国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、新たな基幹ロケットとして開発中のH3ロケットにおいて、第一段エンジン用として新たに開発中のLE-9エンジンで確認されていた技術的課題への対応に一定の目途を得たものの、確実な打上げを行うために、試験機1号機の2021年度の打上げを見合わせることを発表した。
JAXAは、引き続きLE-9エンジンの技術的課題への対応を確実に行うとともに、H3ロケットの打上げ成功を目指してJAXAの総力を挙げて取り組んでいくとのことだ。
なお、同件に関してJAXA理事長の山川宏氏は、以下のようにコメントした。
「新たな基幹ロケットであるH3ロケットにおきましては、第1段エンジン用の新たなLE-9エンジンの開発等に取り組んでまいりました。2020年5月に、同エンジンの設計を確定させる一連の試験において、推進薬をエンジンに送り込む役割のターボポンプに疲労破面が認められるとともに、燃焼室壁面に開口が確認されました。
これら事象への原因究明と対応策の検討を進めた結果、試験機1号機の打上げを2020年度から2021年度にする等、H3ロケットの開発計画を見直しました。
それ以降、見直した開発計画に基づき、ターボポンプの再設計や翼の振動データを直接取得する新たな試験等を進め、2020年5月に確認された技術的課題に対し、一定の技術的な目途を得ることができました。
一方で、ターボポンプの翼の振動データから、その他にも配慮すべき事象も確認され、それらに対し確実に処置をした上で設計を確定させる必要があると判断し、試験機1号機の2021年度の打上げを見合わせることといたしました。
打上げ時期の変更は2度目になり、計画通りに打上げを実施できないことを大変重く受け止めております。この変更は、宇宙航空研究開発機構として、H3ロケット試験機1号機の確実な打上げのためには必要な措置と考えており、関係者一丸となって残りの開発を進めて参ります。引き続き、皆様のご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。」