真実の愛を見つけるため、ひとりの男性が複数の女性をふるいにかける婚活サバイバル番組『バチェラー・ジャパン』。甘く、時には残酷に繰り広げられるリアルな闘いが話題を呼び、シーズン3までシリーズ化されている。

そんな『バチェラー・ジャパン』に出演し、3代目のバチェラーとなった友永真也氏。貿易会社を経営する傍ら、2020年7月にペット関連の事業を立ち上げたばかりの青年実業家だ。

多数の女性と友好な関係を築く必要がある『バチェラー・ジャパン』の環境は、ビジネスに通ずるところがあるだろう。ビジネスにおいても、ステークホルダーとの信頼関係を築かなければならないからだ。多くの関係者と接点を持ちつつ、スピーディに事業を進めるには、コミュニケーションが要となる。

そこで、実業家としての友永氏に、ビジネスでの対人戦略について訊いてみた。これまでの友永氏の人生を振り返りながら、コミュニケーションの価値観を探っていく。

本音を大切にし、自分に嘘をつかない。コミュニケーションにおける価値観の源泉

中学生・高校生時代の6年間はフランスに留学、2015年にはフランスに関する貿易会社を立ち上げた友永氏。『バチェラー・ジャパン』では、ラストローズセレモニー後の結末こそ話題を呼ぶ結果となったが、真実の愛を見つける過程では一人ひとりの女性と真剣に向き合った。

そんな友永氏は、どういったコミュニケーションの価値観を持っているのだろうか。

友永「これまで、本音でのコミュニケーションを大切にしてきました。他人の目を気にして我慢するよりも、自分が心から打ち込めることをやりたい。自分に嘘をついて後悔するよりも、本心でぶつかっていきたい、と過ごしてきました。

だから『バチェラー・ジャパン』に出演したときも、カメラの前でしか女性に会えない特殊な環境のなか、限られた時間で、とにかく本音で話そうと意識していました。初対面の女性にも直球でコミュニケーションを取らないと、本気で結婚相手を探しにきているのに、相手の本質を探れないんです。

本音で生きて、いろんな方にご迷惑をおかけする場面もありました。当時のことは反省をしつつ、自分が後悔しない生き方を大切にしています」

こうした価値観が生まれたきっかけになったのは、学生時代を過ごしたフランスだという。友永氏を受け入れたホストファミリーの考え方は、友永氏自身の価値観に大きな影響を与えた。

友永「僕は、日本人特有の『はっきりしない』曖昧な性格を持ち合わせていました。関係性が壊れるのを恐れ、忖度し、中間的な答えを出す。“長い物には巻かれろ”精神で、自分の意思に反した行動をする。自分の気持ちに嘘をつき、苦しんだこともありました。

そんな僕に、ホストファミリーは『自分の気持ちに正直になりなさい。YESと即答できないとき、心のなかはNOと言っているよ』と教えてくれたんです。この言葉が、今の僕を形作った原点になっていますね」

フランス留学を経て、ホストファミリーの影響を受け、本音でぶつかろうと考えるようになった友永氏。自分の心に正直に──。このスタンスのもと、友永氏は2020年7月から新しい事業をスタートさせた。

カッコつけず、等身大で。取引先と良好な関係を作るコミュニケーション

友永氏が自分の本音に耳を傾けて生まれた事業が、ペット医療情報共有サービス「エターナルファミリー」。ユーザーが自身のペットの医療体験や経験談を掲示板に書き込み、その他のユーザーがそれに対してリアクションをしたり情報教え合うことができるコミュニケーションプラットフォームだ。「エターナルファミリー」は専属の獣医師が監修しており、投稿に対して識者からのアドバイスも受けることも可能になっている。

友永「自分がやりたかったことは何だろう、とずっと考えていました。そこで答えが出るきっかけになったのが、2年半前の『ガンになった愛犬との別れ』だったんです。

当時、放射線治療・薬治療・何もせず見守るという3つの選択肢があり、いちばん助かる可能性が高いと担当医に言われた放射線治療を選びまして。でも、僕の期待は虚しく、愛犬は息を引き取りました。

今でも、違う選択肢を選んでいれば、と思ってしまいます。もし薬治療を選んだ人の経過を知れたのなら、治療方法を切り替えて、結果が変わったかもしれない。でも、選択肢を広げるには情報が少なすぎました。

そんな悲しい経験が僕の心を苦しめていて『ペットの治療体験談が集まるサービスを作ろう』と決めたんです。ペットを助けたいと願う人たちの選択肢を増やし、ペットを救えるようなサービスにしたい。そして、僕と同じく、ペットロスに陥っている人たちの心を癒やす場でもありたいと思っています」


友永氏の新規事業「エターナルファミリー

プロジェクトをスムーズに進め、事業を成功に導くためには、ビジネスパートナーとの信頼関係がポイントになるだろう。「エターナルファミリー」は、もともと友永氏の取引先だった会社がパートナーとなり、作り上げられたサービスだ。友永氏は、ビジネスパートナーと良好な関係を築くときにも、自身の根源にある「本音」を大切にしているという。

