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テック大手のレイオフ動向
米国ではテック企業におけるレイオフが進行中だ。直近では、2023年1月31日にペイパルが全社員の7%に相当する2000人をレイオフする計画を発表したところ。
テック企業によるレイオフをトラッキングしているサイトLayoffs.fyiの2月2日時点のまとめでは、2023年の累計レイオフ数はすでに8万2769人に達している。2022年通年のレイオフ数は15万9666人、2023年は1カ月だけで前年の半数を超えたことになる。データは世界中のレイオフをトラッキングしたものだが、その大半は米国発のものだ。
ペイパルのほか、比較的規模が大きな最近のレイオフ事例としては、セールスフォース(レイオフ数8000人)、SAP(3000人)、IBM(3900人)、半導体製造装置開発のLam Research(1300人)、データ管理のNetApp(960人)、CRM開発のHubSpot(500人)などが挙げられる。
一方、1月にレイオフが急増した最大要因となったのは、アマゾン、マイクロソフト、グーグルによる大規模レイオフだ。
これまでの報道によると、レイオフ数はアマゾンが1万8000人、グーグル(アルファベット)が1万2000人、マイクロソフトが1万人といずれも1万人を超える規模。昨年、メタが1万1000人のレイオフ計画を進めることが報じられたところ。アップルを除くGAFAM企業のレイオフ数は、計5万1000人に達する。
GAFAMのレイオフ要因、アップルがレイオフに至っていない訳
GAFAMを含め多くのテック企業では、レイオフの主な理由として、経済の先行き不安を挙げている。
しかし最近発表された調査レポートでは、特にGAFAM企業で2019〜2021年にかけて、過剰といえる増員を行っており、直近のレイオフはその調整的な動きとして見て取ることができると指摘されている。
データサイエンス企業365 Data Scienceが2023年1月31日に発表したレポートによると、2019〜2021年にかけて、アップルを除くGAFAM企業の社員増加率は、平均で60%を超えていることが明らかとなった。
社員増加率が最大だったのはアマゾン。2019~2021年の同社の社員増加率は99%、また2020〜2021年だけで社員数は80万人増加し、社員数は160万人以上に拡大した。
アマゾンに次ぎ、社員増加率が高かったのはメタで、2019~2021年の社員増加率は60%、2020〜2021年には2万7000人を雇用し、社員数は7万1970人となった。
一方、グーグルの2019~2021年の社員増加率は60%、2020~2021年の社員増加数は5万2000人、社員数は15万6000人に拡大した。マイクロソフトでは、2019~2021年の社員増加率が47%、社員数は2020~2021年には5万8000人増加し、18万1000人に膨れ上がった。
GAFAMの中で唯一レイオフを行っていないのがアップルだ。なぜアップルはレイオフを実施しないのか、他のGAFAM企業と社員増加率を比べると、その理由の一端が見えてくる。
2021年のアップル社員数は15万4000人と、その規模はマイクロソフトやグーグルとほぼ同水準だ。一方、2019〜2021年における社員増加率は12%と他のGAFAM企業に比べ穏やかな上昇だったのだ。
最近の報道によると、アップルがAR/VRヘッドセットを今春にも発表し、秋頃には出荷する計画との憶測が流れている。これに伴い、AR/VR関連の人材雇用を積極的に増やしており、雇用に関してアップルは他のテック企業と一線を画す動きを見せている。
GAFAMのレイオフで最も影響を受けた役職
上記365 Data Scienceの調査は、GAFAM企業とツイッターのレイオフ動向を詳細に分析し、実際に影響を受けた役職を突き止めた。
この詳細分析は、ビジネスSNSリンクトインでアクティブな1157人のプロフィールデータから、役職、国、年齢、性別を集計し、その傾向をまとめたものだ。
GAFAMとツイッターのレイオフでは、全体的に以下のような傾向が抽出された。
まず最もレイオフが多かったのは、人事担当者(HR/Talent Sourcing)だ。レイオフされた社員のうち27.8%が人事担当者であった。これにソフトウェアエンジニアが22.1%、マーケティングが7.1%、カスタマーサービスが4.6%、PR・コミュニケーションが4.4%と続いた。
レイオフされた社員の年齢は、30〜40歳が47.8%で最多。次いで、20〜30歳が35.9%、40〜50歳が13.5%、60〜70歳が0.5%だった。
365 Data Scienceは分析結果から、2022〜2023年にかけて、GAFAM企業でレイオフされた平均的な人物像を作成した。それによると、30〜40歳の女性で、米国を拠点として、役職は人事担当、その部署では2年半勤務した。学歴は大学学部卒、5.6回の転職を経験しており、累計の勤務年数は約12年となる。
全体的な傾向として、人事担当者のレイオフが多いことが示されているが、特に人事担当者のレイオフ率が高かったのが、マイクロソフト、アマゾン、メタの3社。マイクロソフトでは実に39.4%に上ったほか、アマゾンで37.4%、メタで29.8%と平均を上回った。
アップル以外のGAFAM企業の社員数は、2019〜2021年にかけて平均60%以上で増加しているが、このとき雇用急増に備え、まず雇用されたのが人事担当者であったというのは想像に難くない。人事担当者のレイオフが多いという傾向から、今後しばらくは過去のような急速な雇用は行わないというGAFAM企業の方針を見て取ることができる。
文:細谷元(Livit)