飲食店に特化したリサーチサービス「飲食店リサーチ」を運営するシンクロ・フードは、飲食店.COM会員を対象に、東京オリンピック・パラリンピック開催に関する飲食店の意見・意向についてアンケート調査を実施し、結果を発表した。
新型コロナウイルスの世界的な流行が収まらない中、7月23日より東京オリンピック・パラリンピックが開催されている。
しかし、開催地となる東京では一日の新規感染者数が1,000人を超えるなど、7月現在も深刻な感染拡大が続いている状況にある。今回は、こうした異例の状況下で開催されることへの様々な意見や懸念について調査するため、アンケートを実施したとのことだ。
なお、同アンケートの実施時(6月29日~6月30日)は、東京都、大阪府、北海道、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県の7都道府県にまん延防止等重点措置が適用されていた期間であり、制限付きで酒類提供の停止が解除されていた。
また当時、東京オリンピック・パラリンピック会場における観客の動員に関しては未定であり、現在(7月下旬)の状況とは異なるとしている。
88.9%の飲食店が協力金を「申請済み」も、4月分以降をいまだ受給できない店舗が多数
最初に、2021年5月の経営状況について、コロナによる影響を受ける前の2019年同月と比較してもらったところ、「2019年5月より70%以上減った」との回答が最も多く、37.8%。
次いで、「50%減った(10.5%)」、「60%減った(10.3%)」と続き、この結果から、飲食店の58.6%が「2019年同月より50%以上減った」と回答したことがわかるという。
4月の売上について同様の調査を行った際は、「2019年同月より50%以上減った」との回答が52.1%だったことから、飲食店への長引く時短営業や酒類提供の停止要請などが、深刻な売上の低迷をもたらしていることは明らかであるとのことだ。
次に、これまで営業時間短縮要請に伴う感染拡大防止協力金の申請をしたことがあるか聞いてみると、9割近くが「申請したことがある(88.9%)」と回答。
さらに「申請したことがある」と回答した人に対し、現時点での協力金の支給状況について尋ねたところ、全国の最多は「2021年3月までの要請期間分が振り込まれている」で、36.8%。
次いで、「4月までの要請期間分(33.2%)」、「2月までの要請期間分(12.3%)」となった。
一方、都道府県別に見ると、埼玉県では「5月までの要請期間分(38.1%)」との回答が最も多く、支給スピードの速さが表れる結果に。
自治体の多くは要請期間終了からおよそ1か月以上かかって申請受付を開始するケースが多い中、埼玉県では常に要請期間終了の翌日から受付をスタートしており、こうした迅速な対応が功を奏しているものとみられている。
東京五輪開催の中止・延期を望む声は46.3%。「飲食店だけに自粛させるのは大きな矛盾」
こうした中、東京オリンピック・パラリンピックが開催されることについて、どう感じているか尋ねたところ、「中止するべき」との回答が29.3%と最多となった。
しかし、続く「賛成(22.8%)」、「無観客での開催なら賛成(18.4%)」を合わせると、41.2%は概ね賛成の意思を示していることもわかった。
なお、同アンケート実施時点(6月29日~6月30日)において、東京オリンピック・パラリンピック会場における観客の動員に関しては未定であったとのこと。
また、開催期間中の営業意向を複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「通常通り営業する(77.4%)」との回答。
次いで「自主的に時短営業を行う(13.7%)」、「テイクアウト販売、デリバリーを強化して営業する(7.1%)」と続いている。
また、通常通り営業するとしながらも、「アルコールの提供は自粛する」との回答もあり、各店舗で様々な営業のスタイルが検討されていた様子も見えてくるとしている。
なお、同アンケート実施後の7月12日から、一部地域に緊急事態宣言が発令(8月22日まで)。これにより7月下旬現在は、各地の飲食店に酒類提供の停止などが要請されている。
続いて、同アンケートに協力した回答者本人に、新型コロナウイルスの1回目のワクチンを接種したか聞くと、「まだ接種していないが、今後接種する意向(61%)」との回答が最も多く寄せられる結果となった。
続く回答は、「接種するか検討中(16.4%)」、「接種する意向はない(13.5%)」となり、ワクチンの接種に一定の懸念を抱いている人が少なからずいることも明白化された。
また、東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたり、店舗の営業を行ううえで最も懸念するのはどのようなことか尋ねたところ、感染の再拡大による様々な影響を不安視する声を中心に、以下のような回答が寄せられたという。
<回答抜粋>
人流増加、感染者増加による緊急事態宣言の再発令と、酒類の提供停止要請
・感染拡大すると思われるので、緊急事態宣言がまた発令されるだろう。またお酒の提供が出来なくなるのでは(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・感染状況の悪化による、緊急事態宣言の再発令。とにかく、アルコール販売停止だけは勘弁していただきたい(東京都/フランス料理/2店舗)
客足が落ちることによる売上の減少
・感染拡大による再緊急事態宣言や、まん延防止の時短営業要請で通常営業が出来なくなれば、売上減少が懸念される(埼玉県/フランス料理/1店舗)
・TV観戦による在宅時間の増加で需要が減少し、売上が低下すること(神奈川県/和食/3~5店舗)
節度を守らない客が増えること
・単に酒飲んで酔っ払って騒ぎたいだけの人々が街に溢れて、ルール無視で入店してくるかもしれないという懸念(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・お祭り騒ぎで、変にはしゃぐ人たちに巻き込まれないようにしたい(東京都/カフェ/1店舗)
外国人客の増加による諸問題
・海外からのお客様が、感染防止ルールを理解できずに守らないこと(東京都/中華/1店舗)
・海外からの来訪者による新たな変異株の発生(千葉県/カフェ/1店舗)
最後に、東京オリンピック・パラリンピックについて、今最も言いたいことを尋ねた結果、以下のような回答が寄せられた。
<回答抜粋>
■「開催するべきではない」との見解から
●中止または延期するべき
・飲食店には時短営業やアルコール提供を自粛するように要請したのに、オリパラならば安全安心で選手村や施設にはアルコールOKなどおかしい事ばかりです。今すぐオリパラは中止にすべき(埼玉県/フランス料理/1店舗)
●こうまでしてやる理由を明確に示してほしい
・開催するにあたって納得のいく理由(人命や国民の日常生活を犠牲にしてでも開催しなければならない理由)を説明してほしい(東京都/カフェ/1店舗)
●国民の安全を第一に考えてほしい
・国民の健康とオリンピック開催の意義を、今一度冷静に天秤にかけていただきたい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
■「開催自体は仕方ない」との見解から
●万全の感染防止対策を講じてほしい
・オリンピックで来日した人達をしっかり隔離し、外出の規制を徹底してほしい(神奈川県/カフェ/1店舗)
●開催会場は無観客の状態にするべき
・開催するのであれば、今の状況からして無観客でやるべき(東京都/フランス料理/1店舗)
一方、開催にあたって一定の理解を示す声のほか、諦めの感情を示す声なども見受けられた。
・東京オリンピック・パラリンピックが決まった時は、まさか誰もこんな状況になるとは思ってなかったと思います。今できる事を全うして、無事に開催して頂けたらと思います(神奈川県/ラーメン/2店舗)
・やるも地獄、やらぬも地獄。正解などどこにもないと思います(東京都/バー/1店舗)
【調査概要】
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:495名
調査期間:2021年6月29日~2021年6月30日
調査方法:インターネット調査