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SNSが普及した今、モノの買い方は多様化している。
働き手として最もパワフルな年代と言っても良いミレニアル世代の女性たちはモノを買うとき、何を考え、どのように行動しているのだろうか。
株式会社LITMOREで女性に特化したマーケティングを行う代表取締役 市岡麻美 氏は、「ミレニアル世代は本質を見抜いてモノを選びとる」と語る。
今回は、ミレニアル世代女子の購買パターンを伺った。
PRは受け入れつつ、うのみにしない
──女性に特化したマーケティング支援をされていると伺いましたが、どのような活動をされているのでしょうか。
市岡:最近は、企業のInstagramを代わりに運営させてもらうお仕事が多いですね。ちょっと前まではブログが主流でしたが、最近は SNS が中心になっています。
──SNSに力を入れる企業は多いのでしょうか?
市岡:SNSを見ている人口だけでなく、インフルエンサーを参考にして商品を購入している人も多いです。なので、SNSに力を入れたいという企業は増えています。
──なぜSNSを参考にするのでしょうか。
市岡:口コミとか他人の評価を知りたいと思う人が多いからだと思います。一時はステマが話題になりましたよね。有名人が「これすごく良いよ!」って紹介しているけど実はPRだったとか。
でも今はSNSユーザーの目も肥えてきてPRと知りつつ見ている人が多いです。
──PRだとわかれば避けられてしまうイメージがありますが、実際どうなのでしょうか。
市岡:PRだと思いながらも新商品を知ることはできるので、参考として見ている人が多いですね。
弊社ではインフルエンサーマーケティングとして、インフルエンサーに商品を紹介してもらうことはあります。しかし、そのPRを見ている人は「〇〇さんが紹介しているから」とうのみにせず、ハッシュタグやTwitterで検索したりして、リアルな口コミを探してから購入しています。
広告やPRで商品を知ったら、実際はどんな商品なのか自分で検索して調べるというのが、今の消費の流れになっています。
本質を見てモノを選び取る人が増えている
──ミレニアル世代の女性はどのような心理でモノを購入するのでしょうか。
市岡:一昔前は「これを持っていることでステータスや権威の象徴になる」といった感じでブランド品を買う人が多かったのですが、今は自慢になるからと買う人は減りました。
ミレニアル世代は、素材はなにか、長持ちするか、機能性はあるか、などの視点でモノを買う人が増えましたね。
昔はデパートや高級ショップに心を動かされる人がたくさんいました。今もそういう人はいますが、数は少なくなっていると思います。その代わり無名のネットブランドなどがすごく流行っているんです。
それは、ブランド名で左右されず、モノ自体の良さを理解して選び取っているからだと思います。
──どうして今の世代はネームバリューで左右されないのでしょうか。
市岡:これはモノの選び方だけの話ではなくて……働き方で説明するとわかりやすいと思います。例えばムダが嫌いとか、快適に働けるかとか、本質を重視する人が増えているんです。
「上司に言われたからそうする」という人も減っていますよね。お酒の席は本当に必要なのかとか、一杯目はお酒って決まりは無くても良いのではみたいに、一旦自分で立ち止まって考える人が増えています。
今のミレニアル世代は昔からのルールにとらわれず「本当にそれは必要なのか」という視点を持っていると思います。
──それがモノの消費にも現れていると。
市岡:そうです。モノを購入するときも表面的に見るのではなく、合理的か本質的かなどに視点を向ける人が増えています。
合理的・本質的に考えることは、社会の成長としては正しい姿だと思うんです。時代の流れによってより正しい考え方に変わってきている、そんな気がしています。
ミレニアル世代の消費はリアルとネットを使い分ける
──実際ミレニアル世代の女性たちには、どのようなモノが流行っていますか?
市岡:実店舗を持たないネットブランドが流行っています。全体的にネットで服やモノを買う人が増えているんです。
──なぜネットショップで購入するのでしょう。
市岡:ネットでまとめ買いした方が安いんですよね。それに店舗に足を運ぶ手間もいらないし、安いから失敗しても問題ない。だめなら売れば良いよねって思考なんです。
もちろん実店舗で買うこともありますが、それはネットよりも単価が高いものが多いです。Instagramなどネットで目星を付けておいて、店舗へ行って試着して買います。
──ネットと実店舗を使い分けていると。
市岡:そうです。やっぱり高いものは自分でみて買いたいという人が多いので、実店舗へ行かなくなることはないと思います。
──ネットショップではどのようなモノが流行っていますか?
