リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所は、「オープン・イノベーションに関する実態調査」を実施し、2019年4月8日に「オープン・イノベーションの推進状況や成功のポイント」など、調査結果から見える実態について公表した。

それによると、イノベーションの創出数と営業利益成長率に相関関係があることが明らかになった。

全体の35.9%が新規事業、技術、サービスが生まれている

まず、企業の成長とイノベーションについては、この10年(あるいは10年以内の創業から今日まで)に、「自社の有力製品・サービスを根本から変えるような、新規事業、新技術、新商品・サービスの数」が、同業他社と比べて多く生まれているとする回答は全体の35.9%だった。

また、業界水準より高い営業利益成長率を維持できている企業は、業界水準を超えるイノベーションを生み出してきた回答者群では71.3%を占めるのに対し、業界水準と同程度以下の群では24.9%、業界水準未満の回答群に絞るとわずか7.4%にまで落ち込んだ。

新規開発業務 オープン化の理由としては、「担当する新規開発業務において、オープン化が推進されている」との回答は64.4%となった。新規開発において社外連携による成果が見られる企業は2/3、自前主義を貫いている企業は1/3であり、多くの企業でオープン・イノベーションの活動があることが確認できた。

また、「担当業務、または全社的にオープン化が推進されている」とした回答者をオープン化推進群(236名)として分析を進めていくと、オープン・イノベーションを推進する/しない理由として、推進群では、オープン化は「結果を出すスピードを速める」「新しい技術を取り入れる」「用途や市場の開拓」「技術的課題の解決」などの役に立つ、と考えられていることが明らかになった。

一方で、「連携先候補が具体的に見つかったため」という回答は少なく、オープン・イノベーションは連携先の探索から開始されることが考えられると分析している。

オープン化推進群の市場環境と重点課題については、「競争状態が非常に激しい」「市場の成長率が高い」との認識がより強く、リスクをとってでもオープン化を図り、スピードを志向する理由がわかったという。

また重点課題として、「ブランド創造」「効果的なマーケティング・販売プロセスの開発」「新規顧客基盤の開拓」「デジタル技術の進展」への対応を挙げる割合が高く、社外に求めるのはそのような技術や資源への期待と考えられると分析している。

リスクをとった連携先開拓が順調な社外連携につながっている可能性

そして、社外連携の探索活動:「リスクをとった探索活動」「外部に開いた組織デザイン」については、オープン化推進群の約半数の56.4%が、社外連携は総じて順調(11.9%)/どちらかといえば順調(44.5%)と回答している中で、外部の知識・技術や連携先の探索活動には、社外連携の順調群とそうでない群とで異なる点が見られた。

順調群では、探索活動が全体的に活発である。「探索は行っていない」との回答はわずか3.0%であり、非順調群の17.5%とは大きな開きがある。日本企業が従来強みとしてきた系列企業を通じた探索などに加え、よりリスクをとった新たな連携先開拓が順調な社外連携につながっている可能性がうかがえると分析している。

その他、順調群と非順調群で差が見られたのは、「社内を集約し外部とつなげる専門部署の設置(項目7)」、「技術フォーマットを統一した開発プラットフォームの提供(項目9)」、「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(項目10)」などがあった。

また探索活動も、社外連携順調群の方が連携先の種類が多く、大学・研究所、ITベンチャーに加えて、IT以外のベンチャーや異業種・同業他社に対しても積極的に新規性の高い連携を実現している。

リスクをとった連携先開拓が順調な社外連携につながっている可能性

意思決定や人材マネジメントなど組織プロセスに関するものを中心に、現場社員の考えるオープン・イノベーションの成功要因を考察すると、「1.新規事業開発および新商品開発に関する戦略の明確さ」「2.自社の強みの明確さ」「3.自社の意思決定のスピード」が成功要因であると半数以上が回答した。

続いて回答が多かったのが、「4.自社内の意思決定者が明確で、強いオーナーシップがあること」「5.チャレンジ精神・失敗奨励の組織風土」で約4割だった。

社外連携の順調群と非順調群で差が見られたのは、「6.撤退判断までの時間軸を長くとり、成功するまでやりぬくこと」だった。他にも「9.アイディアを精査・選抜する仕組み」「10.社外の連携先に関する情報収集」といった探索活動に関する項目、「12.社外の連携先の意思決定のスピード」「15.自社優位・優先でなく、対等なパートナーシップの意識」といった社外連携先との関係性に関する項目にも差が見られた。

非順調群の回答率が順調群を上回ったのは、「16.担当者の熱意」「17.現場への権限委譲」「18.運・タイミング」の3項目となった。同社では、全体としての回答率は高くないものの、イノベーション不振の現場における担当者の権限不足と孤軍奮闘の表れとも解釈できるとみている。

また、「協働や助け合い」「自由裁量」「競争」の風土はいずれも、社外連携の順調群に多い傾向が見られたことから、オープン・イノベーションに向いた組織風土である可能性も考えられるという。

形式主義的な風土に苦労することに違いはない様子で、順調/非順調群に明確な差は見られなかった。

そして、担当者自身の社外連携のなかでの経験や、新規開発を担当する人材が、強化していく必要があるものについても調査したところ、約半数が個人的な学びや収穫を実感しており、順調群の方が、楽しさや社内での影響力を実感する傾向が見られる一方、プロジェクト推進の苦労も順調群の回答率が高い結果となった。

強化すべき行動や能力については、「発想力」「論理的に思考・説明する能力」「他者の巻き込み力」などが共通して挙げられた。

順調群では「2.専門外の知識の豊富さ・業務外の情報への関心」への重視度が高く、探索活動同様、いかに自社の慣習の外にある知識や連携先にアクセスするかが重視されているのが明らかになった。

また、「8.苦難を乗り越え、最後までやり遂げるエネルギー」「11.社会の課題を解決したいという強い思い」など、やり遂げることを強調する傾向が高かった。

一方、非順調群では、「10.社内外の技術・アイディアの目利き力」「12.既存事業・商品との軋轢を恐れないこと」が順調群を上回って選択されており、慣習の外に出て新しいものを生み出す難しさが、別の側面から語られていた。

※本調査は2018年12月時点のもの。
調査は、業員規模300名以上の企業において、新規事業開発、新技術開発、新商品・サービス開発に、自らの業務として携わっている人を対象にアンケート調査を行い、22~65歳の会社員334名から回答を得た。調査の目的は、オープン・イノベーションの推進状況や成功のポイントについて、実際に新規開発業務に従事している社員の声を明らかにすること。

<参照元>
「【調査発表】人と組織からみた「オープン・イノベーションを成功させる要因」とは?」