東京電力ホールディングス(以下、東京電力HD)、ブルーイノベーション、テプコシステムズの3社は、『送電線点検用ドローン自動飛行システム』を開発し、東京電力パワーグリッド(以下、東京電力PG)は、同社が保有する送電線の点検業務に、同システムを6月より導入すると発表した。

同システムは、ブルーイノベーションが開発したBlue Earth Platformをベースに、テプコシステムズ、東京電力HDの3社が共同開発したもの。

同システムを導入する東京電力PGでは、従来、送電線の点検作業は主に高倍率スコープやヘリコプターなどを用いて目視で行っていたが、一般的なドローンにも搭載可能な対象物検知センサーで送電線を検知し、カメラを搭載したドローンが自動飛行しながら、最適な画角で送電線の異常(例:腐食、劣化など)などを撮影することで、点検作業の大幅な効率化とコスト低減を可能にしたとのことだ(特許出願中)。

【ドローンによる点検風景】

■地上の送電線点検の課題

東京電力PGが保有する地上の送電線は28,391km(全国では151,862km)あり、点検作業は主に高倍率スコープ・ヘリコプターなどを用いて目視で行っているという。

目視点検は膨大な作業時間と作業員の高い技能に支えられており、少子高齢化にともなう将来的な作業員の不足、設備の高経年化による点検数増加への対応などが課題であるとのことだ。

今までも、点検作業の効率化やコスト低減を目指し、ドローンの自動飛行による点検が検討されてきたが、実用化に向けては以下の技術的課題があったという。

  • ドローンが送電線に近づくと、電線から生じる磁界の影響により方角を正しく認識できなくなり、機体の制御が不安定になる(送電線とドローンの距離を常に一定に保ち、自動飛行する技術が必要)
  • 電流値・気温・風などの影響により、電線の形状が変化するため、電線の形状をあらかじめ予測し、電線に沿った飛行ルートを事前設定することが難しい(飛行ルートをリアルタイムに自動設定・調整する技術が必要)

こうした課題を解決すべく、送電線の位置を検知する対象物検知センサー技術、ドローンと送電線との距離を一定に保ち飛行する制御技術、送電線をブレなく撮影するための振動制御技術などを共同開発。

加えて、現場の作業員が使いやすいよう、送電線撮影に特化したアプリケーションも開発したとのことだ。

■飛行環境の変化に左右されずに送電線に沿って飛行可能
同システムに搭載されている対象物検知センサーは、画像解析による送電線の検知とは異なり、逆光や影、類似する構造物の影響を受けず、正しく送電線を検知できるという。
鉄塔間距離365mの実証実験でも、画角を外さずに送電線と平行に飛行・撮影できることが実証されている。

<対象物検知センサー搭載ドローン>
上部に取り付けられたモジュールが送電線の検知および機体・振動の制御を行う

■ワンクリックの簡単操作
専用アプリケーション上のワンクリックで、ドローンの離発着および送電線撮影を自動で行う。

システム運用画面

■撮影映像をその場で確認可能
自動飛行のため、作業員はドローンを手動操縦する必要がなく、ドローンからリアルタイムに送られてくる送電線の映像確認に集中できる。気になる箇所があれば、その場でドローンを一時停止させ、カメラをズームして送電線の状況を詳細に確認することができるとのことだ。

ドローンによる撮影映像