市岡:ネットでは実店舗にないような個性的なブランドが流行っています。ベーシックなものは実店舗を回ればすぐにそろいますが、個性的な商品はなかなか見つかりません。そんな自分の個性を光らせてくれるようなブランドをネットで購入する人が多いですね。
──少し前はみんな似たような服を着ていましたが、変わってきたんですね。
市岡:そうですね。一人ひとり違っても良い、という価値観が浸透してきたのではないでしょうか。働き方も、年収は大切だけど自分らしく働けるかをもっと大切にしたい、という人が増えました。
みんなと一緒じゃなくても、自分がいいと感じるもの、心地いいと感じるものを選ぶ人が増えたなと思います。
メリットを重視した消費が進む
──ミレニアル世代は、買った後にそれを売れるかを意識している人も増えていると聞きました。
市岡:確かに、売れるかどうかをベースにしてモノを購入する人も多いですね。人気じゃないブランドとみんなが欲しがるブランドが売っているとして、どちらを購入しようか悩んだら、高く売れる方を購入しています。
──市岡さん自身も再販できるかどうかで購入しますか?
市岡:私も販売できるかどうか考えて購入することが多いですね。せっかく購入したのに売れないなと思ったら、そっちの方が購入のハードルが高いと感じますし、逆に高く売れそうなら財布のひもがゆるくなります。
キレイな画像だけじゃダメ。豊かな暮らしを提案する
──ミレニアル世代の女性向けにマーケティングで意識していることは?
市岡:私はInstagramを活用したマーケティング支援をしていますが、キレイな画像など表面的なアピールだけでは消費につながりません。見た目が良いだけだと流されてしまいます。
じゃあどうすれば良いのかというと「ターゲットが知りたい情報を発信する」ことと、「その商品がある豊かな暮らしを提案する」ことが重要です。
ミレニアル世代の女性はインスタグラムを情報源にしている人が多いので、有益な情報を発信しているアカウントは自然にフォロワーが集まります。だからターゲットが知りたい情報を発信することは非常に重要です。
また「商品が良い」と書くのではなく、「この商品があるとこんな素敵な生活になりますよ」「豊かな生活になりますよ」と、その商品があることで得られる「今よりちょっと素敵な生活」をイメージさせていくことで、自然と商品のイメージアップに繋がっていきます。
宣伝ではなく、商品の魅力を織り交ぜなら情報発信していくことが我々マーケターの腕の見せ所です。
まとめコンテンツがより求められる時代に
──今後時代が変わっていくなかで、ミレニアル世代の購買パターンはどう変化していくと思いますか。
市岡:テレビや雑誌を見ない人が多くなり、InstagramやTwitterから情報を得て購入する方が増えました。だからしばらくはSNSが主流になっていると思います。
ただSNSから秋の流行や春におすすめのファッションを探そうと考えても、情報があふれていて選び取るのが大変なんです。特にインスタグラムでは「秋 おすすめ スカート」など複数のキーワードを入力するアンド検索もできないので、調べにくい面もあります。
だから「おすすめ10選」のようにまとめた情報から、何を買うか選ぶ人が増えてきています。
YouTubeはそういった情報をまとめた紹介動画が多いんです。動画の尺もありますし、複数商品の紹介をしている人が多い。だからこれからYoutubeはますますミレニアル世代の女性ユーザーも増えていくと思います。
──一つ下の世代は YouTubeが大流行していますが、ミレニアル世代にも流行するのでしょうか?
市岡:今は若い人向けのコンテンツが多いこともあり、インスタグラムのように特定の人を購読するような習慣がミレニアル世代の女性にはありません。
ただ、芸能人がチャンネル開設をどんどん始めていて、女性のタレントもYouTubeでコスメを解説したりする人もいるので、それに続いて私たちが見ているインフルエンサーも流れていけば、ミレニアル世代も動画を見るように変わるんだろうなと思っています。
やっぱり、動画は編集済みのまとまった情報が手に入るのでメディアとしては強いですね。後は私たちミレニアル世代が気になる動画があるかどうか。今はそんな状態だと思います。
──海外ではソーシャルグッドのような思考も流行っていますが、日本でも流行するのでしょうか。
市岡:日本も近い未来にそう変わっていくだろうと思います。海外はだいぶソーシャルグッドが盛り上がっていて、サステナブルやソーシャルグッドみたいな考え方の方がイケてるという思考になりつつあります。実際、そういうブランドが海外では流行ってきています。ただ、日本はまだそこまでではありませんが、近い未来にそう変わっていくだろうなという段階です。
直近では、モノの機能面や合理性など、そんなメリットを重視した消費が進むと考えています。
取材・文:成田千草
写真:大畑朋子