無料語学アプリ「Duolingo」は、語学学習の動向を調査した年次レポート「Duolingo Language Report 2023」(以下、DLR2023)を公表した。
また、DLR2023と連動して、日本国内の語学学習の動向を探る年次調査「日本国内における語学学習に関する調査」(以下、国内調査))も実施し、あわせて結果を公表した。
■「Duolingo Language Report 2023」調査結果
Topic(1):世界で人気のある言語ランキング、日本語は昨年に続き5位。韓国語がイタリア語を抜き6位に
例年通り、学習者数の多い言語1位は「英語」であり、2位以下は「スペイン語」、「フランス語」、「ドイツ語」と続いた。世界共通語の「英語」と、公用語とする国が比較的多い言語が上位を占める中で、「日本語」は昨年、一昨年の調査同様に5位にランクイン。
日本語が最も学習されている国の数も、昨年の2カ国から5カ国へと増え、根強い日本文化への関心の高さがうかがえる。なお、5位までは例年と変化がない一方で、6〜10位ではいくつかの変化がみられた。
日本でも人気の韓国語も世界的にも成長し、イタリア語を抑え6位に。ウクライナ侵攻から2年近くが経ち、ロシア語への関心が低下したことに加え、旅行者を中心としたブラジルやポルトガルへの関心の高まりから、ポルトガル語が10位にランクインし、ロシア語はランク外となっている。
英語は経済的・教育的成功のために重要であり、特にアジアの学習者が英語学習に意欲的である様子が伺え、実際にインド(40%)、ベトナム(50%)、中国(54%)の英語学習者の多くが、言語学習の主な動機に教育を挙げていたとのことだ。
Topic(2):最も学習熱心な国、日本は2位に後退
昨年の調査で世界で最も平均学習時間が長い国として1位だった日本だが、今年は2位と1つ順位を落とす結果に。1位には昨年2位だったベラルーシ。チェコがランキング外となる代わりに、ウクライナが5位にランクインした。
Topic(3):Z世代の個人的な理由で言語を学び、年配学習者の連続記録が長い傾向
Z世代は個人的な理由(文化や家族など)で語学を勉強することが多く、その結果、あまり学習されていない言語への関心が高まっているという。
実際にウクライナ語を学ぶ人の半数以上がZ世代であり、アジア言語人気の成長も若い学習者が牽引。実際に日本語学習者の86%が30歳未満となっている。
年配の学習者は連続記録が長い傾向にあり、団塊世代が他のどの世代よりも連続記録が長い結果に。若年層は1年間学
習を休まず継続できる人が比較的少なく、夏休みや高校卒業、大学入学など、季節や生活に大きな変化があることが原因かもしれないと同社は考察している。
Topic(4):ウクライナ語を学習する人は、人とのつながりを求めて学習している傾向
昨年、ウクライナ侵攻を契機に、世界で130万人以上のDuolingoユーザーがウクライナ語学習をはじめたが、2023年も大半を通じて安定。ウクライナ語の新規学習者の37%が人とのつながりを求めて学んでおり、この割合は英語の17%やフランス語の18%など、他言語に比べて非常に高い割合となっている。
■日本国内における語学学習に関する調査
Topic(1):英語力に自信がある人はわずか1割、英語レベルは初心者が8割を占める結果に
まず全回答者に対し、自身の英語力への自信について質問したところ、「ある」「どちらかというとある」のいずれかを回答した人は10.7%と、非常に低い数字となった。
また、自身の英語レベルについては「初心者(ほとんど知らない)」「上級初心者(簡単な基礎は知っている)」が86.5%を占め、日本人の英語への苦手意識が浮き彫りに。
日本人という国民性は、比較的謙虚で、自身の英語力を低く見積もる傾向がある一方で、EFエデュケーションファースト社が実施するEF EPI英語能力指数ランキング2023でも日本は対象国の中で下位25%に位置する87位となっており、あながち間違いではない結果となっている。
Topic(2):約3人に1人が語学学習に前向き、特に若年層が語学学習に熱心に取り組む
「義務教育などでの学習を除く、自発的な語学学習を行っているか」という質問では、15.6%が「はい」と回答。そのうち38.6%が10代、23.0%が20代となり、60%以上を若年層が占める結果に。
「現在、語学学習を行っていないものの、今後自発的に臨む意欲がある」と回答した人が全体の15.5%となり、結果、語学学習に前向きな人(現在学習を行っている、もしくは意欲がある)は全体で31%にのぼった。
Topic(3):「推しの言葉を理解したい!」Z世代/ミレニアル世代では韓国語人気も
英語を選択する人がどの年代でも8割以上と非常に人気である一方で、韓国語では特に世代間の違いがあらわに。
30代以降では各年代10~15%の人が韓国語を選択したが、20代では26%が、さらに10代では37%が韓国語を学習。まだ語学学習をはじめていないものの意欲がある層に対し、どの言語に興味があるかを聞いた質問でも、20代の45.3%、10代の52.4%が韓国語に興味があると回答し、こちらも他世代に比べ、圧倒的に高い数値となった。
