三菱地所は、1958年竣工のオフィスビル「大手町ビル」の大規模リノベーション工事をテナントが入居しながら段階的に進めてきたが、このほどリノベーション工事を完了し、5月26日に屋上空間「大手町ビルスカイラボ」をオープンし、新しい交流空間を創出する。

「大手町ビル」大規模リノベーションの特徴

■「大手町ビル」大規模リノベーションについて

(1)外装デザイン等には3つの通りのストーリー性を反映、外壁素材や窓ガラス等も機能更新

・東西約200mに拡がる大手町ビルは、大名小路に面する東側を東京駅や三菱一号館美術館にも用いられている“レンガ”基調とし、日比谷通りに面する西側は皇居のお堀や二重橋などを想起させる“石垣”をモチーフとするデザインに。
仲通りが貫通するビル中央部分は“通り抜け感”を演出するガラス素材で構成、建物内外から仲通り機能を演出しており、それぞれのストーリー性をデザインに取り込んで刷新。

・主たる外壁素材には通常のセメントに比べ耐久性や耐火性に優れたGRC(耐アルカリ性ガラス繊維補強セメント)を採用することで、将来的な管理コストの低減を図ったという。

・窓ガラスは、北面を除いて断熱性に優れたLow-E複層ガラス及び日射フレームを設けることにより熱負荷削減(約44%削減)を図る等、環境面での性能向上を実現。

(2)約4,000㎡の屋上に緑あふれるワークスペースや農園スペースを整備、AI画像解析の活用も

・周辺が高層ビルに囲まれた谷間空間である同ビルならではの開放的な空間特性を活かし、これまで設備スペースとしてしか利用していなかった約4,000㎡の屋上空間を、「大手町ビルスカイラボ」として緑あふれるワークスペースと農園スペース、大手町観音スペース、MEC IndustryのCLTベンチ等を設置。
※CLT(直交集成板・Cross Laminated Timber):軽量で強度があり、施工期間の短縮などの利点を持つ新しい建築素材

・ワークスペース(1,000㎡超)では、157席利用可能。「丸の内ポイントアプリ」利用者であれば一般の人も利用可能(一部「update! MARUNOUCHI for workers」会員限定エリアあり)。
※いずれも同社グループサービスの共有ID「Machi Pass」の対象サービス

・竣工時から屋上に安置されていた「大手町観世音菩薩像(大手町観音)」は、従前年に1回御開帳の日を設けていたが、今回のリノベーションを機に一般の来館者も参拝できるように整備(ビル休館日を除く)。

・都内最大級の屋上農園スペース「The Edible Park OTEMACHI by grow」(658㎡、運営:プランティオ)では、固定種・在来種といわれる「江戸伝統東京野菜」を中心に約40種類の野菜を土入れの段階からユーザー参加型で育てていく予定。
野菜育成アプリ「grow GO」をダウンロードすることで、野菜の生育状況を把握できるほか、収穫時期にはアプリ利用者が収穫イベントに参加できる。
また、食とのつながり、広がりを推奨する「EAT&LEAD」や「丸の内シェフズクラブ」とも連携予定であり、ビル就業者や来館者、食従事者らとのサスティナブルな交流拠点になることを目指すという。

・屋上ではAI画像解析を活用し、①利用者満足度の向上や②安心・安全の向上の観点から様々な事象の検知・可視化する取り組みも開始。プライバシーに配慮しながら、混雑状況の把握や困っている人へのサポートなど安心・安全・快適なまちづくりを一層推進していくとのことだ。

(3)7階に就業者やエリアワーカー向けの共用ラウンジ・テラスを開設、各階共用部リノベーションも実施

・7階フロアの中央部分には、ビル就業者が自由に使うことができるラウンジ(北側96席、南側40席、計136席)および丸の内仲通りを一望できるテラスを設置。ビル就業者のほかにも、北側ゾーンは「update! MARUNOUCHI for workers」会員も利用可能)。

(4)東側を「LABゾーン」と位置付けて多様な企業が集積、様々な人・企業が交流する拠点へ

・大手町ビルは、地下鉄5路線が乗り入れる「大手町」駅直結という抜群の交通アクセスを有し、大規模フロアプレートでありながらも小割貸付に適したフロア形状をしている。

この優位性を活かし、同ビル東側を「LABゾーン」と位置付け、多くのスタートアップ企業や大企業の新規事業開発部門等の集積を図った。

■大規模リノベーションの経緯・狙い

同社は2002年の丸ビル建替えを皮切りに、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)で数多くの再開発プロジェクトに取り組んできたが、今回は建替えではなくリノベーションによるハード・ソフト両面の機能更新を図ることで、オフィスのバリエーションを増やして様々なテナントニーズに対応するとともに、既存ストックの活用という社会的な要請にも応え、再開発が進む都市景観に新たな色付けを行ったとのことだ。

また、同プロジェクトは、同社が「丸の内NEXTステージ」で掲げる“人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台”を具現化する取り組みの一つであり、「5つのまちづくり戦略」で掲げた「多様な場の提供」「多様なテーマ・コミュニティ」「面でのつながり・発信」等の具現策であるとしている。