日本映画製作者連盟は、「映画館」再開の要望について声明文を発表した。
現在、三度目の緊急事態宣言下におきまして、「映画館」は4月下旬より国および対象都府県による特措法に基づく休業要請を受け、5月12日以降の期間延長後は、国の方針では特措法施行令第11条1項4号の対象施設として一定の制約条件の下に営業再開が認められたところ、東京都、大阪府等の一部自治体において、より強い措置の継続が必要との理由から、「映画館」は引き続き休業要請の対象とされている。
こうした中、映画館運営各社をはじめとした映画業界は、感染拡大の危機を何としても食い止めるという社会的な要請に応えるため、苦渋の思いでこれに従ってきたとのことだ。
一方で、全国興行生活衛生同業組合連合会が5月11日付で「映画を愛する皆様へ」として発表した声明文の通り、東京都が国の方針と異なる施設区分を適用し「映画館」に休業要請を継続した根拠につき、合理的な説明を求めてきたが、これまでのところ納得いくような説明はまだないという。
また、「映画館」におけるクラスター発生のエビデンスはなく、「人流の抑制」という観点からも、他の集客施設やイベント等と比較して特段その効果が異なるとは考えられず、業界関係者のみならず一般の人からも、「なぜ映画館だけが」と、今回の措置に対する平等性への疑問が生じているところであるとのことだ。
映画産業は「興行」「配給」「製作」が三位一体で構成されており、「映画館」は、製作者にとって作品発表の場であるだけでなく、投資資金の回収のための最も重要な場である。
「映画館」が長期間休業することは、それを運営する事業者だけでなく、作品を配給する事業者や映画を製作する事業者およびクリエイター等にとっても死活問題と言えるとし、東京都と大阪府だけでも、全国の映画館市場のシェアの35%程度を占有する最大のマーケットであり、そこでの上映ができないことは相応の収入減を意味するとしている。
さらに、こういった状況下での上映を回避するため、配給会社が公開時期の延期を決定するケースも相次いでいるが、その場合は既に投下した宣伝経費等が水泡に帰すことに繋がるという。
また、このような状況が長く続けば作品の製作そのものを延期または中止するケースも想定され、そうなると製作会社のみならず、フリーランスのスタッフをはじめ多くの製作関係者の生活に多大な影響を及ぼすことになる。
このように「映画館」の休業は、「興行」だけでなく「配給」「製作」その全てに携わる者が大きな経済的損害を被ることになるとのことだ。
なお、同声明文にて、今回の休業要請に関し、国および自治体から規模に応じた「協力金」を拡充して支給すること、また、映画配給会社に対しても一定の配慮をすることについては、感謝を述べている。
しかし、同業界に限ったことではないと思われるが、本来得られたであろう収入と比べれば、これらは比較にならないほど少ない金額にしかならない。
また、映画業界の中でも「製作」の現場に対しては十分な支援が有るとは言えず、今後も関係各所に理解を求めるべく懇願していくとのことだ。
1年以上にわたる新型コロナウイルス感染拡大は、映画業界全体に深いダメージを与えており、何よりも一刻も早い「映画館」の営業再開による事業活動の正常化こそが求められているとしている。
以上のような厳しい業界の現状を広く関係各位に理解してもらうとともに、現下の感染状況に鑑み緊急事態宣言のさらなる期間延長の可能性が報道されていることから、映画産業に携わる全関係者を代表して、日本映画製作者連盟として、以下の通り、強い危機感を持って要望するという。
①映画館はクラスターが発生していないことも踏まえ、感染症対策に万全を期すことを前提に、6月1日から営業を再開するよう要望
②各自治体に対し、感染状況に応じて、「映画館」の利用にやむを得ず制限をかける場合には、政府の基本的対処方針に沿った扱いをし、「映画館」を不平等に取り扱うことのないよう要望