日本電信電話(以下、NTT)と富士通は、「持続可能な未来型デジタル社会の実現」を目的とした戦略的業務提携に合意したと発表した。

この提携を通じて創出されるイノベーションにより、IOWN構想に賛同する幅広いパートナーとグローバルかつオープンに連携し、低エネルギーで高効率な新しいデジタル社会の実現をめざすとしている。

1.両社で共有するビジョン

社会や産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、ウィズコロナ/アフターコロナにおいては、ソーシャルディスタンスの確保などを前提とした分散型社会にシフトしていくことが考えられる。

それらを支えるICTシステムには、人、モノ、バーチャル空間から生み出された膨大なデータをつなぎ、リアルタイムに処理するため、通信のさらなる高速大容量化や、大幅な計算リソースの強化が求められるとのことだ。

こうした動きは世界各国で共通しており、これらの実現に向けて様々なプレイヤーが同分野での技術開発を活発にし、グローバルな事業活動を展開。

一方で、気候変動問題や、格差の拡大など社会の様々な歪みが顕在化し続けており、企業としても、これらの社会課題の解決と経済性を両立させた持続的な成長をめざさなければ、事業を継続できないという認識が世界中で広まっているという。

こうした中、NTTは「”Your Value Partner”として、事業活動を通じてパートナーの皆さまとともに社会的課題の解決をめざします」というグループビジョンの下、世界に変革をもたらす革新的な研究開発を推進しており、具体的には、社会に多彩なサービスを生み出す基盤をつくるためのビジョンとして、IOWN構想を打ち出し、世界のパートナーとともに、ゲームチェンジを可能とする技術開発などを通じたイノベーションに取り組んでいる。

富士通は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパス(社会における存在意義、企業活動を行っていく目的)と定め、テクノロジー企業として、世界中のお客様とともに豊かで夢のある未来の実現をめざしているという。

2.業務提携の概要

今回の業務提携では、世界有数の特許数を誇る光技術をはじめとした通信技術や運用ノウハウと世界一のコンピューティング技術など、両社の強みが活かせる分野において共同研究を進め、その成果を活用したグローバルなオープン・イノベーションを通じて、低エネルギーで高効率、かつ持続可能なデジタル社会を実現することで、両社で共有するビジョンの具現化をめざすとのことだ。

具体的な取り組みは以下の通り。

【1】光電融合製造技術の確立

NTT R&Dの先端デバイス技術を活かしたハードウェア製品を開発する、NTTエレクトロニクス(以下、NEL)は、半導体実装技術を有する富士通アドバンストテクノロジ(以下、FATEC)の66.6%の株式を富士通から6月1日に取得。

FATECは、NTTエレクトロニクスクロステクノロジ(以下、NTTエレクトロニクスクロステクノロジ)として2021年6月1日より事業を開始。

NTTエレクトロニクスクロステクノロジは、デジタルコヒーレント光通信用LSIおよびシリコンフォトニクス技術によるCOSA(Coherent Optical Sub Assembly)を一体化した、光電融合技術を用いた小型で省電力な、高性能光通信用コパッケージを2022年度内に提供開始。通信の高速大容量化と、電力消費量が懸念となる光ネットワークの省電力化に寄与するという。

また、Beyond 5G時代向けに、超高速で小型かつ低コストな光電融合デバイスおよび基地局に搭載するためのアーキテクチャーを両社で検討し、富士通の基地局をはじめとして幅広く提供することをめざすとのことだ。

今後、光電融合技術を、コンピューティング向け半導体など、様々な用途に拡大することで、低エネルギーで高効率なICTシステムの実現をめざしていくとしている。

【2】通信技術(光通信およびモバイル)のオープン化の推進

NTTと富士通は、新たなデジタル社会を支える多様で革新的な情報通信サービスが生み出される環境をめざす。通信機器市場における特定ベンダに依存する垂直統合モデルからの脱却、そしてホワイトボックスや汎用ソフトウェアをマルチベンダで対応するオープン化の取り組みを推進。同提携により加速する。

なお、光通信では、NTTと富士通は、アーキテクチャーのオープン化を前提とした、新たな光デバイスの企画から、システム製品の開発、サプライチェーンマネジメントまでを共同で実施。

今後の需要拡大が見込まれ、オープンアーキテクチャーの採用が活性化しているデータセンター向けの通信市場へ戦略的に参入し、グローバルでの事業拡大をめざすという。

また、モバイルでは、Beyond 5Gに向けたモバイルシステムのオープン化に向けて、両社での技術開発やオープン化活動ならびに開発成果の事業展開を検討。

まずは、NTTドコモを中心に発足した「5GオープンRANエコシステム」などを通じて、様々なパートナーとともにグローバルに展開可能な技術などの開発を行うとのことだ。

例えば、仮想化された無線基地局(vRAN)導入拡大の課題であるパフォーマンス向上の対策や、無線アクセスネットワークを最適化する制御技術の開発などに取り組む。

そして、NTTは、それらの開発された技術を用い、5Gの本格展開に向け、モバイルネットワークの基盤を高度化。両社の連携によって開発された機器は、「5GオープンRANエコシステム」などを通じて、グローバルに通信事業者への展開を図っていくとしている。

これらの活動は様々なパートナーとオープンに取り組む。NTTと富士通は、それらに積極的に参加し、生み出された研究成果を光通信/モバイルの事業で活用することで、グローバルでの市場拡大をめざしていくとのことだ。

【3】低消費電力型・高性能コンピューティング(ディスアグリゲーテッドコンピューティング基盤)実現に向けた共同研究開発

NTTと富士通は、高速化や省電力化に課題のある従来のコンピューティングアーキテクチャーを抜本的に見直し、使用用途に応じて多様なハードウェアをソフトウェアで柔軟に組み合わせて活用することで、高速かつ高効率なデータ処理を行うディスアグリゲーテッドコンピューティングの技術の実現に向け、研究開発に取り組んでいくとしている。

具体的には、NTTが研究開発中の光電融合技術と、スーパーコンピュータ「富岳」などにも活用された世界最先端の富士通のコンピューティング技術を組み合わせることで、革新的なコンピューティング技術を開発。

同技術により、リアルワールドの多種多様なデータを安全に結び付けて、様々なパートナーが価値を創出するサービスを効率よくスピーディーに実現できるだけでなく、電力効率を最大化し、持続可能な社会に貢献することをめざすとのことだ。

NTTと富士通は、今後もIOWN構想のビジョンに資する持続可能な未来型デジタル社会を実現するため、グローバルに様々なパートナーとオープンに共同研究を推進していく。

NTTでは、同提携を通じて培った知見・技術を活用した、革新的なスマートソリューションとICTプラットフォームを創造し、インクルーシブで、安全かつ柔軟性の高い、持続可能なコミュニティを実現していくという。

富士通では、IOWN構想や6G時代の技術開発を目的として、「IOWN/6Gプラットフォーム開発室」を2021年4月1日に新設し、研究開発を本格化。同提携を通して得られた成果を人々の暮らしや社会に役立つソリューション・サービスやプラットフォームに活用し、製造業や流通・小売、医療などの幅広いユーザーに向け新たな価値の提供をめざすとのことだ。

今後も、両社は同提携のもと、さらなる取り組みの具体化を協議していくとしている。

3.各社の役割

NTT:
IOWN構想の実現に向けた研究開発・社会実装

富士通:
光通信・モバイルシステム・コンピューティングに関する技術開発、成果の社会実装