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日本損害保険協会は、関東大震災から100年を契機に、地震保険加入者1,275名、および非加入者1,259名、計2,534名を対象とした「地震保険に関する意識調査」を実施し、その結果を公表した。
地震保険は単体では加入できず、火災保険とセットでの加入が必要となる。火災保険にセットして地震保険を契約している割合を地震保険付帯率といい、2022年度の地震保険付帯率を見てみると、全国平均が69.4%となっている。付帯率には地域によってばらつきがあり、東京都の付帯率は全国平均を下回る61.9%で全国ワースト3だという。
一方で、東京都は、死者数約6千人、全壊・焼失棟数約10万棟以上が予想される都心南部直下地震など高い地震リスクが存在している。
■被災時の経済的な備え、地震保険の非加入者は「特に考えていない」が最多、関東エリアでは「預貯金で賄う」と考えている割合が高い傾向
同調査で、関東エリアの地震保険非加入者の加入していない理由の傾向として、「地震保険の補償内容をよく理解していないから」が39.2%と全国平均(27.0%)に比べて高い結果に。
非加入者の被災した際の対応については、「預貯金で賄う」という回答が39.2%と全国平均(28.2%)に比べて高い一方で、「特に考えていない」という回答が41.8%と4割を超え、多くの人が経済的な備えについて検討していないことがわかる。
■「被災後、保険金がすぐに支払われるのか」という不安を抱えている人が約7割
地震保険加入者に対し、地震保険に関して不安に思うことを聞いたところ、「被災後、保険金がすぐに支払われるのか」という不安を抱えている人が70.3%に上った。
実際は、東日本大震災の場合、支払保険金は、約1兆3,241億円に達したが、そのうちの約1兆円(約50万件)が震災後3か月間のうちに支払われている。損害保険業界が一丸となって対応したことが、迅速な保険金の支払いにつながったという。
地震による被害は甚大であり、民間の損害保険会社だけでは補償しきれないため、地震保険は国と損害保険会社が共同で運営している。
総支払限度額は、現在12兆円で、関東大震災クラスの地震と同等規模の巨大地震が発生した場合においても対応可能な範囲として決定されている。実際、過去の代表的な震災である阪神淡路大震災や東日本大震災でも保険金の支払額は総支払限度額内に収まっている。
■地震保険の保険金は、使用用途が決められていないことを知らない人が約6割
地震保険の保険金は使用用途が決められていないが、同調査によると59.9%の人がそのことを知らないと回答。非加入者に限れば70.4%と、7割以上の人が知らないという結果に。
また、「地震による火災は、火災保険の対象外であること」は全体で49.8%、非加入者では57.7%が知らなかったと回答した。
同調査対象者の中の、過去に自身が被災した際、地震保険の支払いを受けたことがある104人を対象に、支払いを受けた保険金を主にどのように使用したかを尋ねたところ、63.5%の人は「家の建て直し・修繕」の費用に充てていたが、11.5%の人は「当面の生活費」として使用していたことがわかった。
過去に地震保険を受け取った経験のある人に対し、地震保険に加入してよかったか聞くと、88.5%の人が「地震保険に加入していてよかった・助かった」と回答した。
また、保険金の使用用途は決められていないことを「知らなかった」と回答した非加入者に対し、その事実を知った上で加入を検討したいと思ったかどうかを尋ねたところ、39.1%の人が「検討したいと思った」と回答する結果となり、他の項目と比較して最も高い結果になった。
■「災害大国・日本」における、震災100年の歴史と地震保険の歩み
地震保険制度については、地震リスクがその発生頻度と規模を統計的に把握するのが難しいことや、一度発生すると異常・巨大な災害となる可能性があるという特異性のため、なかなか実現には至らない状況が続いていたという。
しかし、1964年6月に発生した新潟地震(マグニチュード7.5)で、新潟県を中心に山形県、秋田県など9県に大きな被害が及んだことにより、1966年に「地震保険に関する法律」が制定。地震保険制度は、この法律に基づく保険制度として創設された。その後、50年以上に渡り、地震災害の経験を踏まえて制度改定を繰り返してきた。
【調査概要】
調査対象:全国の25歳~69歳、持ち家に住んでいる人2,534名
調査期間:8月10日~14日
調査手法:オンラインアンケート
<参考>
日本損害保険協会「地震保険に関する意識調査」