松竹、東映、フラッグは、三社共同で顧客データを活用したデジタル広告プラットフォームを開発し、映画マーケティングのDXを推進する「シネマDXプロジェクト」を始動することを発表した。
なお、同プロジェクト推進に伴い、松竹・東映がフラッグの第三者割当増資を引き受け、株式の約7%ずつ、両社で約14%を保有する資本業務提携を締結したとのことだ。
■プロジェクトの背景と目的
現在の映画業界は、市場はコロナ禍前の水準まで回復したものの、ヒット作とそれ以外で大きな差が付く傾向が強まり、作品の多様性と市場の持続可能性を維持するという観点において危機感が高まっているという。
この状況の打開のために、宣伝を担当する配給会社と、興行を行う映画館との間で情報連携の仕組みを確立し、顧客データの活用と分析を行って、効率的なリーチの獲得や宣伝活動の効果の測定が必要とされているとのことだ。
また、プライバシー保護規制の強化は、デジタルマーケティングの手法に大きな変化を及ぼすことが予想されており、第三者が提供するデータの利活用が難しくなる中、自社で抱えるファーストパーティデータをいかに有効活用できるかが、すべての業界におけるマーケティング上の最大の課題とも言える。
そこで、長年に渡り映画の製作・配給・興行を手がける松竹と東映、16年間で1,000本以上の映画・エンタメ作品のデジタルマーケティングを担当してきたフラッグの三社が共同で、映画マーケティングのDXを目指す「シネマDXプロジェクト(CDX)」を始動。
顧客データを活用したデジタル広告プラットフォームの開発・運用をフラッグが行うほか、デジタルマーケティング分野でのノウハウを活用して、三社の映画宣伝に従事する人材のデジタルリテラシーの向上を図るとしている。
■プロジェクト詳細
●観客動員のためのデジタル広告プラットフォームの開発・提供
松竹グループの松竹マルチプレックスシアターズ(SMT)は、全国26劇場251スクリーンの映画館(他社との共同事業体を含む)を運営。また東映は、直営劇場とティ・ジョイ運営劇場を合わせ全国19劇場175スクリーンの映画館(他社との共同事業体を含む)の経営に参画。
2社の合計数は45劇場426スクリーン(他社との共同事業体を含む)となるという。
両グループが運営する映画館(一部共同事業体を除く)をはじめ、同プロジェクトに賛同するシネコン各社の劇場データを活用し、ファーストパーティデータである顧客データと、公式サイト・SNSなどを通して得た映画作品のマーケティングデータを活用した、デジタル広告プラットフォームを開発。
同プラットフォームは、顧客データの解析および広告の運用をフラッグが担当し、より観客動員に繋がる効果的なデジタル広告の展開を目指すとしている。
同プラットフォームは他の映画会社向けにも提供する予定で、2027年には3億円以上の取扱高を見込んでいるという。
●映画宣伝のDXと人材育成を推進
松竹、東映、フラッグの三社が保有する映画宣伝の知見と各種データを基に映画宣伝手法を分析し、映画業界におけるカスタマージャーニーの構築と映画宣伝のDXを推進。
また映画宣伝は人手がかかり、人材不足が慢性化しているため、デジタルマーケティングに特化したフラッグのノウハウを活用して、映画宣伝に従事する人材のデジタルリテラシー向上を図り、業界全体での人材育成と業務効率化に貢献するという。
●映画館のDXによる来場促進施策を拡充
松竹・東映グループの映画館にCRM(顧客関係管理)およびCDP(顧客データプラットフォーム)を導入し、観客の鑑賞動向を正確に把握してパーソナライズされた顧客サービスを提供。
具体的には、Webサイト訪問者の鑑賞嗜好を元にした作品のレコメンデーションや鑑賞意向のある作品の上映スケジュール通知など、きめ細かなCRMの徹底によって映画館への来場者の増加と来場頻度の向上を目指すとのことだ。