新世代のA(Action)面とB(Business)面に密着するインタビュー企画。第1回に登場するのは、えみ姉さん。B面では個人事務所moonlitを立ち上げ、会社としても新たな道を切り拓くえみ姉さんのクリエイターとしての価値観に迫ります。

【えみ姉】
大分県出身。SNSを中心にインフルエンサーとして活動し、主に10〜20代の女性から圧倒的な支持を誇る。 他人に話にくい性や身体に関する相談や、人生のお悩みなど、視聴者から募集した質問に回答していく視聴者参加型の企画が大人気で、「みんなのお姉ちゃん」として定評と信頼がある。

YouTube: https://www.youtube.com/@emk_oooo/
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えみ姉のA面はこちら
「キラキラ」じゃなくて「ありのまま」がいい|えみ姉のA面

ありのままの姿や言葉を発信。えみ姉のSNS運用戦略

―えみ姉さんはYouTubeやInstagram、Xなど複数のSNSのアカウントで発信されていますが、運用する上で特に大事にされていることはありますか?

ありのままを発信することです。私がYouTubeでの発信を始めた4年前の当時、キラキラしたブランディングをしているインフルエンサーのエンゲージメントが下がっているように感じていて、「綺麗なものはもう求められていないな」と思っていたんです。それに、着飾っていてもいつかボロが出るだろうし、綺麗な側面とは違う部分に魅力を感じてもらいたいとも思っていたので、素の私を見せるような形で発信を始め、今もずっと大事にしています。

また、ファンや見てくれる皆さんが貴重な時間を割いてくれているので、少しでもモチベーションアップに繋がったり、有益な情報を得ることができたり、何かしらの利益になる動画やコンテンツ作りを心がけていますね。

―そうした発信を続けるために、戦略的に行なっていることはありますか。

YouTubeに関しては、軸がぶれないように社員みんなで企画会議をして、配信のスケジュールと企画を毎月決めています。視聴者から「また美容系か」と思われないよう、内容はしっかり精査していますね。

一方で、私自身の感覚も大事にしています。ファンの需要を一番知っているのはやっぱり私なので、社員の子が提案してくれた企画に対して全部ノーを出すこともありますし、「今はこれじゃないほうがいいから、こっちを差し込んでほしい」と急遽変更をお願いする時もあります。でも、その感覚は発信を続けてきた中で培われてきたものなので、当たることがやっぱり多いんですよね。戦略も感覚も、どちらも大事な要素です。

―発信する中で、伝えたいメッセージや自分の考えを効果的に伝えられるように意識していることはありますか?

思っていないことは絶対に言わないことですね。病んでいる時は「病んでる」と正直に言うし、伝えたいと思ったらすぐにその言葉をSNSに書くし。あとは、あえて敬語を使わないようにしていたり、方言もそのまま使ったりしています。

失敗で終わらせない。挑戦し続けるための秘訣とは

―インフルエンサー活動を始めてから失敗した経験はありますか?

うーん……。ないかもしれないです。というのも、何事も失敗で終わらせたくないんですよ。「絶対に蹴散らしてやる、ただじゃ終わらせない」っていう思いでやっているので。

今ほどインフルエンサーとしての数字がなかった時は、数字がある人とずっと比べられ続けていたんです。でも、「絶対に見返すから見とけよ!」という気持ちでやってきて、今ここまで来ることができています。それに、もし嫌なことがあっても「でも、これがなかったらあの人に出会えてないし」という時もたくさんあるので、失敗だと思うことはないですね。

―とても素敵な考え方ですね。そのように前向きに頑張れているのはなぜなのでしょうか。

元々何もなかったからこそ、「どこまでレベルアップしていけるんだろう」とゲームみたいな感覚でいるのかもしれないです。例えば、年齢を重ねることもそうで。肌や体は若い頃の方がぴちぴちでいいかもしれないけど、知識も知恵も少なくて装備品も何もないじゃん、って思うんです。だから全然戻りたいと思わないですし、レベルアップするのを楽しんでいますね。

―インフルエンサー活動を始めてから、一番大きかった挑戦はなんですか?

