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駐在の住みやすい都市ランキング2022
毎年恒例となっているInterNationsによる駐在の住みやすい都市ランキングが11月30日に発表された。
このランキングは、InterNationsが2017年から「Expat Insider」調査の一環で実施しているもの。2022年の調査では、181カ国・地域に住む1万1970人(177国籍)の駐在員が参加し、住みやすい都市トップ50が選ばれた。
都市がランキング調査の対象となるには、50人以上の駐在員が住んでいることが条件となる。
各駐在員は、16のサブカテゴリに分類される生活に関する計56項目の質問に対し1〜7で満足度を評価。またサブカテゴリは、関連性により5つのトピックに分類され、各トピックごとのランキングとそれらによって成り立つ総合評価が算出された。
今回の総合ランキング(The Best and Worst Cities for Expats )におけるトップ10の顔ぶれは、1位スペイン・バレンシア、2位ドバイ、3位メキシコシティ、4位ポルトガル・リスボン、5位スペイン・マドリード、6位タイ・バンコク、7位スイス・バーゼル、8位オーストラリア・メルボルン、9位アブダビ、10位シンガポールとなった。
ちなみに昨年2021年版のランキングトップ10は、1位マレーシア・クアラルンプール、2位スペイン・マラガ、3位ドバイ、4位シドニー、5位シンガポール、6位ホーチミン、7位チェコ・プラハ、8位メキシコシティ、9位スイス・バーゼル、10位スペイン・マドリードだった。
2022年ランキング1位、バレンシアの魅力
2022年ランキングで1位だったのは、スペイン南東部に位置する港湾都市バレンシア。特に都市の住みやすさと生活費の安さが高い評価を受けた。トピックでみると、「Quality of Life(生活の質)」で1位を獲得している。
このトピックにおけるサブカテゴリは、「Leisure Options (レジャーの選択肢)」「Travel & Transit(移動と乗り換え)」「Health & Well-Being(健康とウェルビーイング)」「Safety & Security(安全性)」「Environment & Climate(環境と気候)」の5つ。
バレンシアの同トピックにおける各サブカテゴリの順位は、Leisure Optionsが7位、Travel & Transitが3位、Health & Well-Beingが4位、Safety & Securityが9位、Environment & Climateが6位だった。
Travel & Transitサブカテゴリにおける質問項目では、公共交通の手頃価格が高く評価された。その満足度は85%と世界平均の70%を15ポイント上回る。
別のトピック「Ease of Settling In(生活基盤の築きやすさ)」でも、バレンシアは3位と高い評価だ。
このトピックを構成するサブカテゴリは、「Culture & Welcome(文化と受け入れ環境)」「Local Friendliness(地元住民のフレンドリーさ)」「Finding Friends(友人の見つけやすさ)」の3つ。
これらサブカテゴリではすべてメキシコシティが1位となり、圧倒的な高評価を得ているが、バレンシアもCulture & Welcomeで3位、Local Friendlinessで5位、Finding Friendsで5位と健闘し、上位に食い込んだ。
この調査では、全般的にスペイン各都市におけるフレンドリーさが高く評価される傾向があり、バレンシアの地元住民のフレンドリーさに対する高評価率も85%と世界平均の66%を大きく上回る結果となった。
ドバイの魅力はビジネス環境
総合2位となったドバイは、その魅力はビジネス環境にあるようだ。
ドバイの評価が最も高かったトピックは「Expat Essentials」。このトピックでドバイは1位を獲得している(バレンシアは13位)。
このトピックを構成するサブカテゴリは、「Digital Life(デジタルライフ)」「Admin Topics(アドミニストレーション)」「Housing(住宅)」「Language(言語)」の4つ。
これらサブカテゴリにおけるドバイの順位は、Digital Lifeが14位、Admin Topicsが1位、住宅が7位、言語が2位となった。
特に評価が高かったAdmin Topicsとは、ビザの取得など行政手続きに関する満足度をあらわすサブカテゴリ。関連する質問項目でビザ取得の容易さが問われたが実に駐在員の85%が容易だと回答、世界平均の56%を大きく上回った。また、地元当局とのやり取りに関しても、66%が容易と回答している。世界平均は40%にとどまる。
Expat Essentialsトピックにおいて、Digital Lifeが14位と振るわなかったが、これは主にソーシャルメディアなどオンラインサービスへのアクセスが一部規制されていることが理由になっている。この点に関する不満率は18%と世界平均の7%を2倍以上上回る。一方、オンライン行政サービスの評価は高く、満足率は88%だった(世界平均は61%)。
言語に関しても、英語が通じる環境が高く評価され、シンガポールに次ぐ2位にランクインした。
ちなみにExpat Essentialsトピックでは、同じアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビが2位となっており、同国が注力する海外人材誘致施策が奏功している様子がうかがえる。
3位メキシコシティの魅力
総合3位はメキシコシティ。都市のフレンドリーさに対する満足度が非常に高く、Ease of Settling Inトピックにおける3つのサブカテゴリすべてで1位という高い評価となった。
同トピックに関する質問項目では、くつろぎを感じると回答した駐在員の割合は82%と世界平均の62%を大きく上回ったほか、外国人を受け入れる雰囲気があるとの回答も89%(世界平均66%)と高い割合となった。
フレンドリーさに加えメキシコシティが高い評価を受けたのは、家計の満足度を評価する「Personal Finance」トピックだ。このトピックでメキシコシティは1位を獲得している。トップ5は、2位バンコク、3位バレンシア、4位クアラルンプール、5位リスボンだった。
同トピックに関しては、可処分所得に対する質問がなされているが、メキシコシティの駐在員のうち十分な可処分所得があるとの回答割合は87%に上った。世界平均は72%だった。
これは、メキシコシティの物価の安さが理由になっていると思われる。同都市における物価に対しては、駐在員の67%が満足する水準であると回答、世界平均の45%を上回った。
メキシコシティは、総合1位のバレンシアと同様に都市のフレンドリーさが高い評価を受ける一方、Quality of Lifeトピックにおいては、バレンシアとはかなり異なる様相となっている。同トピックにおけるメキシコシティの順位は50カ国中44位という結果だったのだ。
同トピック内のSafety & Securityサブカテゴリで47位と振るわなかったほか、Health & Well-Beingで40位、Environment & Climateで46位と軒並みワーストに近い評価を受けていることが分かった。
このように細かく見ていくと今回のランキング上位は、バレンシア、メキシコシティ、マドリードなどフレンドリーさで高評価を得たグループとドバイ、アブダビ、シンガポールなどビジネス環境で高い評価を得たグループに大別されることが分かる。
トップ10には入っていないが、11位のエストニア・タリンや23位のオマーン・マスカット、24位カタール・ドーハなどもビジネス環境で高い評価を受けており、2023年のランキングでさらに順位を上げてくる可能性がある。
文:細谷元(Livit)