JTBは「夏休み(7月20日~8月31日)に、1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しをまとめたことを発表した。

今夏の旅行動向見通しについては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対する国の方針および東京2020オリンピック競技大会の観客受け入れ方針の発表を待ち、対象期間を7月20日~8月31日(例年は7月15日~8月31日)に変更し、国内旅行のみを対象としたという。

JTB

夏休みの国内旅行動向予測

夏休みの旅行を取り巻く環境と生活者の旅行意向

今年の夏休み期間中(2021年7月20日~8月31日)の帰省を含めた旅行意向の詳細をアンケートで調査。今年は、7月22日~7月25日が4連休、8月7日~8月9日が3連休となっている。なお、新型コロナの影響により、8月22日まで2都県が緊急事態宣言、4府県がまん延防止等重点措置の適用対象となっている(7月19日現在)。

期間中に旅行に行くかどうかについては、「行く(「行く」と「たぶん行く」の合計)」と回答した人は調査時点で19.8%となった。コロナ禍前の夏休みの旅行意向は概ね40%前後で推移していたが、今年は例年の半分程度とのことだ。

また、性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高くなる傾向が見られた。「行く(「行く」と「たぶん行く」の合計)」が29歳以下の男性は31.6%、29歳以下の女性は33.2%であるのに対し、60歳以上の男性は14.2%、60歳以上の女性は10.8%という割合の回答となった。

【上】期間中に旅行に行くかどうかについて
【下】年代別の旅行意向

旅行に行かない理由として、最も多く挙げられたのが「まだコロナの影響で、旅行することに不安があるから」で45.1%、次いで「コロナウイルス新規感染者数が減っているとは言えない状況だから」との回答が37.1%、「コロナ第5波が心配だから」という回答が31.1%となっており、新型コロナが大きく影響した結果となった。

一方で「治療薬やワクチンの接種が遅れているから」という回答は17.1%となっており、ワクチン接種が進むことで旅行意向が高まることが考えられるとしている。

今年の夏休み旅行に行かない理由

国内旅行人数はの推計は4,000万人、国内旅行平均費用は 33,000円

夏休み期間(7月20日~8月31日)の旅行に関しては、各種経済指標、コロナ禍における交通機関各社の輸送人員実績推移、移動データ、定点意識調査なども参考にし、国内旅行人数は4,000万人(19年比▲44.8%、20年比+5.3%)、国内旅行平均費用は33,000円(19年比▲9.6%、20年比+3.1%)、総額1兆3,200億円と推計している。

今年と昨年との旅行を取り巻く環境の違いとして、昨年は最初の緊急事態宣言が明け、6月末から県をまたぐ移動も再開されたものの、新型コロナへの警戒感が強く、初の感染再拡大への不安も重なり行動を自粛する様子がしばらくの間見られた。また、学校が休校となった影響で夏休み期間中に補講を実施した学校も多かったため、旅行の計画を立てにくい状況となっていた。

一方で、7月22日から実施された観光支援策「GoToトラベルキャンペーン」の影響は大きかったものの、9月末まで東京都内の発着は対象外となり、夏休み期間の当キャンペーン利用人泊数は東京が加わった10月以降に比べると限定的と考えられていたとのことだ(観光庁データによる)。

今年は、東京都と沖縄県に緊急事態宣言が発出されているが、JR各社や航空会社の利用実績から大幅な減少は足元では生じていないとしている。

また、今年はGoToトラベルキャンペーンに代わる県民割などの「地域観光事業支援」が35県(7月17日時点)で実施されている。感染拡大が抑えられている地域を中心に、地域内旅行が活性化していると考えられるという。

意識調査では、旅行者の意識は、当初は「新型コロナが終息したら旅行を再開したい」と考える割合が高く、過去のパンデミックのように短期終息への期待があったものの、コロナ禍が長引くにつれて、安心安全に配慮しながら旅行を再開したいという傾向に移ったという。

以上を勘案すると、今夏の国内旅行者数は、一部地域においては抑制がかかるものの、昨夏を上回ることが予測されるが、大きく回復に転じているわけではないと言えるとのことだ。

旅行費用については、域内旅行志向による平均泊数の低下、および将来不安による旅行費用の抑制傾向が見られる一方で、多少割高でも新型コロナの感染防止を優先する傾向と、観光・地域応援と連動した旅行先での食事やお土産の購入等から、一人当たりの平均費用(単価)は前年を上回ることが予測されるという。

JTBの予約状況による旅行のピークは、7月の4連休開始日となる7月22日で、次いで7月23日となっているとのことだ。

夏休みの旅行はこれまでと同様に、感染予防を意識した「新常態の安近短」傾向

なお、今回のアンケートの事前調査で「今年の夏休みに旅行に行く/たぶん行く」と回答した1,030名を抽出し、旅行の内容について詳細を聞いたところ、旅行日数は「1泊」が41.9%と最も多い結果に。

次いで「2泊」が29.66%、「3泊」が15.3%となった。3泊までの旅行が全体の86.8%を占めており、コロナ禍前の2019年は84.3%で、2.5ポイント上昇し、短期傾向は強まっていることがうかがえる。

同行者に関しては、「夫婦のみ」が最も多く25.6%、次いで「子供づれ(中学生までの子供がいる)の家族旅行」で22.4%という結果となった。また、「ひとり」の回答は20.3%で、コロナ禍前の2019年は13.4%だったため、6.9ポイント増加となった。

感染防止や周囲への配慮などもあってか、ひとりで旅行に行く人は増えているという。

【左】旅行荷日数【右】同行者

旅行目的や動機は「帰省、離れて住む家族と過ごす」が最も多く、21.5%。次いで「温泉でゆっくりする」が17.4%、「自然や風景を楽しむ」が10.7%となっており、この傾向は2019年と変わりないとのことだ。

