富士フイルムは、新型コロナウイルス抗原検査キットの開発を開始した。
写真の現像プロセスで用いる銀塩増幅技術を応用した「銀増幅イムノクロマト法」により、迅速かつ高感度検出が可能な新型コロナウイルス抗原検査キットの早期実用化を目指すという。
なお、検査キットの開発にあたり、横浜市立大学より新型コロナウイルス抗原を検出できる抗体の提供を受けるとのことだ。
8月28日に政府が公表した「対策パッケージ」において、季節性インフルエンザとの同時流行に備え、新型コロナウイルスの検査の拡充について、簡易な抗原検査を1日平均20万件程度とするとされている。
抗原検査は、迅速に検査を実施でき、その場で結果を確認できるというメリットがあるが、PCR検査に比べて感度が低く、その高感度化が求められている。
富士フイルムは、2011年から独自の銀増幅イムノクロマト法を用い、インフルエンザなどの感染症を対象とした「感染症迅速検査装置」および専用試薬を販売している。
発生初期などのウイルスや細菌の量が少ない状態でも検出でき、15分以内と短時間で判定結果が得られる高感度な抗原検査システムとして、多数の医療機関使用されている。
さらに、近年では銀増幅イムノクロマト法を応用した目視で検査可能な装置不要の「結核迅速診断キット」を欧州薬事へ適合。
尿を検体とし微量な結核菌特有成分を目印となる標識と結合させ、その周りに大きな銀粒子を生成させることで、高感度検出を実現しているという。
現在、開発途上国への供給に向けてWHOの推奨を取得するための臨床評価を各国の研究機関にて実施しているという。
今回同社は、新型コロナウイルスの抗原に対しても、銀増幅イムノクロマト法を応用することで抗原検査の高感度化が可能なことを確認したとのことだ。今後、検体中の新型コロナウイルス抗原の有無を迅速かつ、高感度に検査可能な抗原検査キットの開発を進めるとしている。
富士フイルムグループは、これまでPCR検査用試薬や、全自動で簡便・迅速なPCR検査が可能な全自動遺伝子解析装置「ミュータスワコー g1」用の検査試薬を供給し、新型コロナウイルス検査の迅速化に貢献してきた。
今後も医療現場のニーズに応える幅広い製品・サービスの提供を通じて、新型コロナウイルス検査の効率化と医療の質の向上に貢献していくとしている。