動物実験は世界44カ国が廃止している
動物保護団体のヒューマンソサエティによれば、2023年10月現在、化粧品の動物実験を禁止している国は44カ国にのぼる。例えば、EUでは世界に先駆けて2013年に動物実験および動物実験を行った化粧品の販売を全面的に禁止した。イギリス、イスラエル、ノルウェー、スイス、インドなども同様だ。
また、米国の10州、ニュージーランド、オーストラリア、トルコ、韓国、台湾、ブラジル、グアテマラなどは、全面禁止までいかずとも何らかの禁止規制が設けられている。
動物実験はアレルギー反応や皮膚への刺激、毒性などを確かめるものが代表的で、その多くは痛みを伴うようだ。体がひどく傷つくこともあるという。そして、実験が終了すると動物は殺処分される。
動物を犠牲にすべきではないという倫理的な価値観に加え、動物実験に代わる代替方法や安全性が確立された成分が世界的に増えていることから、化粧品における動物実験の廃止が各国で進んでいる。
この問題に対するタイの状況をシーチャンにたずねたところ、以下の回答があった。
「化粧品における動物実験に関する議論は、タイでも確かに注目を集めている。当社は動物虐待のない実践を提唱する人々を代表しており、パートナーや小売店と協力して、すべての成分と検査方法が動物実験をしていないことを保証している。 同じアプローチを採用する化粧品ブランドも増えている」(シーチャンの広報担当者)
日本では規制がないが、大手ブランドは自主規制
日本においては現状、化粧品における動物実験の規制がされていない。JAVA(NPO法人動物実験の廃止を求める会)によれば、現在の化粧品規制は企業責任を大前提としている。厚生労働省が公表する化粧品基準のリストに違反しない限り、企業が責任を持って安全性を確保できれば、未使用の成分でも配合して化粧品を開発できる。
規制はされていないものの、大手ブランドに限っては自主的に動物実験を廃止(※)する動きが見られる。資生堂は、2013年に動物実験を廃止。同社では「情報による保証」「代替法による保証」「ヒトによる最終確認(医師管理下の連用試験やヒトパッチテスト等)」の3ステップにより原料の安全性を保証する体系を確立している。代替法の開発においても産官学と連携して積極的に取り組む。
花王は2015年、ソフィーナやカネボウを含む化粧品全ブランドの動物実験を廃止(※)。同社では1980年代後半から動物実験代替法の技術開発に積極的に取り組んできた歴史がある。実際は、薬用化粧品を含む化粧品について2003年から動物実験は廃止していたと回答している(法規制等により動物実験が不可欠となっている場合などを除く)。
ロート製薬もまた、化粧品(薬用化粧品を含む)の製品開発において動物実験を行わないポリシーの下、動物実験代替法やヒトを用いる試験(パッチテスト、累積刺激アレルギー試験RIPT等)を活用した製品開発を進めていると公式ホームページで公表している。美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会のホームページでは、2016年以降に同方針が適用された旨が記されている。
世界的な動物実験廃止の流れを受けてか、多くの大手ブランドは独自に廃止に踏み切っている。その背景にはARC(NPO法人アニマルライツセンター)、JAVA(NPO法人動物実験の廃止を求める会)、PEACE(Put an End to Animal Cruelty and Exploitation)などの活動の影響も大きいようだ。
(※)社会に対して安全性の説明をする必要が生じた場合などを除く。
取材・文:小林香織
写真提供:日本機能性コスメ研究所
【取材協力】
日本機能性コスメ研究所
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