また、現在自発的に語学学習を行っている、もしくは語学学習への意欲がある人に対して、理由を聞いたところ、英語での「キャリアアップに繋げたいから」が46.1%でトップとなったが、韓国語では「好きなアーティストや芸能人が話す言葉をそのまま理解したいから」が57.6%で1位に。
次いで「海外の映画やドラマをそのまま理解したいから」が45.1%で2位となり、推し活需要の高さがうかがえる。
Topic(4):アプリ学習がNo.1に。キーポイントは「楽しい」「続けやすい」「安い」
語学学習を行っている人に対し、語学学習の頻度について質問したところ、最も多い回答は「週1~2日」で27.8%となった。
また、語学の学習方法(複数回答可)を尋ねると、最も多かったのは「アプリ」で半数以上の57.1%が利用、ついで「YouTubeやNetflixなどの動画サービス」が40.5%、「教本」が36.3%、「オンラインレッスン」が12.9%という結果に。
昨年は動画と教本についでアプリが3位だったのに対して大きく伸長し、語学学習にアプリを使うことが大きく浸透したことがうかがえる。
アプリや動画は楽しく気軽に学習できるだけでなく、隙間時間など思いついた時にすぐにできるため継続がしやすく、スクールなどと比べると比較的費用がかからないことから人気となっていると同社は考察。
実際に、語学学習サービスを利用する際に重要視することを質問したところ(※複数回答可能)、「楽しいこと」がトップで44.6%、ついで「継続できる仕組みがあること」が44.3%、そして「安いこと」が43.1%となった。
Topic(5):4割が「生成AIの登場が語学学習に変化を与えた」と回答。6割が語学学習サービスに最新テクノロジーが使われていることを重視
今年のトレンドとして外せない生成AI。Duolingoの国内調査では、生成AIが語学学習にどのような影響を与えたのか
を明らかにするため、いくつかの質問を実施。
語学学習に前向きな1,464人(現在語学学習を行っている、もしくは語学学習に意欲的である)に対し、「生成AIの登場が、語学学習になんらかの影響や変化を与えたと思うか?」という質問を行ったところ、41%が「はい」と回答。
具体的な理由として(※複数回答可能)、「安価に語学学習ができるようになったと思う」が58.8%、「自分に合った、カスタマイズされた学習ができるようになったと思う」が39.2%、「会話力の向上に寄与したと思う」が27.8%、「文法の間違いなど即時のフィードバックが受けられるようになったと思う」が27.0%で上位の回答となった。
一方で語学学習方法として「ChatGPT」を活用している人は、学習者の6.1%にしか満たず、自身でプロンプトを書くよりも、生成AIが実装された他の多くの語学学習アプリを使う方が手軽であることが考えられる。
また、「アプリやオンラインレッスンなどの語学学習サービスにAIなどの最新テクノロジーが使われていることは重要か?」という質問に対しては、「とても重要」「やや重要」と回答した人が59.6%となった。
Topic(6):円安の影響を感じる人は46.4%、影響を受けた人のうち20%は旅行を断念
2022年3月頃から始まった円安は、2023年には1ドル=150円台にも乗るなど歴史的な円安とも言われている。そこで、Duolingoの国内調査2023では、円安の影響についても調査を実施。
今回の調査対象者のうち、46.4%が「円安によって生活になんらかの影響が出た」と回答。最も多かった理由(※複数回答可能)は「輸入品の価格上昇により、生活費が増加した」で、影響が出たと回答した人のうち59.3%が選択している。
次に多かったのは「旅行を諦めた」で20.5%、次いで「旅行費用が増加した」が13.2%となり、新型コロナウイルスが終息し海外旅行に行けるようになったにも関わらず、海外旅行へのハードルがまだまだ高い様子が浮き彫りに。
また、直近話題になっている海外への出稼ぎだが、同調査では「海外での就職を検討/開始した」はわずか3.9%にとどまる結果となったとのことだ。
【Duolingo Language Report 2023調査概要】
同調査は2022年10月1日から2023年9月30日までの間にDuolingoで言語を学習した学習者の情報が含まれる。
データは学習者のプライバシーを確保するため、国別集計は、こちらに概説されている国際的に認知された独立した自治体に基づいている。年齢と学習の動機に関するデータは自己申告であり、13歳未満の学習者はすべての分析から除外。また、学習者のプライバシー保護の観点から、Duolingo学習者数が5,000人未満の国はランキングより除外。
【「日本国内における語学学習に関する調査」調査概要】
調査対象:母国語が日本語である、各都道府県男女100名
調査期間:2023年11月10日~11月15日
調査方法:インターネット調査
有効回答人数:4700名
<参考>
Duolingo『Duolingo Language Report 2023』調べ