日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「サステナブック」。第23回に登場するのは、モデルでサステナブルライフクリエイターの前本美結さん。高校時代をインドネシアのジャカルタで過ごした経験をきっかけに、さまざまな社会問題に関心を寄せる前本さんが、ファッションブランドのエシカル度を確認できるウェブサイトを紹介。

【プロフィール】
前本美結さん
モデル・サステナブルライフクリエイター。エシカル・サステナブル・ヴィーガンを軸としたライフスタイルと、社会問題にまつわるモノ・コトを発信しながら、モデル・講演・PR・イベントプロデュースなどを行っている。

ファッションブランドのエシカル度がわかるウェブサイト

出典:Shift C(https://shiftc.jp/

——今回ご紹介いただく商品・サービスについてお聞かせください。

Shift C(シフトシー)を紹介します。 Shift Cは、ファッションブランドのエシカル度を「人間」「地球」「動物」の観点から評価し、わかりやすい5段階評価で掲載しているサイトです。もともとは英語版の「Good On You」というサイトを参考にしていましたが、昨年に日本語版が登場したので、みなさんにおすすめしたいです。

視覚的にもわかりやすく、なぜその評価がされているのかについても詳しく説明されています。また、外部の機関が評価しているため、信頼度の高いサイトです。すべてのブランドが掲載されているわけではありませんが、誰もが知る有名ブランドから規模の小さなブランドまで幅広く掲載されています。

——前本さんご自身はどのような使い方をしていますか?

新品のお洋服はなるべく買わないようにしていますが、靴下や下着、靴などの中古では抵抗があるものを買う際にはShift Cを参考にしています。

最高評価のブランドは少ないものの、「人間」「地球」「動物」の3つのファクターうち、自分が一番大切にしたい部分がどのくらい評価されているかを判断基準にしています。気になるブランドのエシカル度が客観的にわかるのは、とてもありがたいと思います。

4評価以上のブランドの服を着た前本さん

私なりのサステナビリティ

——社会問題に関心を寄せ、サステナブルな生活を心がけるようになったきっかけを教えてください。

高校生の時、父の仕事の都合でインドネシアのインターナショナルスクールに転校したことがきっかけです。インドネシアはイスラム教徒が多く、宗教が文化に深く根ざしているため、自分の常識が必ずしも他の場所での常識でないことを改めて知る大きなきっかけになりました。

また、学校の方針でさまざまなチャリティやボランティアに参加するなかで、格差社会を目の当たりにしたんです。SDGsという言葉が出始めた頃は学生だったのですが、ホームルームの時間に環境問題や人権問題の動画を観て「自分たちの身近にあるものや食べているものの背景は、私が思っていたほど綺麗な世界ではないのかもしれない」と感じました。

そして同時期にヴィーガンを知りました。友人や先生がヴィーガンになり、理由を聞くと、環境と畜産の関係やアトピーの方も取り入れていると聞きました。それが気付きになり、「私も世界にやさしく生きたいな」と思ったんです。

そこからまずは食生活を菜食に変えることからはじめ、少しずつ生活をアップデートしています。

ヴィーガン唐揚げ丼

——ヴィーガンの生活を送るうえで大変なことはありますか?

両親には最初、栄養面を心配されて反対されました。母から「何を作ったらいいのかわからないから魚は食べてほしい」とお願いされたこともあります。

つい最近、祖母には「みーちゃん、いつになったら一緒にご飯食べられるの?」と言われてしまいました。その言葉が胸に刺さり、人生において祖母や、大切な人たちとの時間も大切にしたいと年を重ねるにつれてより思うようになりました。なので、最近は人付き合いの際はヴィーガンを多少は緩めようかなと感じはじめています。

一個だけでもいいので、ヴィーガンメニューを置いてくれるレストランが増えたら嬉しいですね。オーストラリアに行った時、うっかりステーキハウスに入ってしまったのですが、ヴィーガンバーガーがありました。ヴィーガンの人が取り残されることなく、みんなと一緒に食事できる環境はとてもいいなと思います。

——Shift Cを紹介いただきましたが、モノ選びにおいて感じている課題はありますか?

私はポリシーとして「エシカル」「サステナブル」「ヴィーガン」の3軸で見るようにしています。人権には配慮されているけれどヴィーガンではないとか、この3つが満たされているモノって本当に少ないんです。

コスト面での課題など、すべてを満たすことは難しいということは理解しています。ただ、消費者が選び続けていかないと淘汰されてしまうので、なるべく良いものを応援していきたいです。いずれは、何を選んでも3つの軸のどこかしらには配慮されているモノである世界が理想ですね。

環境に配慮されたモノが置かれている前本さんの自宅

——今後、私たちはサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか?

日本に、自分が世界を変えられる感覚を持っている人は決して多くはないと思います。それは権威主義的な社会に起因していて、子どもの頃からパワーバランスを感じながら育ってきているからかもしれません。

マルかバツかだけの勉強ではなく、何かプロジェクトを立ち上げて挑戦してみるとか、教育を受けるなかで成功体験があると違うのかなと思います。

そして、自分自身を受け入れる“セルフラブ”も必要です。誰かと比較するのではなく、できる人ができることをやる。サステナビリティを実現していくには、こうしたマインドセットも大切な気がしています。