友永「ビジネスパートナーとのコミュニケーションは、とにかくフランクに、友人のようなイメージで進めていきますね。お互いに等身大の自分を出して、心理的なキョリが近い状態でいられるように本音でいつも話すようにしています。

心理的なキョリを縮めるコツは、カッコつけないこと。会話では、カッコよく着飾った言葉よりも、相手に伝わる言葉を選んでいます。たとえば、横文字のビジネス用語は使わない。僕はビジネス用語がぜんぜん分からないんで、すぐにボロが出ちゃいそうですし(笑)。

難しい言葉を使い、相手の理解が追いつかないまま話を進めても、“共通言語”で話せていないので、中身のないコミュニケーションになってしまいます。心では分かりあえず、ただ表面上ニコニコ話しているだけ。そんなコミュニケーションに時間を使うなら、肩の力を抜いてフランクに、カッコつけずに本音でぶつかった方がいいと思うんです」

友永氏が話す、ビジネスパートナーとの良好な関係を築き方はもうひとつ。打ち合わせの前に、念入りに事前準備をしておくことだ。

友永「相手と話すうえでの土台を作り上げておくのも、コミュニケーションを取るうえで重要だと思いますね。相手に心から興味を持ち、相手の土俵(ビジネス)のことをしっかりとリサーチし、理解しておくこと。言うならば、初デートの前日と同じです。

前日の夜は『明日のデート、楽しくなるといいな』とざっくり考えていたらダメ。相手の好きなものを調べて、『待ち合わせして、イタリアンが好きらしいからあのレストランに行って、映画を見て、そのあとドライブして、ちょうど夕日が沈む時間に……』と細かくイメージしておくんです。

なぜ事前準備が重要なのか。その理由は、より深みのある話ができるから。当たり前の話ですが、相手の知識レベルが50だとしたら、僕の知識レベルが0の状態より、10でも上げて行った方が話がスムーズに進みます。

何も知らない状態で50レベルの話を出されても、『へえ〜、そんなのがあるんですね』で終わってしまう。でも、僕が10でもレベルを上げられたら、情報が違って聞こえるんですよね。頭のなかで情報を理解しやすいし、そのうえ自分の意見も出てくるようになります」

カッコつけずに言葉を選ぶこと、そして相手をしっかりリサーチすること。自身の源泉部分である「本音」に重きを置いたコミュニケーションは、ビジネスマンとしての友永氏のスタイルだ。

儲からなくてもいい。「救いになりたい」の一心で生まれた事業

「エターナルファミリー」は無料で利用できる掲示板サービスだが、マネタイズとしては、事業者からの広告費で収益化する。いずれは、本サービスの付加価値として、ペット用保険などを販売するECサイトをオープンさせる予定だ。しかし、友永氏は「収益化はあまり重視していない」と話す。

友永「この事業について先輩起業家に話すと、多くの人から『どうやって収益化するのか』と聞かれますが、儲かるビジネスモデルを確立させようとは思っていません。たとえビジネスにならなくても、ペット医療の情報を欲している人の救いになればそれでいい。

だから今は、サービスを持続できる最低限の収益化だけを考えています。本当に必要とされるサービスは、然るべき人に自然と届くはずで、サービスに価値をつけるのは僕たち運営側ではありませんから」

起業家・友永氏のスタンスは、目先の数字よりも情熱優先だ。一般的に、事業を展開するうえで目指すのは「収益化」だが、なぜ友永氏はパッションにこだわるのだろうか。

友永「僕も昔は、収益化を目的として、新規事業を展開することが何度かありました。しかし、どんなにビジネスモデルを練っても、計画通りにいかなかった。現実は、未来を予測できるほど簡単ではないんです。だったら、儲からないかもしれないけれど、必要とする人が確かに存在する、たくさんの可能性を秘めた世界を見てみたいと思いました。

『エターナルファミリー』は、僕の人生をかけた挑戦です。『僕がかつて欲しいと思ったから』『ペット医療の情報不足に苦しむ人がいるから』──。この強い思いを原動力にして、誰になんて言われようと、自分が納得できるスタイルで突き進みたい。これが今の僕の本音です」

価値観が変わったフランス留学、愛犬との別れ、真実の愛を見つける旅、等身大のすがたで関係値を築くビジネスシーン。自分に嘘をつかないスタイルで人とコミュニケーションを取ってきた友永氏の、集大成ともいえる事業の幕は開けたばかり。

「本音」から生まれたペットの医療情報共有サービスは、今後、ペットロスや情報不足に苦しむ人の救いとなるだろう。『バチェラー・ジャパン』とはまた違う、厳しくも優しいビジネスマンをした彼の一面が垣間見えた取材だった。

友永真也 tomonaga shinya
1987年神戸生まれ。実業家。中学・高校時代フランス留学を経て、甲南大学経営学部を卒業。2015年に留学時に培った語学力とネットワークを活かし、日仏を繋ぐ貿易会社を設立、経営。2019年にAmazon Prime Video 『バチェラー・ジャパン』シーズン3の3代目バチェラーとして番組に参加。大の動物好き。ペットの飼い主に寄り添う情報サービスサイトを7月にローンチ。

エターナルファミリー
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YouTubeチャンネル『しんめぐの日常』

文:柏木 まなみ
写真:西村 克也