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花王は、資源循環型社会の実現に向けた2023年の活動の進捗を報告した。
同社は、使用・排出されるプラスチック包装容器に関し、プラスチックの使用量を最大限削減した上で、社会に排出されたプラスチック廃棄物を使って製品・サービスを展開することで、2040年までに「ごみゼロ」(※1)、2050年までに「ごみネガティブ」(※2)を目標としているという。
2023年の主な実績として、水平リサイクルにより、再生材料を一部に使用したつめかえパックを初めて製品化しているとのことだ。
■目標達成に向けた「リデュースイノベーション」「リサイクルイノベーション」の推進
●リデュースイノベーション
プラスチック使用量を削減した包装容器の開発や、再生プラスチックおよび植物由来プラスチックの使用を促進することで、化石由来プラスチック使用量を2030年までにピークアウト(前年より使用量を減らす)、2050年までにゼロにしていくとしている。
2023年には、洗たく機にそのまま入れるだけで使えるスティック形状の衣料用洗剤「アタックZEROパーフェクトスティック」を8月に発売。固いプラスチックの本体容器を使用せず、パウチ包装の仕様にすることで、プラスチック使用量(洗たく1回当たり)を削減したという。
また、9月には食器用洗剤「キュキュット」で、ボトルの肉厚を薄くすることでプラスチック使用量を従来と比べて約40%削減した、ボトルタイプのつめかえ容器を発売。
●リサイクルイノベーション
社会に排出されたプラスチック廃棄物を、同社の製品・サービスとして展開することで再資源化。同社が関与したプラスチックの再資源化率を、3つのアプローチによって、2030年までに50%まで高めていくとしている。
(1)使用済みプラスチックをポジティブリサイクルする
同社の研究開発によって生まれた技術により、使用済みのプラスチックを価値あるものに変換し、製品・サービスとして展開。
ケミカル事業が展開しているアスファルト改質剤「ニュートラック5000」は、廃棄されるPET素材を独自技術によって改質剤に変換し、添加したアスファルト舗装の耐久性を、最大で5倍高めることができるという。
アスファルト舗装が高耐久化することで、路面の損傷が低減し、補修工事に伴うCO2の発生を抑制することが可能。2023年は、積雪寒冷地の道路課題の解決および耐久性向上を実現する新シリーズを発売したとのことだ。
(2)包装容器で再生プラスチックを使用する
「リデュースイノベーション」において使用を促進する再生プラスチックは、社会に排出されたプラスチック廃棄物からつくられているため、リサイクルにも貢献するとしている。
2023年には包装容器の6%に再生プラスチックを導入。日本のPET素材のボトルでは、2023年は食器用洗剤「キュキュット」のボトルタイプのつめかえ容器(特大サイズ)、衣類・布製品用消臭剤「リセッシュ除菌EX WIDE JET」などで再生プラスチックの導入が進んでいるという。
(3)回収した使用済み包装容器を社会が使用する
同社は、自治体や企業等と社会におけるさまざまなステークホルダーと連携し、使用済みプラスチック包装容器の回収スキームの確立とリサイクル技術の開発に取り組んでいるとのことだ。
2023年には、ライオンとの連携のもと、回収した使用済みつめかえパックを一部に使用した「リサイクルつめかえパック」を初めて製品化。数量限定発売したが、製品として継続的に提供できるよう、研究開発を継続するとしている。
また、現在さまざまなパターンで展開しているリサイクルの実証実験に関して、2023年は新たに、自治体の資源物回収ルートを活用した新回収スキームの実証実験を鹿児島県薩摩川内市で実施。
2024年3月には、花王ロジスティックスが経済産業省・環境省より、同社の事業場および鎌倉市で実施しているプラスチック包装容器の回収における「製造・販売事業者等による自主回収認定」を取得。
これにより、廃棄物処理法の業許可なく、使用済みつめかえパックを同社グループ内と鎌倉市で回収することが可能に。
■社会全体のプラスチック使用量の削減(削減貢献量)
プラスチック使用量を削減した包装容器の技術を社会に提供することで、社会全体のプラスチック使用量の削減に貢献するとしている。新たに提供する製品と従来の製品を比べて削減された量および同品容器に比べてつめかえ容器で削減された量を「削減貢献量」として指標に設定しているとのことだ。
■同社拠点における廃棄物削減・リサイクルの取り組み
同社は、工場や事業場で発生する廃棄物の削減やリサイクルを進めているという。
2023年は、工場や物流拠点で出荷されることなく、やむを得ず廃棄していた日用品・一部の化粧品の滞留在庫を自社ECサイト「My Kao Mall」でアウトレット販売を開始したとのことだ。
(※1)同社のプラスチック包装容器使用量と、同社がプラスチック再資源化に関与した量が等しい状態と同社が定義
(※2)同社のプラスチック包装容器使用量よりも、同社がプラスチック再資源化に関与した量が多い状態と同社が定義