日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「サステナブック」。第28回に登場するのは、SDGsとAIをかけ合わせた事業を展開する難波遥さん。フィリピン留学をきっかけに社会課題の解決に取り組む難波さんが、地球環境に配慮したヨーロッパ発のファッションブランドを紹介。
- 【プロフィール】
- 難波遥さん
- 大学在学中にSDGsに取り組む学生団体「HANDSUP」を立ち上げ、のちに法人化。現在は株式会社Hands UP代表取締役、一般社団法人with AI研究所代表理事を務める。2020年ミス・ユニバーシティ日本大会にてグランプリを受賞。BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」ではサステナBIZリポーターを担当中。
再生素材&天然素材で作られるサステナファッション
——今回ご紹介いただくサステナブルな商品についてお聞かせください。
ECOALF(エコアルフ)を紹介します。お洒落でスタイリッシュなアイテムが並んでいるお店だなと思って入ってみたら、サステナブルな取り組みを行っているブランドであることを知りました。
ECOALFのすべてのアイテムは、ペットボトルや廃棄された魚網、使用済みのタイヤなどのリサイクル素材や、環境負荷の低い天然素材を使って作られています。また、関係するサプライヤーもブルーサイン(※1)やエコテックススタンダード100(※2)といった認証を取得しており、製品だけでなく製造プロセスにおいてもサステナビリティに配慮されたブランドです。
私はECOALFのスニーカーを愛用しており、兄にはダウンジャケットをプレゼントしました。これらの製品は、地球環境に優しい素材で作られているだけでなく、品質やデザインにもこだわりが感じられます。
——日頃からサステナビリティに配慮したブランドに注目していますか?
ECOALFを知ったきっかけは「お洒落さ」でしたが、その後ウェブサイトなどを通じてブランドの理念に触れ、創業者の「未来に残すべき地球」への思いを知り、ますますファンになりました。誰かの思いがカタチになり、私たちのもとへと届いているのはとても素敵なことだと思います。
私自身もサステナビリティに関する活動に取り組んでいるため、こうしたブランドは特に応援したくなります。サステナブルなブランドの価値は、長く続いていくことにありますが、そのためには開発の難しさや原材料のコストといった課題があります。その中でブランドを支える支援者やファンの存在がとても重要だと感じています。私もその一員になれるよう、普段からエシカルな商品やフェアトレード商品などを積極的に選ぶよう心がけています。
私なりのサステナビリティ
——SDGsに取り組む事業を立ち上げた理由をお聞かせください。
きっかけは、大学1年生の時にフィリピンに語学留学した際、スラム街で物乞いをする人たちに出会ったことでした。そこで「貧困問題を知っているのに、何も行動せずにいるのはどうなのだろう?」という気持ちが芽生えたんです。そして、この問題を解決するためには、貧困だけでなく環境や人権など、たくさんの課題に向き合う必要があることを学びました。
そこで、学生がプロジェクトを通じてさまざまな課題を解決することを目指す団体「HANDSUP(ハンズアップ)」を立ち上げました。試行錯誤の末に法人化し、現在は地球課題に対応できる能力を持ち、倫理観を大切にするAI人財の育成に注力しています。
——AI人財の育成に着目したのは、持続可能な社会を見据えた結果なのでしょうか?
現代の若者には、デジタルネイティブとしての強みがあります。そして、少子高齢化による労働力不足が進む中で、AIを活用できる人材の需要はますます高まっています。持続可能な社会を構築するためにも、今後はAIを効果的に活用できる能力が、事業スピードや成果に大きな影響を与えるのではないでしょうか。
また、AIを活用することで人には”時間”ができると思います。大切な人と過ごす時間、やりたいことをやる時間、社会のことを考える時間、人のありたい姿への後押しをしてくれるそんな存在になるのではないかと考えます。
「Hands UP」という社名には、「助けを求めている人も、誰かのことを助けられる人も手を挙げよう」という自助の精神が込められています。私たちの事業やプロジェクトを持続可能にするためには、自分たちで問題を解決できる“自立したビジネスモデル”を構築しなければなりません。そのためにも、AIの活用は必要不可欠だと考えています。
——サステナビリティについて、何から始めればよいのかわからないという方にアドバイスをお願いします。また、私たちはサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか?
無理に何かを始める必要はありません。まずは時間をコントロールし、心に余白をつくることを意識してみるのがよいと思います。忙しさに追われる日々では、未来のことまで考える余裕はありません。しかし、心に余白があると、周りのことも見えて、自分のやるべきことが自然と見えてくると思います。
そして、自分に満足することも大切です。自分に満足できないと、心の余白を不要なもので埋めてしまいがちです。いま自分が生きていることに感謝する心を持つことが大切です。
SDGsには17の目標があり、それらはすべて最終的に私たち自身に還元されるものですが、どこか「利他的な取り組みだ」と感じている人もいるのではないでしょうか? そこで弊社では、18番目のオリジナル目標として「守ろう、自分の命」を設定しました。自分自身を守ることができなければ、他者を助けることや、社会に貢献することもできません。まずは、自分を大切にすることが、サステナビリティの第一歩だと考えています。
(※1)ブルーサイン:繊維・アパレル業界において、環境・労働・消費者の観点における持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証。
(※2)エコテックススタンダード100:350種類以上の有害化学物質を対象とする厳しい分析試験にクリアした製品に与えられる世界最高水準の安全な繊維製品。