メタやマイクロソフト以外のメタバース関連企業

フェイスブックのメタへの社名変更やマイクロソフトによるメタバース参入発表によって、「メタバース関連企業」への投資が加速している。

ナスダックが2021年11月2日に発表した記事では、主要メタバース関連企業として、NVIDIA、Autodesk、Unity、Roblox、Fastlyの名が挙がっている。

たとえば、NVIDIAは、GPUの開発・生産を主力とする半導体メーカーだが、VR・AR技術をベースとして発展するメタバースには欠かせない企業だ。メタバースの盛り上がりとともに、GPU需要はさらに高まっていくことが見込まれるため、メタバース関連企業と位置づけられている。

Autodeskは、3次元モデリングやアニメーション用のソフトウェアを開発する企業。同社が提供する「Maya」や「3ds Max」は、映画業界やゲーム業界でスタンダードとなっているソフトウェアで、メタバース構築でも必須のツールだ。ナイキなどの非テック企業のメタバース参入などもあり、これらのソフトウェアスキルは、映画・ゲーム産業以外でも需要が高まることが予想される。

同様に、Unityも3次元モデルのリアルタイムレンダリングを可能にするプラットフォームであり、メタバース構築に必須のツール。メタ(旧フェイスブック)もUnityと共同で、同ツールを使いこなせるクリエイターの育成を計画している。メタバースの盛り上がりとともに、同社への関心はさらに高まることが予想される。

拡大する新興メタバースや関連技術への投資

上記の企業は「メタバース関連企業」だが、直接的にメタバース構築を目指す企業も複数存在しており、これらのメタバース企業の注目度も高まりを見せている。

1つはSomnium Spaceだ。独自にメタバースを構築している同社だが、フェイスブックの社名変更前後から同社が発行する暗号通貨の時価総額が急騰。2021年11月現在、時価総額は前月比で6〜10倍の水準で推移している状況だ。

Somnium Spaceは、特にVRベースのメタバース構築に注力しており、関連技術への投資を拡大している。注目されるのは、VRヘッドセットやハプティックスーツなどハードウェアへの投資を加速している点だろう。

直近の発表によると、Somnium SpaceはハイエンドVRヘッドセットを開発する「VRgineers」に戦略投資を実施。また、Somnium Space発のスタンドアロンのPC&VRヘッドセットをローンチする計画も明らかにしている。

スタンドアロンのVRヘッドセットに関しては、研究開発段階にあり、現在スペックや部品詳細の最終化を進めているとのこと。2021年12月に開催予定の同社イベントで、最終的なスペックやローンチスケジュールを公開するとしている。

現在、VRヘッドセット市場は数社による寡占状態。特にメタのオキュラスの占有率が高く、ハードウェアを扱わないメタバースプレイヤーのオキュラス依存度は高い。オキュラスのルール変更があれば、すべて従う以外に余地がない状況だ。Somnium Spaceは、同社のスタンドアロンVRヘッドセットをローンチすることで、そのような依存度を下げ自由度を高めたい考えだ。

またSomnium Spaceは、VR用ハプティックスーツを開発する「Teslasuit」への戦略投資を強化することも明らかにしている。

ハプティックスーツとは、VRの仮想環境で体験する感覚や衝撃を現実空間で再現するテクノロジー。VR空間をよりイマーシブにするために必須のツールであり、TeslasuitのほかにもbHapticsなどいくつかのスタートアップが研究開発を進めている。

Somnium Spaceは今年7月に、独自のメタバースで利用できるハプティックスーツの開発をTeslasuitと共同で行うことを明らかにしている。今回の投資によって、この提携関係はさらに強化されることになる。

研究開発段階ではあるものの、現在すでに感触、音楽、天候、銃撃などの感覚を再現可能であるという。

Somnium Spaceのメタバースでは、仮想ショッピングモールが設置されているが、Teslasuitは今後この仮想モールの一角に専門のVRショップを開設し、新商品の発表やカスタマーミーティングを実施する計画とのこと。

メタバースとは、ゲームだけでなく、ライフスタイル、ビジネス、教育など経済社会の様々な側面を包含する仮想世界。VRヘッドセットとハプティックスーツは、企業におけるトレーニング、リハビリテーション、スポーツなどのあり方を大きく変えることになるだろう。

ソフトバンクなどが100億円投資するメタバース

Somnium Spaceだけでなく、DecentralandやThe Sandboxなどのメタバースにも資金が流入している。

Decentralandで利用される暗号通貨Manaの時価総額は、10月中旬まで10億ドル前後で推移していたが、フェイスブックの社名変更後に価格が急騰し、前月比で3倍ほどの規模に拡大した。

Decentralandメタバースでは、ユーザーは3D空間を自由に構築できることに加え、マーケットプレイスでバーチャルグッズを販売することができる。最近は、NFTブームの影響で、同プラットフォーム内のデジタル不動産が高騰したことでも話題となった。

2021年10月には、著名DJや歌手を招いたメタバース音楽フェスティバルを開催。メタバースにおける音楽イベントの可能性を示すなど、注目される存在となっている。

一方、The Sandboxも著名ミュージシャンのSnoop Doggなどとの提携が取り沙汰されるなどメディア露出が増えている。直近では、ソフトバンクなどが9300万ドル(約106億円)を投資したとの報道があったばかりだ。

今後も投資資金が流れ込むとみられるメタバース市場。メタやマイクロソフトなどの大手テック企業が優勢となるのか、それとも新興メタバース企業の影響力が大手に匹敵するようになるのか、今後の展開に注目していきたい。

文:細谷元(Livit