2023年11月に個人事務所moonlitを立ち上げ、独立したことです。それまで事務所を3社経由したんですが、「私はこうしたい」という思いが常にあって、信頼できる人や良いなと思える人がいたら独立しようとずっと思っていました。そこからひょんなことがきっかけで、今の体制が整い、昨年やっと実現できました。

―独立という大きな挑戦を超えた今、どのように感じていますか?

人を雇うことは初めてでしたし、たくさん準備することもあったので、そういう意味では大変でした。でも、ずっと抱えていた煩わしさが本当に綺麗さっぱりなくなりました。「独立したら大変だよ」と言う人も多いですが、スタッフが巻き取ってくれているおかげもあり、私は全然そう感じていないんです。独立して良かったと感じています。

家族でも友達でもない、クリエイターとファンの関係値

―視聴者やファンとの繋がりを強めていくために大事にしていることを教えてください。

思っていないことは言わず、信用を少しずつ積み重ねることです。信頼は一瞬では培えないものですから、それまでの信頼を壊さないように普段の発言に気をつけたり、仕事を選んだり、すごく気にかけています。マネージャーや社員からも、「これはやらない方がいい」「これは違う」とストップをかけてもらっています。

―ファンや視聴者のエンゲージメントを高めるために行っている具体的な取り組みにはどのようなものがありますか?

5月に「えみ姉の保健室」という月額制のオンラインコミュニティの運営を始めたんです。自分のことを褒める「自分褒め日記」や、何でもシェアできる場所、マンツーマンの相談室などを用意しました。ファンからお金をいただいてコミュニティを作るからこそ、私とファンがより近くで繋がるだけでなく、ファン同士が友達になれるようなSNS以外の居場所を作ろうと思って立ち上げました。実際、コメント欄でファンの子同士が支え合っていて、すごく平和なSNSみたいな感じで、私もほっこりしています。

―えみ姉さんにとって、ファンはどんな存在ですか?

鏡みたいな存在ですね。インフルエンサーとして活動してきたこの4年間で私自身いろいろな変化があったのですが、昔から応援してくれている子たちと会うと、表情や見た目、マインドが全然変わっているんですよ。ファンの子たちを介して、私自身を見ているような気持ちになります。

ファンの子にとって、私は家族ではないし、かといって友達でもない。でも、だからこそ話せる部分もあると思うんです。良い距離感で私を使ってもらって、それを積み重ねていきながら、次に会う時に自分もファンの子も成長していたら良いなと思います。

4年前までは何者でもなかった私が今の私になれているのはファンのみんなありきなので、すごく大切に思っています。私が大きくなって、みんなへ還元していけることもどんどん増やしていきたいですね。

ファンの声も聞きながら進めるコンテンツづくり

―SNSで発信する内容はどのような基準で選んでいますか?

当初は自分が発信しやすいものや、数字が伸びやすいコンテンツを選んでいました。だから、少し下ネタ要素を含む動画もあったんですが、ファンの子たちが「えみ姉が好き」と周りに言っても恥ずかしくないようなコンテンツを選んでいこうと思い、10万人を超えた頃に方針を変えたんです。

それからは、強みにしていきたい「マインド系」と「美容系」の大きく2軸で発信するコンテンツを決めています。マインド系は、恋愛や自分の経験などについて話すものです。これの良いところが、自分の口一つあれば企画に困らず長く発信できて、かつ再生数が回るコンテンツであるところ。さらに、これが好きで見てくれる子たちは自分の経験も喋ってくれるんですよ。

だから、みんなの経験や意見を聞く募集系のコンテンツにも広げることができます。そうすると、私だけでなくみんなの考えも広まって、「私だけじゃないんだ」「こういう人もいるんだ」と気づきも生まれて、コメント欄も広がっていく、という良い循環が生まれるんです。この繰り返しでファンも拡大していくような戦略で発信しています。

でも、マインド系だけでは美容系のお仕事が来なくなってしまうので、美容も支持してもらえるような発信もしっかり行なっています。ファンの大部分が女性なので、美容はどうしても切り離せないんですよね。だから私自身もダイエット成功させよう、自分の見た目をちゃんと整えておこう、と常に意識しています。

―その中で、視聴者が見たいネタや募集系の内容はどのように把握しているのですか?

