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web3のホットトピック、サステナビリティ
「web3」に関するトピックは広範に及ぶだけでなく、進展もはやく、どのようなトレンドが起こっているのかタイムリーに全体像を把握するのは非常に困難だ。
ブロックチェーン学習プログラムを提供するAcademy.Moralisによると、2022年にweb3領域で特に注目されたトピックは8つあるという。
8つとはNFT、Move-to-Earn、DAOs、レイヤー2・スケーリングソリューション、ブロックチェーン・アズ・ア・サービス(Blockchain-as-a-Service)、サステナビリティ、AIと機械学習、クロスチェーン・インターオペラビリティ。
NFT、DAOs、AI、レイヤー2などに関しては、クリプトメディアだけでなく、一般のビジネスメディアでも頻繁に登場するワードとなっており、同トピックに対する認知度や注目度が高いというのもうなずける。
一方、サステナビリティに関しては、一般メディアでの報道が少なく、他のトピックに比べ認知度は低い印象を受ける。
しかし、サステナビリティ分野でもブロックチェーン活用は着実に進んでおり、今後NFTなどと同様に、主流メディアにおいても関連報道が増えてくるかもしれない。
消費選択に影響するエコ情報、ブロックチェーンで証明
「サステナビリティ」というワードやラベルが消費者の消費選択に影響を与えることは、これまでの研究で明らかになっている。
イタリア・ナポリのパルテノペ大学の研究者らが2021年12月に発表した論文によると、食品にサステナビリティラベルが付いている場合、ラベルが付いていない食品に比べ、消費者が購入する傾向が強くなることが判明。また、2022年1月に発表された論文では、上記と同様の結果が示されただけでなく、サステナビリティラベルが付いている場合、価格が高くても支払う意欲が上昇することが観察された。
消費者の間でこのような傾向が強くなっていることは、ブランド企業も熟知しており、サステナビリティラベルはマーケティングにおいて必須のツールになっている。しかし、環境配慮の取り組みや効果がないにも関わらず、サステナビリティラベルを乱用するケースが増加。これは「グリーンウォッシュ」として、海外メディアではこの数年大きな社会問題として取り上げられることが増えている。
この問題をブロックチェーンで解決しようとしているのが、英国ロンドン拠点のProvenanceだ。
同社は、ブランド企業やリテール企業が商品を販売する際に用いる各種サステナビリティラベルの情報を精査し、検証され信頼できる情報であることをブロックチェーン技術で担保するプラットフォームを提供している。原材料の調達から、製造、消費者に渡るまでの商品サプライチェーンを追跡し、それらの情報をブロックチェーン上に記録、それらをプラットフォームやアプリ上で確認できる仕組みとなっている。
CBInsightによると、同社は2014年創業のスタートアップで、これまでの資金調達額は793万ドル。
アパレルや食品領域での活用が多いようだが、コスメ領域でも注目される存在となっている。
Cosmetics Businessは2022年12月の記事で、2023年以降のコスメ市場では、グリーンウォッシュのような偽ラベルとそれに伴う価格の釣り上げ行為に対して、消費者の寛容性はゼロ(zero tolernace)になるだろうと指摘。ブランド企業は、主張や価格を証明しなければ、消費者の支持を得ることはできなくなると警鐘を鳴らしている。
気象災害の激甚化も、web3技術で作物農家を守る仕組み
気象災害の激甚化に対してもweb3技術を活用する試みが進められている。
気象災害がもたらす被害は様々だが、その中でも作物被害は食料問題などの観点からも無視できないものだ。
特に弱い立場にいるのが、新興国における作物農家。通常、気象災害などに対して保険をかけるところだが、新興国では非効率的なプロセス、請求処理のコスト高などにより保険料が高騰、多くの農家が保険をかけられない状況となっている。保険をかけられない農家が生産する作物の価値は、1兆ドルに上るとの試算もある。
ニューヨークを拠点とするArbolは、web3技術と気象データを活用し、新興国農家でも購入できる価格の保険商品を開発している。
保険料が高くなる理由の1つに仲介者の存在がある。同社は、スマートコントラクトを活用することで、仲介者を必要としない仕組みを構築、またスマートコントラクトによる自動実行機能により、従来よりも迅速な保険金支払いが可能になるという。
Arbolは、Chainlink Networkを介し、スマートコントラクトを活用している。ほかにも太陽光スマートバッテリーからエネルギーを配分する仕組みを構築しているLiquidstarや新しいカーボンプライスメカニズムによってカーボンクレジット取引の促進を目指すOpen Earth FoundationもChainlink Networkを活用しており、サステナビリティ分野では注目されるブロックチェーンネットワークとなっている。
これまで、マイニング工程で大量の電力が消費されるという理由で、サステナビリティとは対局に位置づけられていたブロックチェーンだが、2022年9月にイーサリアムが「The Merge」と呼ばれるイベントを経て、消費電力量は99.84%下がったといわれている。イーサリアムはNFTの主要ネットワーク。現在NFTによるカーボンのトークン化議論など、新たな動きが出ている。
文:細谷元(Livit)