2019年5月20日、キャップジェミ二が、自動運転についての最新レポート「The Autonomous Car: A Consumer Perspective(自動運転車に関する消費者の視点)」の調査結果を公開した。

レポートによれば、自動運転車に対する消費者の期待と興奮は高まり続けるが、障壁は残ったままだという。

主なトピックスは次の3点。

  • 調査によると、消費者の2人に1人は、今後5年以内に自動運転を経験したいと考えている。
  • 消費者の幅広い期待は、自動車企業が新たなサービスのエコシステム一式を構築する、潜在的なビジネスチャンスを生み出す。
  • 自動車企業は、自動運転を真のカスタマーエクスペリエンスへと変換するために、新しいサービスやソフトウェア、そして顧客とのコミュニケーションに投資する必要がある。

自動運転車に対する消費者の嗜好は、今後5年以内で2倍に高まる

キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュートの新しい調査では、自動運転車に対する消費者の嗜好が、今後5年以内で2倍に高まることが判明した。

12ヶ月以内に、従来型ではなく自動運転車に乗りたいという消費者は25%にとどまる。しかし、消費者の半数以上(52%)が、2024年までには自動運転車が好ましい交通手段となるだろうと回答した。

消費者のポジティブな反応としては、自動運転車は燃費(73%)、二酸化炭素排出量の削減(71%)、時間の節約(50%)の点で大きなメリットがあるとの期待が示されている。

「楽天的な見方であり期待感ではあるもの」と前置きがあるものの、消費者の半分以上(56%)が自動運転車の価格について、標準車の価格の20%アップまでなら支払ってもよいと回答した。

自動運転に対する認識の変化

今回の調査では、モビリティに対する認識の変化も明らかになった。

同社によると、「消費者は、自動運転車は将来の日々の生活において、単に自動運転するだけではなく、将来はちょっとした使い走りをして用事を済ませるような自立性を得て、より大きな役割を担うことになるだろうと考えている」という。

調査対象者のほぼ半数(49%)は、自動運転車が自分たちに代わって「おつかい」に行くことについて「違和感はない」と回答した。また、半数以上(56%)は、自動運転車が運転しない友人や家族をどこかに連れて行ったり迎えに行ったりすることについて「信頼する」と答えている。

ふたりに1人(50%)は、自動運転によって浮いた時間を他の活動、つまり人との交流や娯楽・仕事あるいは純粋に旅を楽しむことにあてられるだろうと期待している。

調査では、自動運転車に対するより高い期待を促進する、文化的・地理的要素が存在することも判明した。キャップジェミニは、自動運転車に特にポジティブな感情を示している2つのグループとして、中国の消費者とミレニアル世代の存在を特定したという。

残された「導入・採用のために乗り越えなければならない壁」についても調べている。今回の調査では、自動運転車を購入・採用するかどうかは「自動車のセキュリティ」(73%)、「システムのセキュリティ」(72%)次第であることが明らかになった。

4つのキーエリア

キャップジェミニでは、“自律的な未来へのジャーニーを加速する4つのキーエリア”として、「顧客への十分な情報の提供」・「理解と安心」・「サービスエコシステムの構築」・「ソフトウェアへの投資」を挙げている。

  • 「顧客への十分な情報の提供」:自動車は今、消費者の意識において、交通手段からセミパーソナルなアシスタントへと移行しつつある。この変化に伴って、自動車企業は「自動車の能力について率直に語る」、「虚偽や不実表示のリスクを回避する」という大きな責任を負うことになる。
  • 「理解と安心」:今回の調査では、自動運転車に期待する経験について消費者がはっきりとした考えを持っていることが判明した。自動車企業は消費者の期待を理解し、設計プロセスそのものに織り込むと同時に、自動車の安全要因ならびにセキュリティ要因に投資し、かかる要因についてコミュニケーションをとっていく必要がある。
  • 「サービスエコシステムの構築」:自動運転車の潜在的能力に対する消費者の期待は、自動車企業による消費者向け製品の範囲の拡大の必要性を明確に示すものだ。消費者は娯楽や仕事、医療サービスに至るまで、多種多様なイン・カー・エクスペリエンス(車内経験)を期待している。自動車企業がこれらの経験を消費者に提供し、ビジネス機会へと変換するためには、新たな技術パートナー、コンテンツパートナー、コマースパートナーと連携して、サービスのエコシステムを作り上げる必要がある。
  • 「ソフトウェアへの投資」:自動車企業は、大規模なトランスフォーメーションを推し進める産業化されたセクターとして、自動運転を全ビジネス部門を網羅する、全社的な企業戦略に組み入れる必要がある。これはソフトウェアコンピテンシーの開発によってのみ実現可能だ。そのためには、異なったビジネスファンクションを網羅するデジタルマスタリー実現のための作業要員のスキルアップと、新たなパートナーシップの開発が不可欠となる。


※調査概要:キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュートが、2018年12月にヨーロッパ、北米、アジアの6カ国で5,538名の消費者を対象に調査を実施した。また、OEM、サプライヤー、技術企業のエグゼクティブ280名に対しても調査を行っている。キャップジェミニも業界リーダーにインタビューを行い、消費者が自動運転車に何を求めているか、企業はどうすれば消費者に求めるものを提供できるのかを調査した。

<出典元>
「The Autonomous Car: A Consumer Perspective(自動運転車に関する消費者の視点)」