ナリス化粧品は、12月5日から7日の期間に埼玉県大宮市で開催された日本化粧品技術者会(SCCJ)学術大会において、テラヘルツ波分光法を用いた肌の水分量測定方法を進化させ、塗膜の厚みの影響を受けづらい新しい測定方法を確立したと発表した。

テラヘルツ波全反射減衰分光法による角層水分量測定

従来の肌の水分量測定方法では、電気的な方法や光学的な方法が一般的だが、肌に塗布している化粧品や肌の上にある成分の影響によって、正しい測定をすることが難しいと考えられているという。

ナリス化粧品は、2016年に京都大学大学院農学研究科との共同研究で、テラヘルツ波が物質を透過する性質を利用することで、化粧品など肌の上にある成分の影響を受けることなく、肌の水分量を測定する技術の開発に成功していた。

しかし、一定の厚さを超えた塗膜の化粧品や油水分が肌を覆っている場合は、この測定法では精度が低いことがわかったため、塗膜の厚みの影響を受けづらい手法を探索することにしたとのことだ。

研究の結果、試料と装置の間に障害物となる5μm~20μmの厚みの異なる樹脂製フィルムを載せて水分量を計測すると、厚みに依存して信号が減弱することを確認。そこで、補正指標として異なる2種類の周波数で得た信号の比(Aⅽ)を考案して確認したところ、フィルムの厚さが15μⅿ程度までであれば、厚さの影響を受けることなく水分量の測定ができることがわかったという。

膜厚によるATR信号の減弱

また、ヒトの皮膚における試料塗布後の計測も実施したところ、厚みが生じるワセリン(油分)を試料として塗布した場合も、角層水分が低く見積もられることはなく、塗布の厚みの影響が軽減されたことが確認できたのことだ。

化粧品を塗布したヒトの皮膚の計測結果

この補正指標を利用することで、今後、粘度や硬さの異なる多種類の化粧品が与える肌の角層水分量の変化の評価が可能になると考えられるとしている。