テスコやユニリーバ、グローバル企業が推進するプラスチック削減の取り組み

世界最大の広告代理店WPPグループ。

その傘下にあるJWTはこのほど発表したレポートの中で、リテールコンサルティング会社MHE RetailのCEO、ジョージ・ワラス氏の「(リテール業界において)サステナビリティ(sustainablity)はこの12カ月間で、傍流からメインストリームになった」という発言を引用し、エシカル・コンシューマーの台頭にともない企業のサステナビリティ取り組みも広がりを見せていることを伝えている。

かつて「サステナビリティ」は国際機関や環境NGOなど限れたプレーヤーのみが使う言葉だったが、主要メディアやグローバル企業でも「サステナビリティ」という言葉とそれに関連する取り組みが実施されるようになってきている。

英国のスーパー大手テスコは2019年11月に、2020年末までにプラスチック使用を大幅削減することを発表。2018年同スーパーでは約18億個のプラスチックパックが使用されたが、2020年末までにその半分以上となる10億個を削減するという大胆な目標を設定したのだ。


グローバル展開する英スーパー大手テスコ

消費財大手ユニリーバも今後5年間でプラスチック使用量を半減させる計画を発表。P&Gやネスレも同様の計画を明らかにしている。

これらの取り組みは、特に環境意識が高いといわれるミレニアル世代やZ世代への訴求ポイントになり、「サスティナブル」なブランドイメージにつながることが期待されている。

実際、ユニリーバではサスティナブル・ブランド商品の売り上げは、そうではないブランドに比べ69%速い速度で拡大しているという。

このようにグローバル企業が行っているようなプラスチック利用の削減は、持続可能性へのコミットメントを示し、若い世代における認知度を高める有効的な方法といえるだろう。

一方「unconventional(前代未聞)」かつ「radical(急進的)」な方法で、サステナビリティへのコミットメントを示す企業が登場し、メディアや若い世代の注目を集めている。

過剰消費への反旗、セール期間に店舗を閉鎖し街の掃除、米アウトドア用品REIのコミットメント

米アウトドア用品店のRecreational Equipment(REI)は、セール期間における衝動買いを煽る行為や過剰消費に対し異を唱え、米国最大のセール期間といわれる「ブラックフライデー(11月末)」に敢えて店舗を閉鎖。2019年のブラックフライデーにおける閉鎖は5年連続での閉鎖となった。


Recreational Equipment サンディエゴ店

店舗を閉鎖するだけでなく、期間中の「クリーンアップ・ミッション」を通じて街なかの清掃も実施している。

日本ではあまり聞き慣れない企業名だが、REIは1939年に創業された老舗であり、従業員1万2,000人、会員1,800万人、売上高27億8,000万ドル(約3,000億円)の大企業。

同社のサスティナブルを意識したフィロソフィーや活動が米リテール業界や消費者に何らかの影響を与えているのは間違いないだろう。

米リテール業界で最も売り上げが見込めるといわれるブラックフライデーに店舗を閉鎖していることで、売り上げが落ちるのではないかと思ってしまうが、2003年以降売上高は右肩上がりで成長中だ。

セール期間の店舗閉鎖を開始した2015年の売上高は23億8,000万ドルだったが、2017年には26億2,000万ドル、2018年に27億8,000万ドルに拡大した。

REIのサスティナブル活動はこれにとどまるものではない。同社は「サステナビリティ」への取り組み強化を明言するとともに、アウトドア用品のレンタルプログラムと中古品マーケットプレイスに投資を行っている。

環境インパクトを意識する海外の若い世代の間では、新品ではなく敢えて中古を選ぶ消費者が増えており、中古品マーケットプレイスは拡大の一途だ。REIは今後もサステナビリティと事業成長を同時に実現していくことになるだろう。

ユニリーバのアラン・ヨーペCEOはBBCの取材で、サステナビリティと収益性は相反するものではないと述べているが、REIの事例はまさにそれを裏付けるものといえる。

「The Ordinary」などで知られるコスメブランド「DECIEM」も過剰消費に異論

セール期間の過剰消費に異を唱えているのはREIだけではない。「The Ordinary」などで知られるコスメブランド「DECIEM(デシエム)」も、ブラックフライデー期間にウェブサイトと店舗を閉鎖。同社インスグラムの投稿で、その理由を説明している。

その投稿には以下のメッセージが記載された。

「過剰消費は地球環境を脅かす最大の脅威の1つ。売り切れるかもしれないという恐怖を駆り立て、衝動買いを煽っている。

ブラックフライデーはもはや地球にとっても消費者にとっても恩恵をもたらすイベントとは呼べない。よって11月29日、弊社の店舗とウェブサイトを閉鎖することを決定した」。

同投稿には2万5,000近い「いいね」と3,600件を超えるコメントが寄せられた。

また同社は、スキンケアプロダクトの購買意思決定は、学習や教育によってなされるべきであり、衝動によってなされるものではないと強調。

ブラックフライデーにおける集中的セールの代わりに11月いっぱい全商品の価格を23%割り引く長期のセール期間を設けた。告知動画では「Please shop slowly」とのメッセージが強調されている。


「DECIEM(デシエム)」ニューヨーク5番街店

このほか全世界で数百万人の学生が参加した「グローバル気候変動ストライキ」の際に、サステナビリティへのコミットメントを示すために、店舗を閉鎖した企業も多数ある。

米アウトドア・アパレル「Patagonia」、英コスメブランド「Lush」、靴ブランドの「Allbirds」、スポーツアパレルの「Outdoor Voices」などだ。

冒頭で「サステナビリティ」がメインストリームになったと伝えたが、その広がり具合は国よってさまざまだろう。今後、すべての国における「新常識」になっていくのかどうか、注目すべき動向といえるだろう。

[文] 細谷元(Livit