一方で「ハイキング、登山、キャンプ等」は2019年と比較して、2.3%から6.2%と3.9ポイント上昇する結果となった。

旅行の目的や動機

旅行先に関しては、居住地別の旅行先から、マイカー等使って気軽に行ける近場の傾向が見え、引き続き全国的に旅行先と居住地が同じ域内旅行の割合が高いという。

その地域を選んだ理由としては高かったのは、「行きたい場所があるので」という回答が30.6%、「帰省先なので」という回答は22.6%、「泊まりたい宿泊施設があるので」の回答が15.1%であった。

【上】居住地域別の旅行先
【下】旅行先を選んだ理由

一人当たりの旅行費用については「1万円~2万円未満」との回答が26.3%で最も多く、次いで「2万円~3万円未満」で18.9%、「1万円未満」が15.3%となっており、3万円未満が全体の6割を占める結果となった。

利用交通機関に関しての回答は「乗用車・レンタカー」が70.0%で最多。次いで「JR新幹線」で16.33%、「JR在来線・私鉄」が15.2%という割合に。

コロナ禍前の2019年と比較すると、「乗用車・レンタカー」は9.6ポイント増加し、「JR新幹線」「JR在来線私鉄」の合計(31.5%)は7.4ポイント減少。公共交通機関より乗用車・レンタカーを利用する傾向が見られたとのことだ。

【左】一人当たりの旅行費用【右】利用交通機関

利用宿泊施設は「ホテル」が43.1%で最も多く、次に「実家や親族の家」で26.1%、「旅館」が25.0%となった。ホテルはコロナ禍前の2019年(48.8%)から減少傾向となった一方、「実家や親族の家」と「友人・知人の家」の合計(29.5%)は、2019年(25.9%)から3.6ポイント増えているという。

また「キャンプ場・グランピング・キャンピングカー・車中泊など、アウトドアに関する宿泊(7.5%)がGWに引き続き一定のボリュームを有する結果となった。

利用宿泊施設

感染症を予防しながら過ごせる、自然を楽しめる場所が高い人気

今年の夏休みに出かける場所として、気になっているところに関する調査も行った。

最も多かった答えは、「自然が楽しめる場所(国立公園や花畑など、景色を楽しむ)」という回答で30.1%。次いで「自然が楽しめる場所(登山や海水浴など、体験を楽しむ)」が28.0%と、感染症を予防しながら過ごすことのできる、自然が楽しめる場所が高い人気であることが伺える。

なお、コロナ禍前から人気の高い「花火大会」が12.8%、「動物園や水族館」は12.8%という結果となった。

今年の夏休みに出かける場所として気になっているところ

JTBの宿泊・国内企画商品の予約状況は、地域により差があるものの、東京を除いたGoToトラベルキャンペーンが実施されていた2020年より+5%増加しているという。

一方で、2019年比でみると▲65%と低調となり、方面別に見ると、比較的感染の落ち着いていて県民割などの「地域観光事業支援」策が後押している九州で+55%、新潟佐渡は+50%、伊勢志摩が+35%、南紀は+30%と好調に推移しており、引き続き感染拡大に留意した近場の旅行が多数を占めているとのことだ。

次の旅行の予習として広がるオンラインツアー

新型コロナの感染拡大をきっかけに新たに広がった旅行・観光の動きの1つに「オンラインツアー(ウェブ上で行われる旅行)」がある。当初はバーチャルな旅行体験がリアルな旅行を阻害するのではと考えられていたが、各種調査から競合するものではなく、むしろ旅行前に現地の人々と交流を持つことでリアルな旅行への関心が高まることが分かっているという。

夏休みの旅行予定者にオンラインツアーについても調査を行ったところ、これまでにオンラインツアーに「参加したことがある人」は9.2%、「参加したことはないが、興味があるまたは参加したい人」は22.3%、「参加していないし、興味もない」人は68.5%という結果となった。

オンラインツアーに関する調査

オンラインツアーに関しては、ウェブ上での観光地の見学に終わらず、地場産品のお土産がついていたり、一緒に料理体験をするなど体験もできる多彩な内容も増えてきているという。

今後オンラインツアーに参加する場合の重視する条件について聞いたところ、「参加費(無料または低価格)」が15.2%で最も高く、次いで「映像の美しさ」が8.8%、「方面や行く場所の珍しさ・トレンド感があるかどうか」は4.5%という割合になった。

オンラインツアーで重視すること

現状では割合が小さいものの、「参加していないが、リアルな旅行は体力的に難しく、オンラインだと遠い場所に行けるので参加したい」や「参加していないが、予習旅として旅行に行けるようになったら参加したい」と考える声もあり、実際に行く旅行とは異なる役割がオンラインツアーに期待されていることが分かるという。

オンラインツアーは新型コロナ収束後も、旅行先に関する情報収集等の「予習旅」として、また地域が旅行者とつながり続けるための接点づくりとして新たな地位を築き始めていくとのことだ。

【旅行動向アンケート 調査概要】
調査実施期間: 2021年7月5日~7日9日
調査対象: 全国15歳以上79歳までの男女個人
サンプル数: 事前調査10,000名 同調査1,030名
(事前調査で「夏休みに旅行に行く/たぶん行く」と回答した人を抽出し同調査を実施)
調査内容: 2021年7月20日~8月31日に実施する1泊以上の旅行(商用、業務等の出張旅行は除く)
調査方法: インターネットアンケート調査
※同調査は、2021年7月12日に東京都の緊急事態宣言、4府3県のまん延防止等重点措置が発出される前に実施されたアンケートをもとに分析されている。

<参考>
JTB『2021年の夏休み(7月20日~8月31日)の旅行動向