DMやコメントから取り入れる事が多いです。意外だったのが、視聴者のみんなは結構うぶなネタが好きなんですよ(笑)。初デートのエピソードとかファーストキスの思い出とか。自分が面白いと感じるもの以外にもウケるネタがあって、そういうのはネットで検索しながらネタを集めています。

いただいた分は倍以上にして返す。コラボの決め手は愛

―コラボレーションしたいブランドや企業はありますか?

CHANEL(シャネル)です。ハイブランドが好きなのもあるんですが、そもそもブランドの歴史背景や創業者のココ・シャネルの生き方が好きで。彼女は女性のファッションに革命を起こして一つの時代を築き上げた人で、生き方が本当にかっこいいし、「自分たちの生きやすさ」という意味では、今の私達にも通じるものがあると思います。だから、強くいたいと思う時に、そういう意味のあるブランドとしてCHANELを身につけることがあります。また、「CHANELの商品を買うために頑張る!」と気を引き締めてもくれるブランドです。

―逆に、えみ姉さん自身が企業とのコラボレーションを決める際の基準は何ですか?

お金や成果だけでなく、私のことや、私の先にいるファンのことも大切にしてくれる企業さんとお仕事をするようにしています。仕事となると利益をちゃんと出して、お互いwin-winな関係でなければなりません。なので、お金や成果を最優先にして、ほかをないがしろにするような場合はお仕事をしないですし、逆に良くしていただいた分は倍以上にして返すのが私のスタンスです。

また、私がお金を出してでも買いたいと思えるかも大切にしています。素敵な企業と大切なファンを繋げるのが私の役割なので、私自身が買いたいと思えるものでないとファンの子たちには買わせられません。そこを厳しく精査するのが私でないと、意味がないと思っています。

常に次の目標へ向けて。自分とタイミングを信じて突き進む

―今後取り組みたいと考えている新しいプロジェクトにはどのようなものがありますか?

もっとマインド系を体現できるプロデュースをしたいですね。自分の気持ちが切り替えられるようなものや、気分が上がるものが好きなので、香りやボディケアなどのビューティーケアのプロジェクトをしてみたいです。

―そういった新しいことに挑戦したい理由やモチベーションの源泉はなんですか?

私自身、次の目標やビジョンがないと不安になっちゃう性格なんです。一つ目標を達成したら、もっと高みを目指して次の目標を、みたいにいつまでも満足できないんですよ。目標の一つだった独立が達成できたので、次は事業を作ることを目指しています。

―そのようにどんどん次のステップへ進んでいくために日頃行っていることはありますか?

常に自分の感覚を大事にしていて、特にタイミングは意識しています。振り返ってみると、あの時に失敗と思ったことは失敗じゃなかったし、あれがあるから今があるし、あの時に動いたから今こうなっているし……。「これをやりたい」と今思いついたことにも意味があると思うんです。だから、将来に向けて今この時に頑張ろうと信じて突き進んでいきます。

マインド系と美容系を主軸に発信するえみ姉さん。いつも自然体で語り掛ける姿に、親近感を抱く視聴者も多いだろう。視聴者やファンを楽しませたり、気持ちを落ち着かせてくれたり、モチベーションを高めてくれたり。そんな発信の背景には、ファンへの感謝と、常に次のビジョンを追いかけるえみ姉さん自身のゆるぎない思いがあるからなのかもしれない。

文:安藤 ショウカ
写真:小笠原 大介