ウェザーニューズのグローバルアイスセンターは、2020年の北極海の海氷に関するまとめを発表した。

北極海航路の開通期間および2020年9月13日(年間最小日)の海氷分布 (左)北東航路、(右)北西航路

2020年は初夏の頃から北極域の各地で異常な高温が続いたことで、海氷の融解が進んだ。

コロラド州立大学によると、北緯70度以北における平均気温は、5月、7月、8月観測史上最高、6月は観測史上2番目の高さを記録したという。

また、ロシア極東に位置するベルホヤンスクでは、6月に約38℃という観測史上最高気温が観測されている。

この高温域は北極海ロシア沿岸にも広がり、そこに広がっていた海氷の融解を早めたとのことだ。

また、7月には北極海上でも高温傾向が強まり、スバールバル諸島のロングイェールビーンにおいては1979年の観測開始以降最高気温となる21.7℃を観測。

このような北極域の高温によって、海氷域面積は9月13日に年間最小値355万km2まで縮小したという。

これは、北極海上で発生した巨大な低気圧の影響で最小となった2012年8月の記録に次いで、1979年の観測開始以来2番目に小さい年間最小面積となる。

2012年以降の海氷域面積の推移/北極海の海氷域面積の記録

北極海航路の開通については、今夏はロシアに接するラプテフ海・東シベリア海で海氷の融解が例年以上に早く進んだ結果、8月2日には北東航路(ロシア側)が史上最速で開通。

同社が2017年に独自に打ち上げた超小型の気象・海象観測衛星「WNISAT-1R」で8月1日に撮影された画像では、北極海ヴィルキツキー海峡周辺の海氷がないことを確認することができたという。

開通状態は10月28日まで続き、通算開通日数は88日間でこれまでの最長に。北西航路(カナダ側)については、カナダ多島海において海氷が残るエリアがあったため開通しなかったとのことだ。

2020年3月3日(年間最大日)の海氷分布/2020年9月13日(年間最小日)の海氷分布

近年、北極海で生産された液化天然ガスのLNG船による輸送が活発になっているほか、北極海航路の定常的な利用が進んでいます。アジアから欧州へ航行する場合、北極海航路の航路距離はスエズ運河経由の約2/3、喜望峰経由の約1/2となるため、航海を通じて輸送費用だけでなく、CO 2の排出量も削減することができるという。

同社は2011年より、北極海を航行する船舶の安全運航を支援する「Polar Routeing」サービスを提供している。

2020年は6航海をサポートし、船舶がスエズ運河経由で航行した場合と比較して、約3600t-CO2(25mプール3600杯分の体積に相当)の排出量の削減に貢献したとのことだ。