INDEX
10月1日より、消費税の税率が8%から10%に引き上げられる。増税前には駆け込みでまとめ買いをしたりするが、そうやって増税後に需要が冷え込まないよう、需要平準化対策として行われるのが「キャッシュレス・消費者還元事業」だ。
増税後の9ヵ月間に限られるものの、最大5%のポイント還元が受けられるのはお得。うまく活用して、増税のダメージをカバーしたい。
「キャッシュレス・消費者還元事業」対象店舗のポスター(サンプル)。
消費税増税と共に「軽減税率」が実施される
まず今回の消費税引き上げについておさらいしておこう。これまでのように単に8%が10%になるのではなく、同時に消費税の「軽減税率」制度が実施される。
これは増税が毎日の食卓に大きな影響を与えないよう、日々の飲食料品については、従来通りの8%のままにしましょうという制度。飲食料品やお弁当などのテイクアウト、週2回以上発行される新聞に関しては従来通りの8%のままだが、ファストフードやレストランなどでのイートインや、家で飲むとしても酒類は10%の税率になる。つまり同じお店で買い物しても、税率8%と10%の商品が混在するということ。
例えば、ラーメン店でラーメンを食べ、餃子を持ち帰ったとしたら、ラーメンは税率10%で、餃子は税率8%になる。でもラーメンを出前してもらうと、家で食べるので税率は8%。
では、ファストフード店でハンバーガーをテイクアウトで購入したものの、店内に友達を見つけて一緒に食べた場合はどうなるのか?という疑問が湧いてくる。マクドナルドでは、店内で飲食しても、持ち帰っても同じ価格。その分、約3割の商品について価格を引き上げる予定だ。店内と持ち帰りを同一価格にすることは、ケンタッキー・フライド・チキンや牛丼チェーンのすき家、松屋でも表明。
とはいえ、対応については店舗次第なので、いざスタートしたら混乱するのでは?と心配されている。
消費税増税と共に「キャッシュレス・消費者還元事業」も実施される
そして増税と「軽減税率」にプラスして実施されるのが、「キャッシュレス・消費者還元事業」だ。これは2019年10月1日~2020年6月30日までの間、対象店舗で対象となるキャッシュレス決済をすると、最大で5%のポイント還元が受けられるというもの。
キャッシュレスと言っても、その決済方法は実に様々。クレジットカードやデビットカード、プリペイドカード、交通系やスーパー・コンビニ系などの電子マネー、QRコード決済、地域コインなどが広く対象となる。登録決済事業者は8月19日時点で775社。下記の「主要な決済事業者」を見てもわかるが、主要な決済方法がほぼ対象となっているので、普段からスマホなどでキャッシュレス決済している人なら、いつも通りの支払い方でポイントが得られるだろう。
「キャッシュレス・消費者還元事業」で利用できる主要な決済方法。
対象店舗はこの事業に申請した中小規模店舗に限られ、中小・小規模事業者では5%、フランチャイズチェーンやガソリンスタンドでは2%のポイント還元を受けることができる。Amazonや楽天などの大手企業のネットショップであっても、出店しているのが中小店舗なら対象となる。
ポイント還元の対象となる店舗の一例。
ただし、家電量販店や大手スーパーは対象にならないので注意。大手のコンビニやファストフードであっても、フランチャイズ店舗なら、2%のポイント還元を得ることができる。「キャッシュレス・消費者還元事業」に登録された加盟店数は、9月5日時点で57万7885店にも及ぶ。いつも利用している店舗が対象店舗かどうか、事前に調べておくといいだろう。
登録申請された加盟店。全国で約58万店にもなる。
いったいどの店舗で何%のポイント還元が受けられるのかは、店頭のポスターで確認したり、9月中下旬に公開される予定の地図アプリ(Android/iOS対抗)などで検索しよう。
対象店舗では店頭やレジ周りに「キャッシュレス・消費者還元事業」のポスターやステッカーが貼られる。
9月中下旬には地図上で検索できるWebサイトやアプリが公開予定。
なお、日本最大規模のオンライン家計簿サービス「Zaim」では、お店や地名、地図から、「キャッシュレス・消費者還元事業」の対象となる店舗を検索できる「キャッシュレス還元マップ」を公開中。すぐに自宅や職場の対象店舗を調べたい人は、「Zaim」を利用すると便利だ。(Zaim「キャッシュレス還元マップ」)
ポイント還元の時期や方法は、キャッシュレス事業者によって様々。一般的には決済後、一定期間を経てのポイント付与が多いが、中にはポイント相当額を割り引く形で決済したり、決済時にポイント相当額を充当したり、口座にポイント相当額を付与する方法もある。自分がよく利用する決済方法ではどのようなポイント付与なのか、こちらについても確認しておくといいだろう。
「キャッシュレス・消費者還元事業」を行う意味は?
この「キャッシュレス・消費者還元事業」は需要平準化対策として行われるが、事業者や消費者のキャッシュレス化を推進する意味合いも色濃い。日本は2025年までにキャッシュレス決済比率40%を目指している。2020年のオリンピックを前に、「キャッシュレス・消費者還元事業」でキャッシュレス決済対応店舗を増やしておきたい考えだ。
通常、現金取引の店舗がキャッシュレス化しようとした場合、クレジットカードや電子マネーなどの支払いができる決済端末を購入しなくてはいけない。この端末価格はモノによって様々だが、1台3~5万円程度と聞いている。そして利用する決済事業者への手数料も発生する。これまでこの端末費用や決済手数料などが負担で、中小・小規模事業者がキャッシュレス化に踏み切れないという課題があった。
そこで端末購入費用の1/3を決済事業者が負担し、2/3を国が補助する。そして決済事業者に支払う手数料も3.25%以下であることを条件に、国がその1/3を補助。つまり最初の自己負担なしでキャッシュレス化でき、期間中の手数料は実質2.17%以下に。さらに消費者に還元する5%または2%の還元も国が補助してくれる。
中小・小規模事業者のキャッシュレス化を国と決済事業者がサポート。
負担が少なくキャッシュレス化でき、レジ締めや両替など、現金決済ならではの手間を軽減して、業務効率化がのぞめる。しかもポイント還元効果で集客が見込めるとあって、登録申請が殺到し、10月1日までに間に合わない状態に。そこで2020年4月30日まで、申請の受付期間を延長した。
一方、決済事業者は決済端末費用の1/3を負担しなくてはいけないものの、加盟店を一気に増やせるチャンス。「キャッシュレス・消費者還元事業」に関する人件費や広報費用、システム開発費などへの事務経費補助もある。
国がこの「キャッシュレス・消費者還元事業」に充てた2019年予算案額は2798億円。否が応でも家計に関心が高まる増税時期を見計らって、キャッシュレスに関する施策を行うあたり、「なんだかなー」と思わなくはないが、それはそれ。
決済事業者によってはこの時期に独自のキャンペーンを実施して、ダブルで得できることをアピールするところもある。そのようなキャンペーンは今後も多く実施されるであろう。そんな中、私たちがすべきことは、増税のダメージを少なくするべく、2020年6月30日までの期間中、できるだけキャッシュレスで決済するようにすることだ。ただし、ポイントが多く得られるからと言って、くれぐれも余計な買い物はしないように気をつけたい。
参考:キャッシュレス・ポイント還元事業
取材・文:綿谷禎子