き、退去・更新の申請、家賃債務の保証契約なども、これまで紙とFAXが主流でした。これらをペーパーレス化し、年間1,135万枚の紙の削減(※3)も達成。環境保全にも貢献しています。
イタンジのサービスは、不動産業界の働き方にも変化をもたらしています。
煩雑だった業務を効率化することで、長時間労働を解消し、誰もが働きやすい労働環境を実現しています。また、業務の自動化により業務スピードが大幅に向上し、限られた人員でも多くの業務をこなせるようになります。
さらに、DXの推進によりリモートワークの導入が進み、柔軟な働き方が可能になります。従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになり、労働負荷の軽減と従業員満足度の向上を両立。こうした取り組みにより、不動産業界を、より「やりがい」を実感できる持続可能な体制へと変革しています。
イタンジのサービスを導入した企業からは、「審査完了するまでの所要時間が一件あたり10分〜1時間程度短縮した」、「入居審査にかかる人員を前年比25%削減できた」、「RPAと組み合わせることで、スタッフ数を半減させながら残業時間を30%削減できた」などといった声をいただいています。また、業務のオンライン化により、リモートワークを実現し、従業員満足度を向上させ、離職率の低下につながった企業もありました。
当社は、不動産会社向けに「ITANDI BB」という不動産業者間プラットフォームを提供しており、現在、全国の賃貸⼊居申込の約40%で利用(※4)されています。首都圏1都3県の仲介会社においては、物件情報収集時に利用するツールとして、国土交通大臣が指定した不動産流通機構が運営する「レインズ」に次いで活用されています(※2)
「ITANDI BB」は入居申込システムと連携しており、賃貸物件への入居申込と入居者募集の情報を即座に同期できるため、仲介会社は入居申込の有無や番手をリアルタイムで確認することが可能になります。
これにより、「募集中のはずの部屋がすでに埋まっていた」といった「おとり広告」の課題を解決し、入居希望者の情報格差を解消することで、業界のオープン化に貢献しています。
(※2)出典:リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社「引越しシーズンから探る賃貸住宅不動産市場の最新ニーズと傾向2024 」https://lmc-c.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/08/lmc_releace_20240821.pdf
(※3)当社基準。当社提供の4サービス(申込受付くん、電⼦契約くん、更新退去くん、内装⼯事くん)導⼊企業の推定削減枚数を元に算出
(※4)全国賃貸住宅新聞発⾏「賃貸仲介・⼊居者動向 データブック 2024」の2023年賃貸仲介件数(推計)178万件より、ITANDIの申込から契約までのキャンセル率33%を基に⼊居申込数を265万件と算出し、ITANDIの年間電⼦⼊居申込数107万件から割合を推計
今後の目標や展望
不動産取引のデジタル化は目的ではなく、あくまで手段です。私たちは、それによって部屋探しにかかる時間を削減し、人々が「大切なこと」に集中できる未来を目指しています。
現在の不動産取引は手続きが煩雑で、意思決定を先送りにしたり、希望とは異なる物件を妥協して選んだりすることも少なくありません。
不動産屋に足を運び、書類を作成し、契約のために再び来店し、ハンコを押すといった煩雑な手続きがなくなれば、より有意義な時間を確保できるようになります。イタンジは、こうした非効率を解消し、本当に必要なことに集中できる環境を提供します。
また、不動産業界における情報格差や長時間労働、働き手不足といった課題をテクノロジーの力で解決し、業界全体の持続可能な体制構築も目指しています。
さらに、不動産業界の周辺領域には、引越し業界や電気ガスなどのライフライン手続きなど、テクノロジー化が遅れている分野が多く存在します。また、世界には、日本以上に不動産取引が整備されていない国もあります。私たちは、国内の不動産事業のインフラとなり、蓄積したデータやノウハウの活用、さまざまな企業との協業、M&Aを通じて、新たなビジネス領域にもチャレンジしていきます。
イタンジでは今後も、テクノロジーの力で不動産取引のあり方を根本から変え、「人々が大切なことに向き合えるようにする」社会を実現するために尽力してまいります。
- 永嶋 章弘
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イタンジ株式会社
代表取締役 社⻑執⾏役員 CEO - 筑波⼤学⼤学院 システム情報⼯学研究科にて情報⼯学修⼠号を取得後、エンジニアとしてニフティ株式会社に⼊社。2014年、創業期のイタンジに⼊社し、複数の新規事業を⽴ち上げる。2016年に株式会社メルカリに転職し、プロダクトマネージャーとして従事。2018年、再びイタンジに⼊社し、執⾏役員に就任。デザイン部⾨やマーケティング部⾨を管掌し、事業の成長を牽引する。2023年11月、代表取締役 社長執行役員 CEOに就任。
- ▼お問い合わせ先
- ●イタンジ株式会社
- ●URL:https://www.itandi.co.jp/
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