NTTは、通信電波による端末測位情報を活用した基地局切り替え制御技術を考案し、60GHz帯無線LAN(WiGig)、最高時速300kmのフォーミュラカーを用いて実証したと発表した。

実証実験は、2020年12月22日~23日に富士スピードウェイで開催された「全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同テスト・ルーキーテスト」で、レーシングチーム「DOCOMO TEAM DANDELION RACING」、NTTドコモ(以下、ドコモ)およびドコモ・テクノロジの協力の下、実施。

考案した制御技術はWiGigが通信電波から端末方向・距離の測位情報を取得できることを活用しており、この測位情報を基に、端末へ接続先の基地局の切り替えと切り替えタイミングを指示する基地局切り替え制御技術の実証実験を行ったという。

実験の結果、時速300km(計測ポイント)の走行中で、上りスループット1[Gbit/s]以上のまま、500[msec]以内に接続基地局を切り替えることに成功。

これにより、WiGigなどソフトハンドオーバ機能を備えない無線伝送システムでも、下記ユースケースへの活用が期待できるとしている。

  • 車のドライブレコーダやエンジンデータなど移動体センタデータを、ゲート、交差点など通過時に地上側へ一括転送
  • イベント時や工事現場など、ドローンやロボット、移動中継カメラなどのローカルエリアでの移動体映像データを地上ネットワークへ転送

実際の高速移動環境の大容量無線伝送において、通信電波を用いた測位による基地局切り替え制御技術を実証したことは世界初であるとのことだ。

なお、今回の実験は、WiGigなどソフトハンドオーバ機能を持たない無線伝送システムでも、車・ドローンなど高速移動体に対して高精細映像データなどの大容量無線伝送を適用できる可能性を示したもの。

また、今回検証した技術は、将来的には、Beyond 5Gに向けたミリ波・テラヘルツ波帯におけるセンシングと制御の融合にも水平展開できる可能性のある技術であるとのことだ。

今後は、今回の実証実験結果を活用し、様々な利用環境で安定した無線伝送を実現するための技術検討を進めるとし、同技術では今後のBeyond 5G時代に活用が期待されるミリ波・テラヘルツ波帯無線伝送システムへの適用検討も進めていくとしている。

なお、今回の成果は、2月4日から7日に、ドコモが開催する「docomo Open House 2021」に出展予定であるとのことだ。